書店文化を守れ! 大垣守弘(大垣書店会長)

人口過密の東京においてさえ、近隣住民に愛されてきた街の書店が次々と姿を消す昨今。読書の入り口となる書店文化が危機に瀕している。一方、京都に根を張りつつ、この10年で直営店を2倍に増やしているのが大垣書店だ。経営難に喘ぐ地方書店の再建にも取り組む大垣守弘会長に、活路を伺った。

書店員はこれまでの「書店員」から、自ら選書眼を磨き、工夫し続ける「書店人」に変わる必要があるでしょう

大垣守弘
大垣書店会長

「いまどき、本を買うなんて考えられないよな」

先日、ある児童書の出版社の社長から聞いた話です。東京の上野恩賜公園で毎年5月に開催されている親子向けのブックイベントにて、昨年、通りすがりの大学生がこう呟いたのだそうです。

スマホ一つで様々な電子書籍が読めるいま、そんな声が上がるのも無理はありません。書店人として、現代とはこういう時代なのだ、と再認識する出来事でした。

出版科学研究所の調査によれば、2024年の日本の出版物の売上額(紙と電子の合計)は1兆5千716億円。ピークだった1996年から現在までの約30年で、4割にまで落ち込んでいます。

それに伴って、日本の書店の数も年々、目減りしています。出版文化産業振興財団が、書店のない市町村は全自治体の4分の1を上回った(2024年3月)と発表しています。書店で本が買えない街が増え続けているのです。

30年前といえば、大都会に限らず街のそこかしこに書店があり、客足が絶えませんでした。それは当時の諸外国では見られない、異常とさえ言える活気でした。思い返すと隔世の感がありますが、私は祖父が京都に創業した大垣書店の経営を2000年に引き継ぎ、何とか歩んできました。

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◇日本の書店文化衰退に一矢報いるために
◇根本原因は人材教育の不足
◇書店員でなく書店人たれ
◇合理化の波の中で守り抜くべきもの

プロフィール

大垣守弘

おおがき・もりひろ――昭和34年京都府生まれ。57年立命館大学卒業後、祖父が創業した大垣書店に入社。平成12年社長。令和3年より会長、グループ代表取締役。平成23年に書店12法人で構成する㈱大田丸を設立、社長に就く。


編集後記

本記事では、書店業界で異例と言える30年連続増収、10年間での直営店舗数2倍という偉業を達成している大垣書店の大垣守弘さんにインタビュー。もはや風前の灯火ともいえる日本の書店の凋落の本質、書店を守る処方箋、そして書店文化の活性化の意義について語り尽くしていただきました。

2025年5月1日 発行/ 6 月号

特集 読書立国

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