父から受け継いだ父子相伝の道 森口邦彦(染色家/人間国宝) 中村義明(中村外二工務店代表 数寄屋建築棟梁)

昭和を代表する染色の名匠といわれた森口華弘氏を父に持ち、親子二代で人間国宝に認定された染色家の森口邦彦氏。日本の伝統建築である数寄屋建築の匠として、数々の名建築を手掛けてきた中村外二氏を父に持つ中村義明氏。父の教えを受け継ぎながらも、ともに独自の世界を切り開いてきたお二人が縦横に語り合う、父と子のあり方、そして父から子へ受け継がれしもの――。

私はただ長いこと辛抱してきただけです。何事でも大切ですよ、辛抱することは

森口邦彦
染色家/人間国宝

まだきちんとした作品ができていないという思いが強いので、この道を極めたと言える立場にはありませんが、私はただ長いこと辛抱してきただけです。何事でも大切ですよ、辛抱することは。あとは根気。自分が決めたことに対して決して諦めない。それから、やっぱり自分に素直になることですかね。他人がどうこうではなく、自ら求めるものが何なのかということを常に自分に問い掛けられるかどうか。そうして辛抱して根気強くやっていけば、必ず道は開けてくるんだと思います。

建築家はね、お客様の夢をつくってあげるんですよ。ですから、建築の仕事を好きになるにはお客様のこと、お客様の夢を好きにならないといけないわけです

中村義明
中村外二工務店代表 数寄屋建築棟梁

 私の場合は、やっぱり仕事を好きになることでしょうね。これは父が言っていたことでもありますが、建築は建築家がつくるものでも、大工がつくるものでもなく、お客様がつくるものなんです。建築家はね、お客様の夢をつくってあげるんですよ。ですから、建築の仕事を好きになるにはお客様のこと、お客様の夢を好きにならないといけないわけです。
 私もうちの職人も皆、父が言ったのと同じように考えて、住宅だったらそこでよい子が育つようにつくらないといけない、商業施設なら事業主が儲かるようにつくらないといけないというように、お客様の夢を実現して、運命を伸ばしていくような建築を心掛けてきました。その人らしい家に住んでもらうこと、それが一番です。

プロフィール

森口邦彦

もりぐち・くにひこ――昭和16年京都府生まれ。京都市立美術大学卒業後、22歳で渡仏し、パリ国立高等装飾美術学校でグラフィックデザインを学ぶ。41年帰国し、父・森口華弘の工房に入門。42年日本伝統工芸展に初出品初入選。以後受賞歴多数。平成19年重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。なかむら・よしあき  昭和21年京都府生まれ。44年立命館大学経営学部卒業後、中村外二工務店入社。大阪万博日本庭園内茶室、ニューヨーク・ロックフェラー邸、伊勢神宮茶室、京都迎賓館主賓室座敷など、国内外の数多くの建築に携わる。平成9年より現職。

中村義明

なかむら・よしあき――昭和21年京都府生まれ。44年立命館大学経営学部卒業後、中村外二工務店入社。大阪万博日本庭園内茶室、ニューヨーク・ロックフェラー邸、伊勢神宮茶室、京都迎賓館主賓室座敷など、国内外の数多くの建築に携わる。平成9年より現職。


編集後記

森口華弘さんとともに親子二代にわたり人間国宝に認定された染色家の森口邦彦さん。数寄屋建築の第一人者・中村外二さんを父に持ち、自身も建築家として世界を舞台に活躍する中村義明さん。ともに偉大な父を持つ二人に、父と子のあり方から一道を極めていく要諦まで、縦横に語り合っていただきました。

2018年5月1日 発行/ 6 月号

特集 父と子

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