9 月号ピックアップ記事 /対談
読書習慣が学力を決める 土屋秀宇(「母と子の美しい言葉の教育」推進協会会長) 川島隆太(東北大学加齢医学研究所所長)
かねて指摘されてきた若者の読書離れに、便利な情報機器の普及なども相俟って一層拍車が掛かっている。しかし近年、脳科学の目覚ましい発達により読書の重要性が改めて注目を集め始めているという。長年にわたり独自の国語教育を実践してきた土屋秀宇氏と、読書が脳に与える驚くべき効果を実証してきた川島隆太氏に、各々の体験を交え、子供の読書習慣を育むことの重要性を語り合っていただいた。
よい言葉をたくさん入力した子供は、それを実現しようと心が働くから、結果としてよい生き方が実現できる
土屋秀宇
「母と子の美しい言葉の教育」推進協会会長
子供たちを観ていて感じるのは、彼らが読書を通じて様々な言葉を自分たちの中に入力していくと、だんだんその言葉に宿る命が、子供たちをコントロールし始めていくように思うんです。逆に言えば、子供たちは入力された言葉を実現しようと心が働いてしまうように感じているのです。
ですから、よい言葉をたくさん入力した子供は、それを実現しようと心が働くから、結果としてよい生き方が実現できる。そういう意味でも、子供たちに優れた人物の伝記やよい詩文に触れてもらうことは、とても意義のあることではないかと僕は思うんです。
脳の測定をさせてもらうと、読書習慣を持っている子は脳の発達がとてもいい
川島隆太
東北大学加齢医学研究所所長
脳の測定をさせてもらうと、読書習慣を持っている子は脳の発達がとてもいい。大脳の言語半球の神経線維という電線の連絡する部分、ここの発達がすごくよくなっていることが分かりました。
実際にどれだけ学力に差があるかと言いますと、読書を全くしない子が平均点を超えるには、家で毎日2時間勉強して、かつ睡眠を6時間から8時間キチッととらなければなりません。ところが読書を毎日する子たちは、家での勉強時間が1時間もあれば十分で、あとはちゃんと睡眠さえとっていれば平均点を軽く超えるんです。
プロフィール
土屋秀宇
つちや・ひでお――昭和17年千葉県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、県内で中学校英語教師を務める。13年間にわたり小中学校の校長を歴任し、平成15年定年退職。その後、日本漢字教育振興協會理事長、漢字文化振興協会理事、國語問題協議會評議員などを務める。30年一般社団法人「母と子の美しい言葉の教育」推進協会設立。著書に『日本語「ぢ」と「じ」の謎』(光文社)など。
川島隆太
かわしま・りゅうた――昭和34年千葉県生まれ。東北大学医学部卒業。同大学院医学系研究科修了(医学博士)。同大学加齢医学研究所所長。専門は脳機能イメージング学。著書に『読書がたくましい脳をつくる』(くもん出版)『やってはいけない脳の習慣』(青春新書)『スマホが学力を破壊する』(集英社)など多数。共著に『素読のすすめ』(致知出版社)などがある。
編集後記
読書習慣の有無で学力にここまで大きな差がついてしまう─衝撃的ともいえる事実が明かされたのが、「母と子の美しい言葉の教育」推進協会会長・土屋秀宇さんと、東北大学加齢医学研究所所長・川島隆太さんの対談でした。読書習慣を取り戻すことを真剣に考えなければなりません。
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