10 月号ピックアップ記事 /対談
人生のヒント ―限りある命をどう生きるか― 五木寛之(作家) 横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)
五木寛之氏が、かの臨済宗僧侶・松原泰道師と『致知』誌上で対談したのは平成20年。読者からの反響を受け、お二人による書籍、講演会にも発展した。あれから10年。鬼籍に入った松原師の志を継ぐ横田南嶺氏が五木氏と対面する。当代一の人気作家と宗門の一派を担う禅僧は、いまの世をどう捉えているのか。お二人の語り合いから、この大転換期を歩んでいくための人生の法則を探った。
下山には、登りの時には味わえない感動や喜びがあるんです
五木寛之
作家
私は昔から「下山の思想」ということを盛んに言ってきたんですけど、山を登っていく時の姿勢と、下りていく時の姿勢では重心のかけ方も違いますし、見ている世界も違いますよね。必死で登坂している時は頂上を見ているだけで、他のことは考えられませんけれども、下山は一歩一歩踏みしめながら、優雅に下っていける。昔のことに思いを馳せることもできるし、遠くを眺めて、あぁ町がある、村がある、海が美しいって感動しながら下りていくこともできる。下山には、登りの時には味わえないそういう喜びもあるんです。
すべてを手放してただ坐っていると、心の内から喜びが湧き上がってきました
横田南嶺
臨済宗円覚寺派管長
これまでは意志の力で坐禅をしていました。腰をしっかり立てたり、吐く息を長くしたり、精神を丹田に集中させたり、いろんなことを意識しながらやってきたんです。けれども、そういう意識的にやっていたことを全部やめてみました。
そうやって全部手放してただ坐っていると、心の内から喜びが湧き上がってきたのです。それまで奥歯を噛み締めて、鬼の形相で坐禅をしてきましたが、ニコニコと微笑みがこみ上げてきました。私はそこで、すべてを手放して微笑みながら坐る坐禅というのもあるのではないかと発見しました。
プロフィール
五木寛之
いつき・ひろゆき―昭和7年福岡県生まれ。27年早稲田大学露文科入学。41年小説現代新人賞、42年直木賞、51年吉川英治文学賞を受賞。また英文版『TARIKI』は平成13年度『BOOK OF THE YEAR』(スピリチュアル部門)に選ばれた。14年菊池寛賞、22年『親鸞』で毎日出版文化賞を受賞。
横田南嶺
よこた・なんれい―昭和39年和歌山県生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。29年12月花園大学総長に就任。最新刊に『自分を創る禅の教え』(致知出版社)。
編集後記
トップを飾っていただいたのは、作家の五木寛之さんと臨済宗円覚寺派管長の横田南嶺さん。松原泰道師の印象的なエピソードから始まり、老いて初めて分かる苦しみ、さらには100年人生と100億人口の生き方にまで話題は及びました。見識あるお二人の語り合いを通じて、人生を生き抜く上で大事なヒントを得ることができました。
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