3 月号ピックアップ記事 /対談
人間力を高める『論語と算盤』の言葉 栗山英樹(侍ジャパントップチーム監督) 安岡定子(郷学研修所・安岡正篤記念館理事長)

渋沢栄一と聞いて、まず『論語と算盤』を思い浮かべる人も多いことだろう。渋沢は経営という視点で『論語』を柔軟に読み解き、近代化の礎を築く上での指針とした。この名著に私たちが学ぶべきは何か。論語塾講師として、幅広い年齢層に『論語』の魅力を伝える安岡定子氏と、この書を野球指導や組織づくりに役立ててきた北海道日本ハムファイターズ前監督で、今回侍ジャパントップチーム監督に就任した栗山英樹氏に語り合っていただいた。

僕が選手たちに『論語と算盤』を配るのは、野球人としての成功はもとより、それ以上に人間としての成功を掴み取ってほしいと願うからでもあるんです
栗山英樹
侍ジャパントップチーム監督
僕自身、29歳の時、病気によりプロ野球選手を引退し、惨めで暗澹たる思いを抱いていた時期があるんです。だからこそ、監督になってからは、これからの時間のすべてはチームと選手のために使い尽くすと決めていました。振り返ると、監督としての10年間、「厳しい時に自分を助けていただいた人たちに報いたい」「誰かのために野球をやりたい」という思いだけで歩んできた気がします。

私がとても共感できるのは、渋沢さんが特に若い人に対して「覚悟を持て」「失敗を恐れるな」とおっしゃっていることですね
安岡定子
郷学研修所・安岡正篤記念館理事長
それは若い人に限ったことではなく、失敗したくないからやめておこう、自分のできる範囲だけで終わらせておこうと尻込みするだけでは人間としての成長がないわけです。覚悟を持って何事もエネルギッシュに取り組んでほしいというメッセージは、渋沢さんの生き方そのものでもあり、とても力強いものがあると思います。
プロフィール
栗山英樹
くりやま・ひでき─昭和36年東京都生まれ。59年東京学芸大学卒業後、ヤクルトスワローズに入団。平成元年ゴールデン・クラブ賞受賞。翌年現役を引退し野球解説者として活動。16年白鴎大学助教授に就任。24年から北海道日本ハムファイターズ監督を務め、24年チームをリーグ優勝に導き、28年には日本一に導く。同年正力松太郎賞などを受賞。令和3年退任し、侍ジャパントップチーム監督に就任。著書に『栗山魂』(河出文庫)『育てる力』(宝島社)など。
安岡定子
やすおか・さだこ─昭和35年東京都生まれ。二松學舍大学文学部中国文学科卒業。安岡正篤師の令孫。「こども論語塾」の講師として、全国各地で定例講座を開催。『論語』ブームの火付け役といわれる。現在は大人向け講座や企業向けのセミナー、講演などでも幅広く活躍。令和2年より公益財団法人郷学研修所・安岡正篤記念館理事長。著書に『楽しい論語塾』『0歳からの論語』(共に致知出版社)など。
編集後記
栗山英樹さんは侍ジャパントップチームの監督になった時の人であると同時に、渋沢栄一の『論語と算盤』をプロ野球の組織づくりの指針とし、その本の存在を世に広く知らしめた人でもあります。論語塾講師として大人から子供まで幅広く『論語』の魅力を伝え続けている安岡定子さんとご対談いただきました。 大谷翔平選手や斎藤佑樹選手のエピソードを交えてのお話はとても興味深いものがあります。

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