5 月号ピックアップ記事 /鼎談
鍵山秀三郎さんに学んだもの 上甲 晃(志ネットワーク「青年塾」代表) 田中義人(東海神栄電子工業会長) 鍵山幸一郎(幸栄企画社長)

去る1月2日、弊誌でもお馴染みのイエローハット創業者・鍵山秀三郎氏が91歳でお亡くなりになった。一代で国内有数の自動車用品チェーンへと育て上げたばかりでなく、トイレ掃除を社会運動にまで高め、「掃除の神様」の異名を取ったことはつとに有名である。その破格の人生が示唆するものは何か。鍵山氏と親交の深かった上甲晃氏と田中義人氏、そして鍵山氏のご子息である鍵山幸一郎氏に在りし日を振り返っていただき、鍵山氏が我われに遺してくれたものについて語り合っていただいた。

鍵山相談役とご縁をいただき、共に掃除の活動を続けてきたおかげで、本当にいい人生を歩ませていただきました
田中義人
東海神栄電子工業会長
〈田中〉
鍵山秀三郎さんが今年の1月2日にお亡くなりになって、2か月余りが経ちましたね。
私は鍵山さんのことを相談役と呼んできましたから、きょうもそうさせていただきますが、この2か月の間に、鍵山相談役の下で私が長らく会長を務めた「日本を美しくする会」の全国の仲間から本当にたくさんのご連絡をいただきました。
どなたも異口同音に「鍵山さんのおかげでいい人生が歩めるようになりました」と感謝の声を寄せてくださって、相談役の影響の大きさを改めて実感しています。
幸一郎さんはいかがですか。ご長男として最後までお父様を側で支えてこられましたけれども、少しは落ち着かれましたか。

私が鍵山さんから学んで意識してきたのは、〝知っている人〟ではなく〝できる人〟であれということです
上甲 晃
志ネットワーク「青年塾」代表
〈鍵山〉
いろんな方から「お寂しいでしょう」と温かいお言葉をかけていただくんですけど、まだそんな余裕はないです。
親父がお世話になった方々へのご恩に報いていくためにも、やらなければならないことが山ほどありますから。
〈上甲〉
鍵山さんは一度ご病気を患われた後もお元気そうになさっていましたから、お亡くなりになったというのはいまだに信じられない気持ちですよ。
〈鍵山〉
最初に脳梗塞で倒れたのは9年前、82歳の時でした。親父は頑張り屋ですから一所懸命リハビリをやって、その後もまだ講演や対談をたくさん引き受けていました。
ところが88歳の時に自宅で再び倒れて頭を打ちましてね、脳内出血を起こして大手術をしたんです。
〈田中〉
そこで命を取り留められたのは奇跡的なことでしたね。

私たち親父の薫陶を受けた者は、その学びを自分の行動に反映させていくことが大事じゃないかと思うんです
鍵山幸一郎
幸栄企画社長
〈鍵山〉
不死身ですよ。お医者さんがびっくりしていました。あの年であんな大手術をしたら概ねあの世行きだと。それが回復しましたからね。
あいにく元気な頃のように体を動かせなくなったので老人ホームへ入ったのですが、会話は問題なくできました。
ボケないためでもあったんでしょうけど、本もたくさん読んでいましたね。致知出版社さんの『立命の書「陰騭録」を読む』は2回も読んだそうです。
老人ホームで倒れて救急車で搬送されたのは12月29日でした。すぐに駆けつけましたが、最後まで意識は戻らなかったですね。
搬送されてからはとても苦しそうでしたけど、息を引き取った後はとても穏やかな顔をしていました。
そんな晩年の親父が、2つ悔いがあると言っていました。……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全9ページ(約12,000字)~
◇91年の人生で抱いた2つの悔い
◇受けた教えをいかに実践して生きるか
◇塾生の指導に行き詰まった末に
◇一人黙々と続けたトイレ掃除
◇「トイレ掃除で人生も会社も変わりました」
◇全国に広がった掃除の運動
◇社員、家族、そして自分自身に厳しかった父
◇当たり前のことを徹底してやる
◇過去相も現代相も決定相ではない
◇人生で最後に残るのは継続したことだけ
◇すべては1人から始まる
◇人間として最も意義ある生き方とは
プロフィール
上甲 晃
じょうこう・あきら――昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学教育学部卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年青年塾を創設。著書に『志のみ持参』『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』『人生の合い言葉』など。最新刊に『松下幸之助の教訓』(いずれも致知出版社)。
田中義人
たなか・よしひと――昭和22年岐阜県生まれ。44年日本大学卒業。プリント基板製造の東海神栄電子工業を創業。平成3年鍵山秀三郎氏との出逢いによって掃除を開始。5年鍵山氏と共に「掃除に学ぶ会」を立ち上げる。「日本を美しくする会」会長として国内外への掃除道の普及に尽力。現在は同会相談役。
鍵山幸一郎
かぎやま・こういちろう――昭和35年東京都生まれ。59年米国ミネソタ大学経営学部卒業。60年グローリー工業入社。米国駐在員として勤務。平成2年ローヤル(現・イエローハット)入社。取締役、常務取締役を経て、16年社長に就任。20年退任。特別顧問を経て、同年より幸栄企画社長及び朴の森代表。
編集後記
イエローハット創業者・鍵山秀三郎さんのご逝去を受け、志ネットワーク「青年塾」代表の上甲晃さん、東海神栄電子工業会長の田中義人さん、ご子息で幸栄企画社長の鍵山幸一郎さんに、近しいお三方ならではの逸話と、各々が受けた学びを語り合っていただきました。特集テーマにも通じる凡事徹底の生き方を貫いた鍵山さん。弊誌もその志を継ぎ、一層の誌面充実に邁進してまいります。

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