4 月号ピックアップ記事 /対談
世界一を目指す――本気度こそ勝敗を分ける 中田久美(バレーボール全日本女子監督) 高倉麻子(サッカー日本女子代表監督)
去る2016年、バレーボール全日本女子、サッカー日本女子代表に、揃って女性の監督が就任した。片やオリンピックでの金メダル獲得が至上命令だった全日本で鎬を削ってきた中田久美さんと、日本代表の創設期から女子サッカーの発展に力を尽くしてきた高倉麻子さんのお二人だ。再び日本チームを世界の頂点に立たせるべく奔走する両監督に、これまでの歩みを振り返っていただくとともに、選手指導に懸ける思いを語り合っていただいた。
なりたい自分にしか結局はなれない。アドバイスは聞いても、最終的に自分で決断する。その代わり、自分で責任を持つことが大事です
中田久美
バレーボール全日本女子監督
「多くの選手と接してきた中で、もったいないなって思うことがあるんです。代表に選ばれる選手というのは当然それなりの力や素質があるわけですけど、中には誰もが当たる壁に対して、チャレンジしない、逃げたりごまかしたりする選手がいるんです。その壁っていうのは前に進むためには絶対に必要なのに、そこから逃げちゃうっていうのはすごくもったいない。
ではどういう選手が伸びるかと言ったら、『勝負どころで自分が決めるんだ』『自分がこのチームを勝たせるんだ』って思える選手だと思います。同じくらいの素質や能力を持っている集まりの中にあって最後に生き残るのは、『私の力が足りないからダメなんだ。だから力をつけるために、もっとやらなきゃいけない』って思える選手でしょうね」
「世界一になると本気で思ってください」。もし心の片隅で「ちょっと無理かな」とか、「そうは言ってもね」なんて思っているようでは、勝負の神様が逃げてしまう
高倉麻子
サッカー日本女子代表監督
「私も同じようなことを選手に言っていて、それは『自分がチームを勝たせる、選手になれ』ですね。やはり人はうまくいかないことがあると、人のせいにするじゃないですか。もちろん、それが不可抗力で起こることもありますけど、何か問題が起きたら、まずは自分に何が足りなかったのかと考えて、それを自分の力で跳ね返していくことで、強さを身につけてほしい。結局はそれが『自分がこのチームを勝たせるんだ』っていう、強い思いを持つことに繋がっていくと思うんです」
プロフィール
中田久美
なかだ・くみ――昭和40年東京都生まれ。15歳でバレーボール全日本女子に初選出。高校卒業後、日立製作所に入社。セッターとして3度五輪に出場し、ロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得。平成23年久光製薬スプリングスのコーチを経て、翌年監督に就任。在籍中、国内の主要大会すべてでチームを優勝に導く。28年バレーボール全日本女子監督に就任。
高倉麻子
たかくら・あさこ――昭和43年福島県生まれ。15歳でサッカー日本女子代表に初選出される。高校2年生から読売日本サッカークラブ・ベレーザ(現・日テレ・ベレーザ)でプレー。日本女子代表では通算79試合に出場し、歴代7位の29得点を記録。平成26年監督として17歳以下の女子ワールドカップで日本を初優勝に導く。28年サッカー日本女子代表監督に就任。
編集後記
冬季オリンピックを終え、2年後に迫った東京オリンピックでの活躍が期待される女子バレーと女子サッカー。その命運を握るのが旧知の仲でもある中田久美、高倉麻子両監督です。終始和やかに行われた対談では、それぞれの道に進まれたきっかけから監督業に至るまでの本気・本腰の歩みを語っていただきました。
特集
月刊誌『致知』のバックナンバー