不可能を可能に変える経営哲学 鈴木敏文(セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問) 矢野博丈(大創産業会長)

全国2万店舗を超える日本最大のコンビニチェーン「セブン-イレブン」。
100円ショップの先駆けであり、業界トップの規模を誇る「ザ・ダイソー」。

それぞれの小売店をゼロから創り上げてきた経営者、それが鈴木敏文氏と矢野博丈氏である。
猛反発を受けながらも、既存の常識や慣習を打破してきた鈴木氏と、夜逃げ1回・転職9回・火事1回というどん底から這い上がってきた矢野氏が語り合う「無から有を築いてきた挑戦の軌跡」「不可能を可能に変える経営哲学」とは―。

私がこれまで不可能を可能にすることができたのは、常に何が本質なのかを見抜いて、やるべきことを一つひとつ解決してきたからでした。そうすると、世の中の常識のほうが変わっていくんです

鈴木敏文
セブン&アイホールディングス名誉顧問

 繰り返しになりますけど、昔から私のモットーは「変化対応」。変化は当然起こるから、あらゆる変化に対していかに対応するかを考えていくことが大事だと。変化の激しいこの時代に、過去の成功事例に縋りついていたら、失敗が多くなる。ですから、過去を捨てろと言いたいですね。
 世の中が変化している時、常識という過去の経験の蓄積に囚われることほど恐いものはありません。私がこれまで既存の常識を覆す数々の挑戦を行い、不可能を可能にすることができたのは、常にお客さんの立場で考え、何が本質なのかを見抜いて、物事を単純明快に発想し、やるべきことを一つひとつ解決してきたからでした。
 そうすると、世の中の常識のほうが変わっていくんです。だからこそ、自分から一歩踏み出す挑戦が必要だと思います。

運というのは半分は持って生まれてくるけれども、あとの半分は自分でつくるもの。人に好かれるには、人を喜ばせるにはどうしたらいいか、そういう心の勉強はしないといけん

矢野博丈
大創産業会長

 僕が毎年、新入社員に言うのは「人生は運だ」と。で、運というのは半分は持って生まれてくるけれども、あとの半分は自分でつくるものだと。だから、学校の勉強はいまからせんでもいいけど、人に好かれるにはどうしたらいいかとか、人を喜ばせるにはどうしたらいいか、そういう心の勉強はしないといけんよと言うんです。
 僕自身、20代の頃は運命の女神を憎み続けていましたが、ある結婚式に参列した時に、京都のお坊さんがこんな話をしていたんです。「仏縁に導かれたお二人だから、きっといい夫婦になられるでしょう。けれども、好むと好まざるとに拘らず、これからお二人には艱難辛苦が押し寄せてきます。それを乗り越えたら、きっといい人生が送れるでしょう。人生にはいろんなことが起こりますけど、無駄は一つもありませんよ」と。
 その言葉を聞いた時は、「何を言うんだ。俺の人生、無駄しかないじゃないか」と思って腹が立ったんですけど、ふと考えてみると、仏さんがこいつは見どころがあると思って、人の何倍も艱難辛苦を与えてくれたんじゃないか。運が悪いと思い続けてきたけど、もしかすると運がいいんじゃないか。そう思うようになってから、少しずつ心のモヤモヤが晴れて、いいことが起きるようになりました。

プロフィール

鈴木敏文

すずき・としふみ―1932年長野県生まれ。1956年中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現・トーハン)に入社。1963年ヨーカ堂(現・イトーヨーカ堂)に転職。1973年セブン-イレブン・ジャパンを設立し、コンビニエンスストアを全国に広め、日本一の流通グループとして今日まで流通業界を牽引する。2003年イトーヨーカ堂及びセブン-イレブン・ジャパン会長兼CEO就任。同年、勲一等瑞宝章受章、中央大学名誉博士学位授与。2016年5月より現職。著書に『わがセブン秘録』(プレジデント社)など多数。

矢野博丈

やの・ひろたけ―1943年広島県生まれ。1966年中央大学理工学部卒業。学生結婚した妻の家業を継いだものの、3年足らずで倒産。その後、9回の転職を重ね、1972年雑貨の移動販売を行う矢野商店を夫婦で創業。1977年大創産業設立。1987年「100円SHOPダイソー」1号店が誕生する。1991年初の直営店を香川県高松市にオープン。1999年売上高 1000億円を突破。2000年『企業家倶楽部』主催の「年間優秀企業家賞」を受賞。2018年売上高4548億円で業界シェア56%の業界トップ企業である。2018年3月より現職。


編集後記

トップ対談を飾るのは、鈴木敏文さんと矢野博丈さん。それぞれ「セブン‐イレブン」と「ザ・ダイソー」を創業し、ともに業界日本一へと導いてきた名経営者です。大学の先輩・後輩で、15年来の付き合いがあるお二人ですが、対談したのは今回が初めて。人間学に基づいた経営談義は、人生・仕事の成功法則に満ち溢れています。

2019年1月1日 発行/ 2 月号

特集 気韻生動

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