5 月号ピックアップ記事 /対談
経営の枠を破る 牛尾治朗(ウシオ電機会長) 加賀見俊夫(オリエンタルランド会長)
浦安の海に、世界中から人々の集まる夢のテーマパークが誕生することを、誰が想像し得ただろうか。東京ディズニーリゾートの創設から携わり、日本を代表する行楽地に育て上げてきた加賀見俊夫氏と、一企業の枠を超え、日本経済の改革に人生を投じてきた牛尾治朗氏に、各々の奮闘を交えながら、経営の枠を破り、成長を実現する道について語り合っていただいた。
初心を失った時に運は離れていきますから、絶対に胡座をかいてはならないと思うんです
加賀見俊夫
オリエンタルランド会長
初心を忘れないことも大切ですね。私どもはここまで非常に運に恵まれてきたと思っています。当社について回っているその運のよさを、決して自分たちの実力と勘違いしてはならない。初心を失った時に運は離れていきますから、絶対に胡座をかいてはならないと思うんです。
初心に返るというのは、失敗を素直に認める勇気を持つことでもあります。私は役員会でも、前回決めたことに対して「これは間違っていた。申し訳ない。またゼロに戻してやり直そう」と平気で言いますから。
私は創業の時から今日まで、常にいまが一番大変な時だという思いで会社を率いてきました
牛尾治朗
ウシオ電機会長
私は創業経営者ですから、以前は自分がやらなければ成功しないという強い思いで会社を引っ張っていました。しかし最近は、なるべく自分がリーダーだと思わないようにしています。できる限り権限委譲を進めて、自分でなければできないことに専念しているわけです。そういうふうに、リーダーは常に変化していくことが大事です。
プロフィール
牛尾治朗
うしお・じろう――昭和6年兵庫県生まれ。28年東京大学法学部卒業、東京銀行入行。31年カリフォルニア大学政治学大学院留学。39年ウシオ電機設立、社長に就任。54年会長。平成7年経済同友会代表幹事。12年DDI(現・KDDI)会長。13年内閣府経済財政諮問会議議員。著書に『わが人生に刻む30の言葉』『わが経営に刻む言葉』『人生と経営のヒント』(いずれも致知出版社)がある。
加賀見俊夫
かがみ・としお――昭和11年東京生まれ。33年慶應義塾大学法学部卒業、京成電鉄に入社。47年京成電鉄を依願退職し、オリエンタルランドに改めて入社。56年取締役総務部長兼人事部長。その後常務、専務、副社長を経て、平成7年社長に就任。17年会長兼CEO。著書に『海を超える想像力』(講談社)がある。
編集後記
年間来場者数3千万人を超える東京ディズニーリゾート。その歴史はまさに、レジャー産業の常識への挑戦の歴史といえます。同リゾートを運営するオリエンタルランド会長の加賀見俊夫さんと、50年以上にわたり日本経済の一線に立ち続けるウシオ電機会長の牛尾治朗さんに、枠を破る発想について語り合っていただきました。
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