読書こそが人間教育の原点 井口 潔(九州大学名誉教授) 白駒妃登美(ことほぎ代表)

井口 潔氏、98歳。井口氏が一冊の本を通して人間教育の重要性に目覚めたのは大学退官を5年後に控えた時だった。以来、今日に至るまで生物学的な見地から人間教育のあり方を研究し続けてきた。素読を中心とする日本の伝統教育がいかに理に適ったものなのか、また読書は人格形成にどのような影響を与えるのか。これまでの研究内容を交えつつ、親交のある「博多の歴女」こと白駒妃登美さんとともに読書について語り合っていただいた。

伝統は魂を持っているんです。魂の叫びは人を動かします

井口 潔
九州大学名誉教授

 私は長年の生物学の研究を通して、科学の光を伝統に当てると、伝統が持っている珠玉のような宝が発見できることを度々体験してきました。素読を中心とした江戸期の教育もそうですが、伝統は魂を持っているんです。魂の叫びは人を動かします。論理の世界だけでは人は動きません。伝統教育は感性認識、魂の認識。だから強いんです。

人生には悲しみや避けて通れないものがあると知ることはすごく大事で、そういう本を読む中から本当の生きる力が生まれることもある

白駒妃登美
ことほぎ代表

 生きていれば、喜びもあるし悲しみもある。喜びだけで人生が成り立っているわけではないのに、喜びだけを追い求めようとするのは不自然ですし、人間のエゴだと思うんです。
 私が小さい頃に読んだ本の中にも、これが本当に児童書なのだろうかと思うほど不安に押し潰されそうになるもの、深い悲しみを湛えたものがありました。そういう本を、子供は進んで読もうとしないし、現代では親も買い与えようとはしません。でも、人生には悲しみや避けて通れないものがあると知ることはすごく大事で、そういう本を読む中から本当の生きる力が生まれることもあるように思うんです。

プロフィール

井口 潔

いのくち・きよし――大正10年福岡県生まれ。昭和22年九州大学医学部卒業。38年九州大学教授。60年九州大学名誉教授。同年佐賀県立病院好生館館長。のち名誉館長。大学定年後は日本学術振興会井口記念人間科学振興基金において生物学的教育論を展開してNPO法人「ヒトの教育の会」を設立、理事長を務める。著書に『人間力を高める脳の育て方・鍛え方』(扶桑社)など。

白駒妃登美

しらこま・ひとみ――昭和39年埼玉県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手航空会社の国際線客室乗務員として7年半勤務。日本の素晴らしい歴史や文化を国内外に発信する目的で平成24年株式会社ことほぎを設立。「博多の歴女」として年間200回に及ぶ講演や歴史講座を行う。著書に『心に光を灯す日本の偉人の物語』(致知出版社)など多数。


編集後記

九州大学名誉教授の井口潔さんは98歳のいまも、日本人が忘れかけた人間教育の重要性を伝え続けられています。人生を変えた本との出合いや日本への思いなどを交え、ことほぎ代表の白駒妃登美さんと語り合っていただきました。死線を越える中で培われた人生観は説得力に溢れています。

2019年8月1日 発行/ 9 月号

特集 読書尚友

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