【第1回】お客様から愛される地域一番店のつくり方──「なぜサトーカメラは圧倒的シェアを誇るのか」(佐藤勝人)

 問い:一人当たりのカメラ・レンズ年間消費量が一番多い都道府県はどこか。
 答え:栃木県(総務省調べ)

その差は実に、全国平均の3倍にのぼります。この数値を叩き出す立役者こそ、栃木県内に商圏を絞り、「地域一番化戦略」で圧倒的シェアを誇るサトーカメラ。同社副社長の佐藤勝人さんはビジネス書作家として12作目を出し、商業経営コンサルタント、Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」と情報発信を含め、全国各地の商工会議所で講演やセミナー、さらに企業や商店の現場へ出向いて個別支援をし、経営者育成塾「勝人塾」も主宰されています。

本連載では、そんな佐藤さんに、「人材育成」「挑戦」「経営戦略・戦術」「しくじり」「復活」などをテーマに、若い世代にも響くヒントを語っていただきます。第1回は自己紹介も兼ねて、どんな経緯で現在の事業が始まり、どんな問題を乗り越えて来られたか。ご活動の原点をお話しいただきました。

◎【新紙幣発行記念!いまだけ特典付き】お申込みくださった方に、大変反響を呼んだ2022年3月号『渋沢栄一に学ぶ人間学』プレゼント!人間学を学ぶ月刊誌『致知』はあなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。

たった3分で手続き完了、1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら

業界で3万店目ぐらいからスタートして10年強でベストテン入り

皆さま、こんにちは。佐藤勝人です。

『致知』の読者とは久方ぶりの再会です。前回登場したのは2013年6月号の、「想い出をキレイに一生残すために」というタイトルの記事でした。その時は日本テレビ系列「心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU」という番組を見た編集部の藤尾允泰さん(現編集長)が私に連絡をくださって、「ぜひ取材させてほしい」というので二つ返事で快諾して、登場させていただきました。

あれから10年。今度はweb連載のお話をいただいて再び『致知』読者の皆さんにお目にかかれることに、「縁とはありがたいものだなぁ」という思いを噛みしめています。

初回ですから簡単に自己紹介をさせていただきます。私は栃木県内にリアル店舗11店とネット通販と学校写真と法人営業を運営するカメラ写真専門の「サトーカメラ」で代表取締役副社長を務めながら、経営コンサルティング会社の日本販売促進研究所の商業経営コンサルタントとしても活動しています。そうやって二足の草鞋を履かせて頂いて22年目になります。

サトーカメラは両親が経営していた家業を私と兄で業態転換して1988年に始めた会社です。当時、この業態ではすでに後発組だったので、最初は安売りするしかなくって…(苦笑)。

でも、読みと仕組みがハマればそれこそ誰でも成功するのが商業の常。当時はカメラの主流がマニュアルフォーカスからオートフォーカスに切り替わるタイミングだったので、保守派のカメラ店は「オートは邪道!マニュアルこそ王道だ」という考えでした。私も個人的にはそういうこだわりを持っていましたが、後発組だったせいもあってオートの便利さに賭けて、オートフォーカスカメラをガンガン売りました。それで一気に業績を伸ばし、2000年代に入る頃にはカメラ業界売上ランキングで全国ベストテンに入ってきました。

スタート時はそれこそ3万店目とかだったから、なかなかの成長ペースだったと思います。この時の「時代は戻らない」という経験が私の経営戦略の礎になりました。

“人”をめぐることでは特に苦労した

ただ、肝心の“人”がいなかった。だから結構、どんな人でも使ったなぁ…。高校生をアルバイトで雇うのはもちろん、一番極端な例では、精神病院から出てきた人も使っていた。あるとき救急車が店の前に停まって、その人を連れていったときに初めて、逃げて来た人だったと知った。あれはびっくりしたよね(笑)。

そんなわけで、人材についてはホント苦労しました。もちろん、私自身が24歳の素人店長だもの。誰も言うことは聞かないのが普通でした。私が「もっとこうしなきゃ」と言っても、わからないし響かないし、だからと言ってイライラしても変わらないから自ら率先して動くしかなかった。商品の陳列も店作りも掃除も、仕入も品出しもメーカー商談も、プライス書きにPOP書きにチラシ作り、集客に接客に販売と、とにかく「エースで4番で監督で応援団長」と私自身が動いて会社を切り盛りするしかなかったのです。

また、“人”ということで言えば、従業員だけじゃなくお客さんに関しても、お客さんには苦労という言葉を使うわけにいかないけど、競合他社と違う方針で臨んだことは確かでした。

というのは、当時商業の世界では「ポジショニング理論」が流行っていて、「顧客を選ぶ」「優良顧客をどう囲い込むか」という考えが普通だったんですよ。でも、こっちは後発組。競合他社と同じことをしていても勝てない。だから私は「お客さんを選ばない。人を差別しない、誰でもウエルカム」という方針にして、どんなお客さんでも迎え入れるようにしたわけです。

それはそれは、いろんな人が来ましたよ~(笑)。ヤクザまがいの怖いお方から、厚化粧のジェンダー・マイノリティのお方に、カメラが好き過ぎちゃってる昭和の頑固親父さんetc…。当時の時代背景からすると総じて競合他社が敬遠するタイプのお客さんたち。

だけど、そういう人たちも、私たちがキチンと向き合ってよく話を聞くと、案外普通で良い方なんですよ。考えてみれば、「思い出の瞬間を記録するために写真を撮りたい」という気持ちにお客さんの属性は関係なかったのです。人として当たり前の感情であり、欲求であることをその時に知りました。

そう気付いたらなおのこと、「私たちがそれに応えなくてどうする!」という気持ちが強くなった。つまり、自分たちの効率のために「お客さんを選ぶ」という企業側の論理、その論法はビジネスとしては正しいのだろう、でも、うちは違う、と。

時流に流されるのではなく時流を捉えて独自の企業理念を定めた

時流を捉えるという点ではフイルムからデジタルに移行した時もそうでした。

業界売上ベストテンに入って注目され、いよいよこの勢いで飛躍しようと思ったその頃、業界で「フイルムが無くなる」という噂が出たんです。フイルムに焼き付けて撮影する形から、デジタルな光学データにして撮影する形に変わる、と。

業界の見方は二つに分かれました。業界に長く携わってきた先輩経営者からは「50年100年続いてきたフイルムがなくなるわけがない」という見方。対して私たちのような新参者は、「なくなるかも…」という見方。2000年代初頭の段階では、まだはっきり「なくなる」とは考えられなかったですからね。

このことに関しては実は裏話があって、固有名は伏せるけど、大手フイルムメーカーの社長が「フイルムは10年後に10%ダウンまで下がるがそれ以上は下がらず、デジタルと共存する」と喧伝したんだよね。私が「デジカメのほうが便利ですけど」と言ったら、本気で怒られましたよ。「坂本龍馬の時代からあるフイルムが無くなるわけないじゃないか!キミは勉強不足!業界を上げて残すのが仕事だ!歴史と伝統が無くさせるわけがない!」って。私はそこで感じた異様な雰囲気を今でも覚えています。「この人たちは、お客さんのためではなく、業界のために残すのか・・・」と。

私はその理屈が理解できなくてねぇ(笑)。そして現実はその翌年から毎年10%ダウンで着実に業界は消失の危機に迫り、取引先や同業者がバタバタ潰れていきました。サトーカメラはそのなかで、当時の栃木県内ではフイルムカメラ販売シェア80%を獲得していましたが、私は経営者として「全部デジカメに切り替える」と判断し、フイルムを辞めてデジタルに全振りしました。結果的に誰も経験したことがない未曾有の苦境の中でも何とか生き延びることができました。それは最初の成功体験で学んだ「時代は戻らない」が、この時の経営判断だったのです。

全振りした当初は、お客さんや現場からも「カメラ屋なのになんでフイルムを辞めるのですか!デジカメなんてカメラじゃない!」と大反対の罵声を浴びました。けれど、私は10年後を見据えて揺るがなかった。「記録媒体は何に変わろうがいい、フイルムだろうがデータだろうが、お客さんの「想い出を残したい」という気持ちに寄り添えるものであれば」と思っていたからです。

その時には既に現場の社員も100名を超えていたので、なかなか理解してくれなくてねぇ…。苦し紛れに言ったのが、現在のサトーカメラの企業理念である「想い出をキレイに一生残すために」でした。

この理念の元ネタは父の時代にお客さんに渡す写真袋に印刷されていた「想い出は綺麗に」という言葉です。これを見付けて気に入った私が父に聞くと、父はお客さんとの昔話をいろいろ話してくれました。それらを聞くうち、私のなかでこれまでのいろんな要素が繋がり、「俺たちは地域の人たちの想い出をキレイに一生残すためにやっているんだ!」という確信が生まれました。

現場やお客さんの心を繋ぎ止めるための共通認識としての「何のために」を企業理念として、「地域の人々の想い出をキレイに一生残すために」という言葉を披露した日のアソシエイトたち(編集部注:企業理念を定めてからのサトーカメラはスタッフを従業員と呼ばずアソシエイトと呼んでいる)の反応は、今も忘れられません。みんな私の顔を見て「この人とうとうイカレた???」と。いや、というか、口を開けてぽか〜んとした表情だったからね…(笑)。

第2回 「お客様はいつも正しい──スチュー・レオナルドの教え」


◇佐藤勝人(さとう・かつひと)
サトーカメラ代表取締役副社長。日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント。想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント。作新学院大学客員教授。宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師。商業経営者育成「勝人塾」塾長。(公式サイト)
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に『地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法』(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。 

◎【新紙幣発行記念!いまだけ特典付き】お申込みくださった方に、大変反響を呼んだ2022年3月号『渋沢栄一に学ぶ人間学』プレゼント!人間学を学ぶ月刊誌『致知』はあなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。

たった3分で手続き完了、1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら

人間力・仕事力を高める記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

『致知』には毎号、あなたの人間力を高める記事が掲載されています。
まだお読みでない方は、こちらからお申し込みください。

※お気軽に1年購読 11,500円(1冊あたり958円/税・送料込み)
※おトクな3年購読 31,000円(1冊あたり861円/税・送料込み)

人間学の月刊誌 致知とは

閉じる