6 月号ピックアップ記事 /対談
我が情熱の火は消えることなし 小林研一郎(指揮者) 龍村 仁(映画監督)

「炎のマエストロ」と呼ばれる世界的指揮者の小林研一郎氏と『地球交響曲 第九番』に挑む映画監督の龍村仁氏は、共に1940年4月生まれの80歳。分野こそ異なるものの、いまなお新しい何かを創造しようと情熱を燃やし続けている。お二人はいま何を求め、どのような思いで目の前の仕事に取り組んでいるのか。映画制作を通して再び出会ったお二人が語り合う人生と仕事の要訣。

指揮者は透明人間でなくてはいけません。そこにいて何の抵抗感もないけれども、しかし、凄まじい情熱を持ってその思いを時空を超えて皆に伝えられなくてはいけません
小林研一郎
指揮者
太平洋に小さな小舟を漕ぎ出して、どこまで行っても水平線しかない。近づこうとすればするほど、さらに水平線が遠のいてしまうという、いまもそんな感覚で生きているんです。 この地球はベートーヴェンという素晴らしい人物を250年前に、この地球に誕生させてくれた。そのために僕たちはその後を追うことができるという喜びが、常に心の中にありますね。

感動するというのは言葉を変えれば自分自身が何かをクリエイトしているということと同じなんです。いわば自分が主人公になって映画を観ていただきたい
龍村 仁
映画監督
僕はこの映画を通して「このように感じ取ってください」「ここで感動してください」というメッセージを発しようとは思いません。観てくださった方が、それぞれの立場でクリエーターになっていただけたら、それが一番の喜びですね。そのことが正しいのか、正しくないのか、それは僕が考えるのではなく、いわば観る側に委ねるということですね。
プロフィール
小林研一郎
こばやし・けんいちろう――昭和15年福島県生まれ。東京藝術大学作曲科、指揮科の両科を卒業。49年第1回ブダペスト国際指揮者コンクール第1位、特別賞を受賞。その後、多くの音楽祭に出演するほか、ヨーロッパの一流オーケストラを多数指揮。平成14年の「プラハの春音楽祭」では、東洋人として初めてチェコ・フィルを指揮。ハンガリー国立フィル桂冠指揮者、名古屋フィル桂冠指揮者、日本フィル音楽監督、東京藝術大学教授、東京音楽大学客員教授などを歴任。
龍村 仁
たつむら・じん――昭和15年兵庫県生まれ。38年京都大学文学部美学科卒業。同年NHK入局。49年映画『キャロル』を制作、監督したのをきっかけにNHKを退職、独立。以後、ドキュメンタリー、ドラマ、コマーシャル等の制作に邁進。平成4年より『地球交響曲』の公開を始め、現在『地球交響曲 第九番』を制作中。著書に『地球(ガイア)のささやき』(角川ソフィア文庫)などがある。
編集後記
世界的指揮者の小林研一郎さんと映画監督の龍村仁さんは共に1940年4月生まれの80歳。これまでの人生を振り返りながら、仕事に対する溢れんばかりの思いをお互いに語っていただきました。いまなお新たな何かを創造しようとする意気盛んなお二人の姿は、いまの私たちに勇気と力を与えてくれます。

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