6 月号ピックアップ記事 /インタビュー
百忍千鍛事遂に全うす(ひゃくにんせんたんことついにまっとうす) 安部 賛(アドマテックス社長)
トヨタ自動車「発」であり「初」のベンチャー企業として目覚ましい飛躍を遂げるアドマテックス。実験の失敗によって偶然生まれた真球状シリカ微粒子・アドマファインは半導体に不可欠な素材として現在シェア約九割を占めるという。アドマファインの発見者で、現社長の安部 賛氏の華々しい成果に隠された鞠躬尽力の軌跡を辿ることで、物事を成功に導く秘訣を探りたい。
真球状シリカ微粒子
アドマファイン
一筋に努力をしてじっと耐えていれば、運は誰にでも訪れる――。その運を掴めるかどうかは、それまでの努力如何だと思うのです。
安部 賛
アドマテックス社長
(ビジネスマン人生で、転機になった出来事はありますか?)
安部
創業3年目から参加したトヨタグループ社員向け勉強会・トヨタ起業塾は、一サラリーマンだった僕にとって、非常に大きな意識転換になりました。そこで新規事業とは何か、経営とは何かをゼロから叩き込んでもらえたのです。
その塾の中で、いまも僕の経営の基本原則となっている2つの言葉を教わりました。まず「小さくても業界に決定的な影響力を持つこと」。アドマファインはICチップ一つ当たり一グラムにも満たない微量しか使われていませんが、月に200~300トンも生産しています。単純計算しただけでも、毎月ものすごい量の製品が世界中で使われていることが分かると思います。社員数300名で売上高160億円の会社でありながら、アドマファインがなければ完成できない製品が世界中にごまんとある。そういう会社に成長できたのはこの言葉のおかげでした。
そして、もう一つが「小さな池の大きな魚を釣り上げること」。この教えを意識し、真球状シリカ微粒子というニッチな分野に焦点を定めた結果、最初の数年間を除いて常に右肩上がりに成長できています。いまでは考えられないですが、一時、営業利益率が50%近くあった時期もあり、リーマン・ショックの時でも利益を維持することができたんです。
(その要因は何でしょうか・・・・・・)
プロフィール
安部 賛
あべ・すすむ 昭和28年福岡県生まれ。56年九州大学大学院総合理工学研究科材料開発専攻修士課程を修了後、トヨタ自動車工業(現・トヨタ自動車)入社。60年事故から偶然に真球状シリカ微粒子・アドマファインの合成法を発明。平成2年アドマテックスの設立に参画。21年同社社長に就任。著書に『異端者たちの挑戦』(幻冬舎)など。
編集後記
トヨタ発、初のベンチャー企業・アドマテックス。必死で歩んだ30年の軌跡を社長の安部賛さんにお話しいただきました。
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