【第7回】お客様から愛される地域一番店のつくり方——「永続する会社の条件① 4度目の経営改革に挑戦中!」(佐藤勝人)

出店範囲を栃木県内に絞り込み「地域一番化戦略」で圧倒的シェアを誇るカメラ写真専門のサトーカメラ。同社副社長であり、商業経営コンサルタント、Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人と情報発信を含め、全国各地の商工会議所やあらゆる業種業態の企業や商店を支援する佐藤勝人さんが、毎月第一月曜日に「人材育成」「挑戦」「経営戦略・戦術」「しくじり」「復活」などをテーマに、若い世代にも響くヒントを語ります。

第7回のテーマは「永続する会社の条件」。表のビジネス戦略は時代に合わせて変えていくとして、楽屋裏の内部改革も、当然のように必要だというお話です。

【第1回】なぜサトーカメラは圧倒的シェアを誇るのか

【第2回】お客様はいつも正しい──スチュー・レオナルドの教え

【第3回】逆境もすべて経営の糧になる①

【第4回】逆境もすべて経営の糧になる②

【第5回】地域から世界で注目される販売店へ①

【第6回】地域から世界で注目される販売店へ②

下克上なんか考えるからオカシクなる。兄弟で力を合わせることを真田幸村に学んだ!

企業を永続させるためには「自己変革」が必須です。これはもう絶対的真理です。私の会社サトーカメラも、今現在、4度目の改革に取り組んでいます。表の話、つまりビジネスモデル変革の話はこれまでもしてきたから、今回は裏側の内部改革の話をしましょう。裏があっての表ですからね。

中小企業にとって裏話といえば、同族企業であるがゆえのヒトのあれやこれやだと相場が決まっています(笑)。

サトーカメラの場合、最初は1988年に、父社長に出資してもらい私と妻と兄で今の業態を始めました。一般常識的には昔から、兄弟で一緒に一つのビジネスをやるのは難しいと言われます。たぶん、人間関係とかのウェットな部分でお互いに嫌になるからという理由だろうけど、当時の私は、「そんなに難しいというならば、やってみようじゃないか」と考えました。

全然迷わなかったとまで言うと嘘になります。でも、兄弟で続けてきて今思うのは、兄弟ほど難しい関係はないだろうけど、大事なところさえ間違えなければこれほど頼もしい関係もない、ということです。

私がよく引き合いに出すのは真田幸村です。

幸村は私と同じ次男で、武将としての能力は幸村が上だったと言われますが、最後までお兄さんの信之を立てて闘いました。大事なところを間違えないというのは下克上を考えないということです。下克上を企てるから兄弟経営はオカシクなるのであって、あくまで次男として長男を支える気でいれば全然問題ないんですよ。

とはいえ、最初の最初は私が上司で兄が部下の関係でした。父が「人が足らない」と言って業態転換前の家業に呼び戻したのは私だったから。兄は大学を卒業してから合流したので、仕事の上では先輩の形になったからです。

別に上下関係とかそういう感覚はなかったけど、取引先の営業さんなんかはどうしても私のところに来るんですよ。そんなわけで私が上司という形でした。

でも、30歳の時に、長男と次男が逆になってるのは今後のことを考えてあまり良くないんだろうと思って、先ずは役職が同等になりました。それでも取引先は私のところに営業に来る。それから4年5年たった時だったかな、兄が専務、私は常務になり、兄を役職で上にしたわけです。そうしたら、変えた瞬間に、取引先の人たちは全員兄のほうに行った(笑)。

「あー、これが世の中か」と思いましたね。昨日まで「勝人さんに付いていきます」と言っていた取引先の人たちが兄に流れるのを見て、「こんなもんなんだな」と。あらかじめイメージはしていたので、別に何とも感じませんでした。冷めていたと思います。

ちょうどその頃に縁あって商業経営コンサルタントとしても働き始めていたこともあって、事態を客観視できたのでしょう。「ならば、サトーカメラのほうは営業以外のことは口出ししないようにしよう。兄ちゃんに任せよう」と決めました。――それが2度目の内部改革です。

家族の狭い次元で考えずに「大義」を決めよう。判断の基礎を「大義」に置こう

そして3度目は私が40歳の頃。

ここで父が社長から代表権のない会長職に退きました。兄が代表取締役社長で、私は代表取締役専務になった。この時も一瞬迷いましたね。

というのは、父は実質、経営者というよりはオーナーでしたが、それでも、「父親のためなら頑張れる」という気持ちがあったんですよ。そこはやっぱり親子でした。――だけど、兄のために同じように頑張れるかと思うとちょっと迷った。そこのところで自分の気持ちの折り合いをつけるまで結構時間がかかりました。

それまではやはり尊敬できる人のためだとか、親や家族のためだとか、自分のためというよりも、誰かのために働きたいという欲求が一番強かったのでね。

当時よく思い出したのは、兄弟でやらないほうがいいと教えてくれた人たちが言っていた次の言葉です。

「いいかい、社長の息子は社長だよ。けど、専務の息子が専務なんてない。息子が社長になれる線はないんだよ」。――つまりこういうことです。「お前はそれで良くても(=格下で良くても)自分の息子や嫁さんのことも少しは考えたらどうだ。不満が溜まるぞ。だから兄弟経営はやめとけ」と。

でも私は、「俺、別に子供のために経営しているわけじゃないしなぁ」と思っていました。いくら同族企業でも、家族のためじゃなく、まずはお客さんのため、従業員のため、取引先のために頑張るのが筋じゃないか、と。自分の子供に位階を継がせるために自分の役職をどうしておくという考えは違うだろう、と。

そう思った私は、「これからは“大義”を自分の指針にしよう」と決めました。家族とかそんな狭い次元じゃなく、地域のため、お客さんのために働く。その思いを表現したのが「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念です。もし私があの時に「俺が俺が」の次元に囚われていたら、内部分裂していたでしょうね。

小さな内輪の戦いよりも大義に向かうこと。大義を掲げてそのために前を向くこと。それが、皆さんの会社が「永続する企業」になっていくための一つの条件だと思います。そう決まったら兄弟で張り合っている場合じゃないんですよ。力を合わせなきゃ生き残れないんです。

生産性を上げる改革に着手。経営側の本気度を社内に示すため、「泣いて馬謖を斬る」

そして4度目。これが目下継続中の改革です。

厳密に開始時期を区切るとしたら2018年の第44期、兄は代表取締役社長のまま、私は代表取締役副社長になり、弟を専務取締役にして組織を変えました。それに加えて私の息子を中国から呼び戻して、今は彼を中心に内部を変えていっている最中です。

4度目の時は下地になった指摘がありました。キヤノン中国と一緒に頑張っていた2017年に、息子がこう言うわけです。「サトカメの社内システムは10年遅れてるからね(笑)」と。私は冗談でもビックリして、「え、そうなの?」としかその時は言えませんでした。

なぜって、内部のことは基本的に兄社長と弟専務に任せていましたから。まったく無意識でした。

でも、遅れていることが事実なら改めないといけません。それも、問題に気付いて指摘した人にやらせるのが一番良い。だから息子を中国から戻して内部改革に着手させました。

ざっくり言えばDX改革ですが、いざ始めたらあらゆる問題が次から次へと出てきました。それはもう、直視するのが嫌になるくらい(笑)。

会社にはウィークポイントというものは必ずあります。ストロングポイントのおかげで普段見えなくされているだけです。問題は、弱点が見えた時に、「相殺されてプラマイゼロ。それでいいじゃん」と思うのか、「ストロングポイントをより伸ばすために弱点は克服しよう」と思うのか。

私は後者でした。性分として後者なことと、あと、薄々は問題に気付きながらもあえて目をつぶってきた自分にも責任の一端があると思ったから、今回は息子を中心に全員で内部改革を始めました。

中小は大企業と違って自分が株主だから、「これくらいは問題ではない」と強弁することもできます。あと5年くらいやって事業を畳んで地域のお客さんもお世話になっている取引先も放り出して悠々自適のシニアライフ…という未来を目指すのであればそのままでかまいません。――だけど、10年先20年先を見据えるなら、変えるべき時は変えないと!

中小企業は就業規則とか人事評価制度とかも10年前の内容で在って無いようなものなのが普通です。下手したらルール化されていないところもあります。

そういった会社では「この業務、必要?」と思う仕事にも人を当ててやらせていたり、ITスキルのある人にお願いしたら30分で終わる作業を平気で何時間もかけてやらせていたりします。各人が10年選手でそればかりやっているから、必要かどうかとか、効率が良いとか悪いとか、考えなくなるんです。だからそのままの状態が続いてしまう。

でも、そういう部分を残していたら生産性はいつまでも上がりません。いっぽうで、「変えよう!変えるべきだ!」と正論でいくら迫っても、何年も続いた習慣ややり方はなかなか変えにくい。守旧派が抵抗するからです。

この壁を一気に打破するために、私は最初に、事務を手伝ってくれていた自分の妻に仕事を辞めてもらいました。本気で内部改革をすることを社内に示すためです。効率の良いやり方を教えられる人が社内にいなかったのは会社の責任で、その意味では妻には悪かったけど、ITスキルのある人を当てたほうが生産性が上がるのは事実なのだから、そこはもう仕様がない。変えるしかありません。

そういった柔軟さも永続企業を目指す上で必須です。まずは自己変革を忘れないこと。そのために経営者自身も柔軟な頭と素直な精神をキープすること。次回最終回はこの点についてお話しします。お楽しみに。

→第8回(最終回)に続く(4月上旬配信予定)


◇佐藤勝人(さとう・かつひと)
サトーカメラ代表取締役副社長。日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント。想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント。作新学院大学客員教授。宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師。商業経営者育成「勝人塾」塾長。(公式サイト)
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に『地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法』(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。

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