世界で勝つ選手やチームをいかに創り上げるか 前原正浩(日本卓球協会副会長) 岩渕健輔(日本ラグビーフットボール協会専務理事)

卓球とラグビー、どちらもかつて世界の強豪国を相手に全く歯が立たない競技だったが、近年、驚異的な大躍進を遂げている。卓球は、上位を独占する中国勢を破り国際大会で優勝を飾る選手を男女共に次々と輩出。ラグビーも、昨年のW杯日本大会で史上初のベスト8進出を果たしたことは記憶に新しい。その輝かしい功績の裏には、10年、20年に及ぶ長い努力の道のりがあった。それぞれの競技で強化を担当してきた前原正浩氏と岩渕健輔氏が語り合う「改革と挑戦の軌跡」、そして「世界で勝つために必要なもの」――。

“同じやり方をしていたら同じ結果しか生まれない”というのが信条です

岩渕健輔
日本ラグビーフットボール協会専務理事

前原
 それにしても、昨年のラグビーW杯では史上初のベスト8入りを果たし、日本中が歓喜に沸きましたね。僕も注目して見ていましたが、大会を通して得た手応えや課題は何ですか?

岩渕
 正直、手応えと言えるようなことはまだまだないと思っています。どんな競技でもその国の中で文化として根づくようにならなければ世界のトップで戦い続けるのは難しい。
 前々回のW杯で優勝経験のある南アフリカを破り、前回のW杯で強豪のアイルランドやスコットランドを倒してプール戦(一次リーグ)を全勝で1位通過し、初の決勝トーナメント進出を果たすなど、この8年間で確かに前向きな結果を出すことができました。これは20~30年前の先輩たちが一所懸命やってくださった歴史があるからであり、ラグビー協会の人間として代表チームの選手やスタッフには本当に感謝しています。
 ただ、世界のトップ10にコンスタントに入っているわけでもないですし、W杯で優勝したわけでもありません。次回のW杯で簡単にベスト8に行けるかと言ったら、決してそんなことはなく、これまで以上に強化や努力をし続けなければ、ベスト8に入ることはもちろん、その先へ進むことはできないと思っています。

前原
 ここからがスタートだと。

岩渕
 ベスト8進出は、ゴールではなく通過点です。今回代表チームがやってくれたことを起点に、ラグビーを通じてもっともっと多くの方々に夢を与えられるようにしていきたいですね。

僕の好きな言葉は“何もしなければ何も生まれない”なんです

前原正浩
日本卓球協会副会長

岩渕
 一方で、卓球はこの20年くらい前原さんがいろんな改革をされてきた結果として、2012年のロンドン五輪で初めてメダル獲得したことをはじめ、花が開いてきているように感じます。

前原
 卓球の場合はご存じの通り中国が桁外れに強い。ここ数十年、五輪でも世界選手権でもトップは中国なんですが、最近は国際大会で中国のトップ選手に日本選手が勝てるようになってきたんです。
 例えば、張本智和選手は一昨年のワールドツアーグランドファイナル男子シングルス決勝で中国選手を倒し、大会史上最年少(15歳)で優勝、昨年のW杯ではリオ五輪金メダリストの馬龍選手を破って準優勝しました。伊藤美誠選手も今年三月にあったカタールオープンでリオ五輪金メダリストの丁寧選手にストレート勝ちを収め、現制度で日本選手最高の世界ランキング2位になっています。
 ただ、やっぱり課題としてはスタミナですね。五輪でも世界選手権でも中国選手を1人は破れるんですよ。だけど、2人、3人と破り続けるスタミナがない。
 ここでいうスタミナとは心理的なスタミナ、技術的なスタミナ、体力的なスタミナ、智的なスタミナの四つです。勝ち上がっていくほど対戦相手は当然強くなるわけですから、その分だけスタミナが削られていく。中国選手と対戦する時にどれだけスタミナが残っているか。そこが勝負の分かれ目になりますので、来年に開催延期となった東京五輪に向けて、4つのスタミナを強化していきたいと考えています。

プロフィール

前原正浩

まえはら・まさひろ 昭和28年東京都生まれ。小学生の時に卓球を始め、大学4年次に全日本選手権シングルス準優勝。51年明治大学卒業後、協和発酵工業(現・協和キリン)入社。翌年より日本代表として世界選手権出場。56年全日本選手権でシングルス・ダブルス共に優勝を飾る。60年男子日本代表監督に就任し、ソウル・アトランタ・シドニーの五輪3大会で指揮を執る。平成25年国際卓球連盟副会長。28年日本卓球協会副会長。

岩渕健輔

いわぶち・けんすけ 昭和50年東京都生まれ。小学生の時にラグビーを始め、大学在学中に日本代表選出。平成10年青山学院大学卒業後、神戸製鋼入社。ケンブリッジ大学に留学し、イングランドプレミアシップのサラセンズ入団。その後、セブンズ(7人制ラグビー)日本代表選手兼コーチなどを経て、24年日本代表ゼネラルマネージャー。30年男子セブンズ日本代表ヘッドコーチ。令和元年日本ラグビーフットボール協会専務理事。


編集後記

共にそれぞれの競技を世界レベルに育て上げてきた日本卓球協会副会長・前原正浩さんと日本ラグビーフットボール協会専務理事・岩渕健輔さん。若き日に日本代表選手としても活躍し、長年世界を相手に戦ってきたお二方の対談は、スポーツだけに留まらず、あらゆる分野に通底する普遍の組織論・指導哲学に溢れています。

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