5 月号ピックアップ記事 /対談
病がひらいてくれた人生 米澤佐枝子(あなたと健康料理教室 主任講師) 栗生隆子(発酵生活研究家)

「病が また一つの世界を ひらいてくれた 桃 咲く」。詩人の坂村真民さんは、重い病の苦しみを経て、新たな心境に至った歓びをこう綴った。3人の子を抱え30代で突然の余命宣告を受けるも奇跡的に快復し、師に学んだ料理指南を続ける米澤佐枝子さん。14歳から20年も原因不明の不調に悩まされ、日本古来の発酵が持つ力に目覚めた栗生隆子さん。お二人は病をどう受け止め、与えられた生を愉しんでおられるのか。

寿命は人には分からない。決められないなって本当に思う。
病気にも年齢にもとらわれず、いま、やれることをやることが大事なんです
米澤佐枝子
あなたと健康料理教室 主任講師
〈米澤〉
初めまして! 栗生さん。会えて嬉しいわ。
〈栗生〉
はい、私もです。
〈米澤〉
対談のお話をいただいたから、栗生さんが書いた発酵の本を探したんだけれど、すごい人気ね。近くの本屋は全部売り切れ。だから私が料理教室をしている「あなたと健康社(あな健)」のスタッフに頼んで、YouTubeで動画をいろいろ見せてもらいました。
〈栗生〉
ありがとうございます。きょうはせっかくなので、私がお守り代わりにしている本を持ってきました。米澤先生が師事された東城百合子先生の『自然療法』です。
〈米澤〉
あら~! 東城先生のこと、ご存じなんだ。
〈栗生〉
はい。10代の時、原因不明の体調不良が始まって、薬で抑えていたんですけど、ある時全く効かなくなってしまいました。そんな時にこの本で自然療法を知って。頼れるものが他になかったので、もう何度も読んで、助けられてきました。私のバイブルです。
〈米澤〉
そうだったの。嬉しいわ。

人生を精いっぱい生きるというのは、病気でも怪我でも、何があってもあるがままに自分を受け入れて、その自分を生き切るということだなといましみじみ感じます
栗生隆子
発酵生活研究家
〈栗生〉
きょうは対談というより、その一番弟子の米澤先生のお話を聴く日と思って来ました(笑)。
〈米澤〉
こちらこそよ。東城先生が立ち上げた「あな健」に入社してもう45年になるかな。気がついたら83歳。教室がある月曜から土曜まで、毎日出ているの。
〈栗生〉
毎日ですか。教室にはどんな方がお見えになるのですか。
〈米澤〉
30代から80代まで、病人ばかりですね。約半分ががん患者さんです。膠原病や重いアレルギーの方、後はリストカットしたことがあるとか、深刻な悩みを抱えた方も多いですね。
料理教室といっても、料理だけを学ぶところじゃないの。掃除・洗濯・料理、この3つを、「生活道」を教えているのね。一番大事なのは料理、食。そしてちゃんと洗濯をして、掃除をする。これが〝いのちの根っこ〟を養ってくれるんです。「あな健」には最初「がんになりました……」って下を向いて来る方が多いんですが、教室に通ううち「がんになっちゃって~」って上を向いて話せるようになる。心まで変わるんです。
〈栗生〉
生活が心を整えてくれますよね。私は、家庭の台所でできる「毎日の発酵」を実践、発信しているんです。例えば料理の後、野菜が半玉余る時があるじゃないですか。その食材は、冷蔵庫にただ入れておいたらしなびたり、腐ったりします。でも、塩を振って容器に蓋しておけば、乳酸発酵が始まって保存が利く。食べたら乳酸菌が摂れる。無駄がありません。
年に一度、味噌や漬物を仕込むのもいいですけれど、日々ちょこちょこできる発酵で食材を生かす、菌の力を借りる。これだけで生活が整い、健康になっていける。この日本の知恵を広めたいのです。
〈米澤〉
「生活が一番大事よ」、いまの日本には「生活」がない、って東城先生も言っておられました。生活をきちんとすることがすべての基盤だってことよね。
~本記事の内容~
◇日々の「生活」が〝いのちの根っこ〟になる
◇30代、幼子を抱え突然の余命宣告
◇14歳で始まった出口の見えない闘病
◇命は天に任せよう
◇病を与えられたこの自分を生き切る
◇病が教えてくれたこと
◇叱られ泣かされ愛されて
◇心のとらわれを外せば世界が広がる
◇病気になっても病人にならない生き方
◇病気にとらわれず与えられた命を生きる
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続きは本誌をご覧ください!
プロフィール
米澤佐枝子
よねざわ・さえこ――昭和17年静岡県生まれ。相模女子大学食物科で栄養学を専攻、卒業後は和洋中料理のコック修業。夫の赴任に伴いブラジル在住時に子宮がんで余命1年の宣告を受ける。58年自然療法の大家・東城百合子氏が立ち上げた「あなたと健康社」に入社、師事しながらがんを克服し、健康料理教室の講師を任される。近著に『病気になっても病人にならない生き方』(致知出版社)。
栗生隆子
くりゅう・たかこ――昭和47年岐阜県生まれ。14歳の時から20年以上、原因不明の体調不良に悩まされるも、平成16年に冷え取り健康法に、17年に発酵食品に出逢い、病を完治。以来、発酵を取り入れた生活の研究や執筆、講演活動に精力的に取り組む。著書に『発酵生活で新しい私に生まれ変わる』(ヒカルランド)『不調知らずのからだになる ここからはじめる発酵食』(家の光協会)など多数。
編集後記
弊社より著書を上梓した米澤佐枝子さんと、日本古来の発酵の知恵を発信する栗生隆子さん。30歳もの差があるお二人が、初対面ながら深く共鳴してお互いに耳を傾けておられる姿が印象的でした。米澤さんの師である自然療法の大家・東城百合子氏の著書を栗生さんがバイブルにしてきた由。見えない縁で深く繋がる闘病体験談は、「病気になっても病人にならない生き方」を教えてくれます。

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