意志あるところ道はひらく 金指 潔(東急不動産ホールディングス会長)

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、首都圏はいま大きく変貌を遂げつつある。中でも脚光を浴びているのが渋谷の再開発だ。100年に一度の壮大なプロジェクトを東急電鉄と共に推進する東急不動産ホールディングスの金指潔会長に、これまでの人生と経営の道のりを振り返りつつ、街づくりに懸ける思い、事業発展の秘訣、リーダーとしての心得について語っていただいた。それはそのまま後世へのメッセージといえよう。

1つの開発が完了しても、終わったと思ってはいけない。1つの開発の終わりは新たな始まりなんです。常にそう考えておかないと間違ってしまう

金指 潔
東急不動産ホールディングス会長

 渋谷はいま東急電鉄を中心に、私ども東急グループ全体を挙げてまさに100年に一度の大規模開発を進めています。これを紐解いていくと、少なくとも私が社長に就任した平成20(2008)年当初から、10年以上かけて地元の方とコツコツ話をしながら、どんな街をつくっていくのか、合意形成をしてきました。このように不動産開発や街づくりというのは一朝一夕にできるわけじゃない。

 ですから、いま渋谷の再開発が脚光を浴びて、評価されているけれども、その評価というのは端的に言うと、30年前、50年前に汗をかいた先人たちが積み上げたものなんです。

 私の友人に和歌山県で林業を営む日本林業経営者協会元会長の榎本さんという方がいますが、彼らは江戸時代に植えられた木を伐採して生計を立てている。同時に、いま新しい木を植えながら50年、100年先の森をつくっている。林業とはこういう長いサイクルで動いている事業なんですね。

 不動産開発事業も同じように、10年、30年、50年、強いて言えば100年先の日本がどうなっていくかを念頭に置きながら、じゃあいま何ができるのかを考えていかないといけない。

 現在渋谷は刈り取りの時期ですから、その時に次の種をどこに蒔くか。ここが一番大きな仕事だろうと思うんですね。例えば、渋谷から代官山のほうに、あるいは渋谷から原宿を通って新宿に抜けたり、渋谷から表参道、青山、赤坂、銀座へと繋げていったり、こういう大きな面展開をして広げていく。そういう意味で仕事は無限にある。だから、1つの開発が完了しても、終わったと思ってはいけない。1つの開発の終わりは新たな始まりなんです。

 常にそう考えておかないと間違ってしまう。人間の集団ですから、お祭り騒ぎでモノができて、達成感や満足感に浸る。それも大事なことではありますけど、そこで「終わったね」「よかったね」と言っちゃうと、進歩が止まってしまうんです。

プロフィール

金指 潔

かなざし・きよし――昭和20年東京都生まれ。43年早稲田大学政治経済学部卒業後、東急不動産入社。52年から平成10年までの21年間、グループ会社に出向する。常務、専務を経て、20年社長に就任。25年ホールディングス体制に移行。27年より現職。


編集後記

本号は東急不動産ホールディングス会長の金指潔さんに表紙とトップインタビューを飾っていただきました。入社当初は不動産の仕事が好きではなかったにも拘らず、天職と思えるに至った経緯、若き日の長い出向生活や社長就任時に見舞われたリーマン・ショックといった、不遇や逆境を乗り越えた秘訣など、仕事の神髄が満載です。

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