経営は絶えざる維新である 野本弘文(東京急行電鉄社長) 鈴木茂晴(日本証券業協会会長・大和証券グループ本社顧問)

いま世の中は目まぐるしく変化している。規模の大小を問わず企業の盛衰も刻々と移りゆく。その中にあって、今期10年ぶりに過去最高益を更新した東急電鉄。片や就職人気ランキングで1位に選ばれた大和証券。経営トップとしてソフト、ハードの両面にわたって様々な改革を手掛けてこられた野本弘文社長と鈴木茂晴顧問に、それぞれの組織を繁栄発展へと導いてきた道のりについて語り合っていただいた。そこから見えてきた維新の要諦とは――。

チャンスがあっても、それを実行に移してチャレンジしなければ結果は出ません

野本弘文
東京急行電鉄社長

「いま世の中は目まぐるしく変化していますが、私は変化がある時には必ずチャンスがあると思っているんです。ただ、チャンスがあっても、先ほど鈴木さんがおっしゃっていたように、それを実行に移してチャレンジしなければ結果は出ません。
 私はよく『坂本龍馬が一番優れているのは何だと思う?』と社員に語るんですけど、それは『素直さと行動力』だと。世の中がどういうふうに変わっているかを受け取ったり、人の正しい意見を聴き入れたりする素直さ。次にそれをどんどん実行に移す行動力。維新するにはやはりこの素直さと行動力が何よりも大事だと思います」

最高の戦略を練ってそれをいい加減にやるのと、ごく普通の戦略を徹底的にやるのとでは、絶対に後者が勝つ

鈴木茂晴
日本証券業協会会長・大和証券グループ本社顧問

「人の上に立つ者の心得としては決めてあげることがとても重要だと思います。これは私が部長になった時に思ったんですけど、どんなに厳しくても決断してくれる上司の下は働きやすい。ところが、どんなに人柄がよくても決断できない上司の下は働きにくい。やっぱり上に立ったらね、もうそれが正しいか間違っているかは別にして、とにかく決断する。そして、それを徹底する。
 私はよく言うんです。最高の戦略を練ってそれをいい加減にやるのと、ごく普通の戦略を徹底的にやるのとでは、絶対に後者が勝つよと。だから要は、判断して決めたら徹底する。徹底できないなら決めないことです」

プロフィール

野本弘文

のもと・ひろふみ――昭和22年福岡県生まれ。46年早稲田大学理工学部卒業後、東京急行電鉄入社。63年子会社である東急不動産に出向。平成13年事業戦略推進本部メディア事業室長、16年系列ケーブルテレビ会社であるイッツ・コミュニケーションズ社長を経て、19年東京急行電鉄取締役。23年4月より取締役社長に就任。

鈴木茂晴

すずき・しげはる――昭和22年京都府生まれ。46年慶應義塾大学経済学部卒業後、大和證券入社。引受第一部長、専務取締役などを経て、16年大和証券グループ本社取締役兼代表執行社長、大和証券代表取締社長。23年大和証券グループ本社取締役会長兼執行役、大和証券代表取締役会長。29年4月より最高顧問、7月より日本証券業協会会長に就任。


編集後記

トップ対談を飾るのは、東京急行電鉄社長の野本弘文さんと大和証券グループ本社顧問の鈴木茂晴さん。ともに生え抜き社員から大企業のトップに抜擢され、組織の発展を導いてきました。同い年で親交が深いお二人の対談は終始和やかな雰囲気の中で行われましたが、それとは裏腹に厳しい変化の時代を生き抜く心得が数多く語られており、維新の要諦が見えてくるようです。

2017年7月1日 発行/ 8 月号

特集 維新する

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