5 月号ピックアップ記事 /対談
佐久間象山が目指した世界 青木擴憲(AOKIホールディングス会長) 田口佳史(東洋思想研究家)
傲岸不遜、狷介不羈。幕末の思想家・佐久間象山にはいまなおそのようなイメージがつきまとう。しかし、その足跡を丹念に辿ると、象山がいかに卓越した先見性と行動力を以て幕末という激動期に処してきたかが分かってくる。故郷の偉人として象山を尊敬し、顕彰を続けるAOKIホールディングス会長の青木擴憲氏と、この度弊社から『佐久間象山に学ぶ 大転換期の生き方』を上梓した東洋思想研究家の田口佳史氏に、その知られざる実像を語り合っていただいた。
佐久間象山
さくま・しょうざん(ぞうざん)
1811(文化8)年~1864年(元治元)年
文化8(1811)年長野生まれ。儒学者・兵学家。天保13(1842)年老中兼海防掛となった信濃松代藩主の真田幸貫から命を受けて海外情勢の研究を始め、「海防八策」を著す。嘉永4(1851)年勝海舟、吉田松陰、坂本龍馬などが後に入門する私塾を江戸に開き、砲術・兵学を教える。嘉永7(1854)年門下の吉田松陰が起こした事件に連座して、松代藩での蟄居となる。元治元(1864)年には一橋慶喜に招かれて上洛。公武合体論、開国論を論じるも、同年尊王攘夷派に暗殺された。
象山を語る時、私はその卓越した構想力が一番の魅力だと考えます。構想というものは、そう簡単に生まれるものではありません
青木擴憲
AOKIホールディングス会長
絶対に開国などしてはならないという世論が圧倒的な京都の地に足を運んで、時のリーダーたちに堂々と開国を進言するわけだから、いずれ自分が殺されることは分かっていたはずです。しかし、自分が殺されたとしても、それが開国への動機づけになるという確信があったのではないでしょうか。
象山が明治国家の構想係として目指したものは、東洋思想をベースに、西洋に負けない科学技術立国をつくり上げることにありました
田口佳史
東洋思想研究家
このことは後ほど詳しくお話ししたいと思いますが、象山は朱子学者として一流の領域に達しながらも、一書生に戻って蘭語を学び砲術の大家にまでなっているんです。しかも、ただ理論的に学んだり提言したりするだけでなく、大砲を実際に自分でつくり、砲術を弟子に伝えるというところまでやり遂げている。それだけの先見性と行動力を備えていたわけで、ここまでの人物はいません。
プロフィール
青木擴憲
あおき・ひろのり――昭和13年長野県生まれ。高校卒業後、行商を始める。33年個人商店「洋服の青木」を創業。51年現・AOKIホールディングス設立。54年全国チェーン展開をスタート。平成3年東証一部上場を果たす。18年AOKIホールディングスに社名を変更。22年会長に就任。著書に『何があっても、だから良かった』(PHP研究所)。
田口佳史
たぐち・よしふみ――昭和17年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、日本映画社入社。47年イメージプランを創業。著書に最新刊の『佐久間象山に学ぶ 大転換期の生き方』をはじめ『ビジネスリーダーのための老子「道徳経」講義』『人生に迷ったら「老子」』『横井小楠の人と思想』『東洋思想に学ぶ人生の要点』(いずれも致知出版社)など多数。
編集後記
日本の危機に敢然と立ち向かい、科学技術立国という日本の未来を夢見て駆け抜けた幕末の思想家・佐久間象山。AOKIホールディングス会長・青木擴憲さん、東洋思想研究家・田口佳史さんのお話を通して、日本が奇跡の近代化を果たす上で大きな影響を与えた象山の知られざる実像が浮き彫りになります。
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