御年90。 人生生涯 うなぎ職人 金本兼次郎(野田岩五代目)

寛政年間創業以来、実に200年以上の歴史を持つ、うなぎ屋「野田岩」。五代目・金本兼次郎氏は店の伝統を守る傍ら新風を吹き込むことで、ミシュラン一つ星を獲得するなど、その手腕は高い評価を受けている。いまも職人として高みを目指し続ける金本氏に、うなぎにすべてを捧げてきた一生を振り返っていただいた。

自分が仕事をしている姿を見せることが、僕は一番の教育だと思うんです

金本兼次郎
野田岩五代目

 いまの若い連中は、できる奴だとうなぎ1本40秒でどんどん裂いていっちゃう。僕も若い頃は2分で3本は裂いていたけど、いまだと1分半くらいかな。ぐずぐずしているとすぐ2分経っちゃう。うなぎっていうのはなかなか言うことを聞いてくれませんから、ほんのちょっとのことで時間がかかる。だから、いつも自分の動きに無駄はないだろうかってことを考えながらやっていますね。
 そうやって自分が仕事をしている姿を見せることが、僕は一番の教育だと思うんです。それに、もう一つ言うと、やはり人間形成というものが大事であって、一人の人間として恥ずかしくない態度や言葉遣いを身につけなければいけません。そういったことを疎かにしていると、ちょっと世間に持ち上げられると、すぐいい気分になってしまいます。でも、それだといずれは行き詰まって、誰からも声を掛けられなくなる。そういう職人を、僕は何人も見てきました。やはり職人というのは親方になっても、他の誰にも真似できないような焼き方を追い求めるとか、新しい自分に目覚めていくことですよ。

プロフィール

金本兼次郎

かねもと・かねじろう――昭和3年東京生まれ。早稲田工手学校卒業。32年父・勝次郎の後を継いで、寛政年間創業のうなぎ屋「野田岩」五代目に就く。平成19年厚生労働省より「卓越した技能者の表彰(現代の名工)」に選出される。著書に『生涯うなぎ職人』(商業界)がある。


編集後記

寛政年間創業以来、実に200年以上の歴史を持つ、都内でも有数のうなぎ屋として有名な「野田岩」。5代目を務める金本兼次郎氏は御年90になられたいまも、毎朝早くから厨房に立ってはうなぎと格闘される日々を送っています。弟子たちの育成にも力を注ぎつつ、いまも職人として高みを目指し続ける金本氏が、うなぎにすべてを捧げてきた一生を語っていただきました。

2018年5月1日 発行/ 6 月号

特集 父と子

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