人間の花を咲かせる生き方 道場六三郎(銀座ろくさん亭主人) 松岡修造(スポーツキャスター)

人間各自、その心の底には一個の天真を宿している――国民教育の師父・森信三師の言である。人は皆、天からその人だけの真実を授かってこの世に生まれてくる、という。その天真を発揮して生きることこそ、人間の花を咲かせることに他ならない。片や日本料理、片やテニス、それぞれの道で花を咲かせてきた道場六三郎氏と松岡修造氏が語り合う、人間の花を咲かせる生き方とは。

「人の2倍働く、人が3年かかって覚える仕事を1年で身につける」と心掛けていました

道場六三郎
銀座ろくさん亭主人

 19歳で東京の店に入って心に決めたことは、「人の2倍働く、人が3年かかって覚える仕事を1年で身につける」ということです。例えば、人がネギを3本置いて切っていたら、その上に1本重ねて4本、2本重ねて5本で切れるようにする。最初はなかなかうまくできませんが、脇の締め具合や手首のスナップなどを工夫して、試行錯誤の末に自分だけの得意技を編み出したんです。
 冷蔵庫の使い方1つにしても、工夫次第で差が出ます。先輩から「ちょっと、あれ取って」と言われた時に、冷蔵庫をパッと開けて、サッと食材を取り出して渡せるか。これをできずに「えっと、どこだっけ」なんてグズグズしていると、「バカ野郎」となってしまう。そこで、冷蔵庫の中を6つに仕切って整理整頓し、どこに何が入っているかメモを取り、扉に貼っておく。さらに、量が少なくなったら小さな容器に移し替え、いつも冷蔵庫を広く使えるようにしていました。

世界の頂点に立つ選手に共通しているのは途轍もない「挫折」経験です。挫折を愛している人ほど強いですね

松岡修造
スポーツキャスター

 それぞれ選手の性格も違うのでいろいろな要素があると思いますが、共通しているのは「挫折」した経験があるということだと思います。しかも、途轍もない挫折です。それが最終的には一番の力になる。だから、挫折を愛している人ほど強いですね。
 オリンピックで世界の頂点に立つような選手たちもそうですが、皆本当に大きな挫折を経験しています。でも、そこから逃げない。認めたくない自分の弱さを受け入れることが、本当の強さを得るための条件なのかなと思います。そういうものを乗り越えている人が、いざという大きな勝負の時に、相手に勝つというよりも自分に克つことができるのでしょうね。

プロフィール

道場六三郎

みちば・ろくさぶろう――昭和6年石川県生まれ。25年単身上京し、銀座の日本料理店「くろかべ」で料理人としての第一歩を踏み出す。その後、神戸「六甲花壇」、金沢「白雲楼」でそれぞれ修業を重ね、34年「赤坂常盤家」でチーフとなる。46年銀座「ろくさん亭」を開店。平成5年より放送を開始したフジテレビ「料理の鉄人」では、初代「和の鉄人」として27勝3敗1引き分けの輝かしい成績を収める。12年銀座に「懐食みちば」を開店。17年厚生労働省より卓越技能賞「現代の名工」受賞。19年旭日小綬章受章。著書に『「一本立ちできる男」はここが違う』(新講社)など多数。

松岡修造

まつおか・しゅうぞう――昭和42年東京都生まれ。10歳から本格的にテニスを始め、慶應義塾高等学校2年生の時にテニスの名門校である福岡県の柳川高等学校に編入。その後、単身フロリダ州へ渡り、61年プロに転向。怪我に苦しみながらも、平成4年6月にはシングルス世界ランキング46位(自己最高)に。7年にはウィンブルドンで日本人男子として62年ぶりとなるベスト8に進出。10年現役を卒業。現在はジュニアの育成とテニス界の発展のために力を尽くす一方、スポーツキャスターなど、メディアでも幅広く活躍している。著書に『挫折を愛する』(角川書店)など多数。


編集後記

トップ対談を飾るのは道場六三郎さんと松岡修造さん。約2時間半にわたり、示唆に富んだお話が繰り広げられました。人生の原点である両親の教え、いじめや怪我といった逆境にどう向き合ってきたか、平昌五輪でメダルを獲得した日本人選手の裏話、人を育てる叱り方のコツなど、人間の花を咲かせる秘訣に興味は尽きません。

2018年6月1日 発行/ 7 月号

特集 人間の花

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