8 月号ピックアップ記事 /対談
二人の哲人鈴木大拙と西田幾多郎の教え 木村宣彰(鈴木大拙館館長) 浅見 洋(石川県西田幾多郎記念哲学館館長)
世界に禅を伝えた仏教哲学者・鈴木大拙、独自の哲学体系を打ち立てた日本を代表する哲学者・西田幾多郎――共に明治3年に現在の石川県に生まれ、切磋琢磨しながら世界的人物に成長した二人の足跡と教えは、生誕150年を経たいまなお輝きを放ち続けている。鈴木大拙館館長・木村宣彰氏と石川県西田幾多郎記念哲学館館長・浅見 洋氏が語り合う二人の哲人の生涯や教えに、現代をよりよく生きる要諦を学ぶ。
誰に対しても区別や差別をせず、寒い時は寒いとあるがままに現実を受け止め、不平不満を言わず「スーッと生きる」ことが大事。そこに現代を幸福に生きるヒントがある
木村宣彰
鈴木大拙館館長
大拙は「と」の対立関係ではなく、「の」の関係で結ばれている世界を「無分別の分別」という言葉で表現しています。
現代人は「良い・悪い」「強い・弱い」「暑い・寒い」などと、何事も二つに分別して対立的に考えてしまいますが、それでは「強い者は弱い者より優れている」「寒ければ寒さをなくせばいい」というような発想に陥ってしまう。
大拙はそうではなく、誰に対しても区別や差別をせず、寒い時は寒いとあるがままに現実を受け止め、不平不満を言わず「スーッと生きる」ことが大事だと言っているのです。そこに現代を幸福に生きるヒントがあると思うのです。
まずありのままに受け入れ、生かすことを考える。そういうところに自由を見出していくことが、様々な問題を解決していく上で、とても大切になってくる
浅見 洋
石川県西田幾多郎記念哲学館館長
現代人は、肘が外に曲がらないことを不自由に感じ、何とか外に曲げようとする、不自由なものを便利なものに変えようとする。しかし肘が外に曲がれば、もうそれは肘の役割を果たさなくなってしまうわけです。
ですから木村先生の「スーッと生きる」のお話と同じように、当たり前のことを当たり前のこととして受け止める、いまあるものに対して、まずそれをありのままに受け入れ、生かすことを考える。
そういうところに自由を見出していくことが、現代が抱える様々な問題を解決していく上で、とても大切になってくるのではないかと思うのです。
プロフィール
木村宣彰
きむら・せんしょう――昭和18年富山県生まれ。41年に大谷大学文学部仏教学科卒業。同大学大学院文学研究科博士課程を満期退学。専門は仏教学(中国仏教)。図書館長、文学部長を経て平成16年学長(22年まで)。25年より鈴木大拙館館長を務める。
浅見 洋
あさみ・ひろし――昭和26年石川県生まれ。金沢大学大学院文学研究科哲学専攻修了、博士(文学、筑波大学)。国立石川工業高等専門学校教授などを経て、現在、石川県立看護大学特任教授・名誉教授、石川県西田幾多郎記念哲学館館長などを務める。
編集後記
鈴木大拙と西田幾多郎。第四高等中学時代に出逢った二人は、禅と哲学それぞれの立場からお互いに切磋琢磨し、世界的人物へと成長していきます。鈴木大拙館館長の木村宣彰さんと石川県西田幾多郎記念哲学館館長の浅見洋さんが説く、二人の交流の軌跡と遺された言葉や教えを通して、その絆がいかに深いものだったかが窺えます。
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