5 月号ピックアップ記事 /インタビュー
当たり前のことを当たり前にやる 米田敏郎(九州学院剣道部監督)

高校剣道界において圧倒的な優勝回数を誇る熊本県の九州学院高校剣道部。監督として同剣道部を常勝集団に育て上げたのが、剣道八段の米田敏郎氏である。米田氏が語る師の教えや苦悩の中から掴んだ人財・組織づくりの要諦、指導者に求められる条件とは――。

指導者は一つでも多くの資質を備えるべく絶えず努力、学び続け、自らの魅力、人間力を磨き高めていくことが必要なのだと思います。
人間力なき指導者には、やはりよき出会いもよき人も、勝利も巡ってこないのではないでしょうか
米田敏郎
九州学院剣道部監督
――米田さんが一九九二年から監督を務める熊本県の九州学院高校剣道部は、全国高校選抜大会で7連覇含む優勝11回、玉竜旗で4連覇含む優勝11回など、圧倒的な実績を誇ります。その強さの秘訣はどこにあるのでしょうか。
<米田>
日本一になるためには、本当にいろいろな細かい部分を疎かにせず、一つひとつクリアして積み上げていくことが必要ですから、とてもひと言では言えません。
ただ、大事なのは、剣道の稽古だけでは強くなれないということです。例えば、引っ込み思案の子は試合でもここぞという時に打ち込めない、我儘な子は団体戦で自分本位な戦い方をしてしまうというように、選手の性格や日常の生活態度がそのまま剣風、戦うスタイルに表れてきます。
ですから、厳しい稽古はもちろん、生活を剣道に置き換えなさい、生活の中に剣道があるんだと、授業態度から挨拶、掃除に至るまで日常生活をよりうるさく指導してきました。これは剣道部の生徒にとって基本的なことでありますし、やはり日常生活を含めて日本一に相応しいチーム、人間になってこそ日本一になれるんです。
――日常生活から勝利への道は始まっているのですね。
<米田>
そして指導の際に意識しているのが「理解力」です。なんで日常生活を指導するのか、厳しい稽古をするのか、それぞれの生徒が理解、納得して取り組んでもらうことを大事にしてきました。
というのも、相手と一対一で対峙する剣道では、最終的には自分で考え、判断することが求められるからです。実際、日頃から自立して物事を考え、判断する習慣が身についている子は、ピンチの時でも咄嗟に対応して勝ち切ることができますし、逆に言われたことしかやらない、やらされ意識でいるような子は、ピンチやプレッシャーに弱いところがあります。
――それぞれが自主自立して考え、行動する習慣を養う。どんな分野にも通じる大事なことですね。
~本記事の内容~
◇強さの秘訣は日常生活にあり
◇土台をつくった師の教え
◇苦悩の中で活路を見出す
◇目標から逆算して行動する
◇人間力がすべての源
プロフィール
米田敏郎
こめだ・としろう――昭和44年熊本県生まれ。小学2年生から剣道を始める。進学した九州学院中学・高校剣道部、中央大学剣道部にて活躍。大学卒業後、教員として九州学院に戻り、剣道部コーチを経て平成4年より監督(高校・中学)。以後、インターハイ団体優勝10回・個人優勝5回、全国高校選抜大会優勝11回(7連覇)、玉竜旗優勝11回(4連覇)、魁星旗争奪全国高校剣道大会優勝7回(3連覇)、剣道3大大会(選抜・玉竜旗・インターハイ)にて3年連続3冠達成、中学では全国中体連剣道大会団体優勝10回・個人優勝5回など、九州学院剣道部を全国屈指の強豪校に育て上げる。令和2年10月剣道八段審査に合格。
編集後記
高校剣道界の常勝集団として圧倒的な実績を誇る九州学院高校剣道部。同部を率いてきた米田敏郎さんにお話を伺いました。何か特別な訓練でもあるのかと思いきや、米田さんが最初におっしゃったのは、意外にも勝利の秘訣は日常生活にあり、ということでした。米田流の人財育成、チームづくりには、剣道だけではなく人生・仕事に通じる極意が満載です。

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