気がつけば、稲盛さんと同じような道を歩いてきた(日本電産会長・永守重信)

圧倒的なリーダーシップで、創業した日本電産を一代で一兆円企業に育て上げた永守重信さん。長らく京セラ創業者・稲盛和夫さんをライバル視していると言われてきましたが、永守さんにとって稲盛さんはどのような存在だったのでしょうか。月刊『致知』ではこの度、永守さんご本人に貴重なインタビューをさせていただきました。〈撮影=菅野勝男〉

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稲盛哲学への共感

〈永守〉
京都弁で「始末」ということを言うんです。始末という言葉を、あまりいい意味に捉えない人もいるでしょうけど、京都でいう始末家とは「不要なお金は一切使わない、要るお金はバーンと思い切って使う人」という、ある種の褒め言葉です。

稲盛さんはまさにこの始末家なんですね。

2003年、いまの日本電産ビルが完成した時、稲盛さんも竣工式に来てくださいました。すると「中の様子を見せてほしい。社長室も見たい」と。普通はなかなか中まではお見せしないのですが、他ならぬ稲盛さんのご依頼ですから、社内をご案内しました。

稲盛さんは、ふと一つの植木に目を留めて「ここに植木が置いてあるけれども、なんでこんなところに置いてあるんだ」と質問されました。私が「いや、これは別に買ったわけではなく、竣工式に貰ったものですよ」と答えたところ、続けてこうおっしゃるんです。

「いや、君は貰ったと言うけれども、誰が毎日この植木に水を与えるのか。これが枯れた時は誰が捨てに行くのか。こんなことをしていたら、君はいつまで経っても京セラを抜けないぞ。京セラに来てみなさい。そんな無駄は全くない」

要は売値はマーケットプライスだけど原価は自分たちで決められる。原価が上がるようなことをしていたら駄目だ、という戒めなんです。植木に譬えて無駄のない健全な会社経営のあり方を教えてくださったんですね。

――なるほど。

〈永守〉
こちらとしてはお祝いの品を貰って喜んでいただけで、そこからコストが発生するという考えには至りませんでした。細かい話のようなんだけど、「ああ、なるほど」と思わず唸りましたね。

帰り際にも「立派なものをつくると、だいたいその会社は駄目になる。よくよく注意しなさいよ」とおっしゃいました。竣工式に招かれたなら普通は「おめでとう、よかったね」という言葉を掛けるものですよ(笑)。だけど、いま思い返しても、言われたことは全部正しかった。本当の親切とはこういうことなのでしょうね。

――普通の人には言えない言葉ですね。

〈永守〉
稲盛さんという人は結構、口が悪いんです。ただ、人の印象を悪くするような口の悪さではなくて、親しみのある口の悪さです。あまり飾り気がなく、親しい人間には思ったことをバンバンおっしゃる。

だから、全く知らない人はきつく聞こえることもあると思うんですが、そんな稲盛さんの言葉はひと言ひと言がスーッと自分の中に沁み込んできました。冗談みたいに何かを話しておられると思ったら大間違いで、真剣に聞いていないと、その冗談の中にいっぱい学ぶものがあるんですね。


(本記事は月刊『致知』2021年4月号 特集「稲盛和夫に学ぶ人間学」より一部抜粋・編集したものです)

『致知』2022年4月号は永守重信さんに表紙を飾っていただきました。経営者として既に破格の成功を収めながら、学校運営を通じての教育改革に乗り出し、まだ見ぬ頂を目指す永守さん。共に人材教育に取り組んできた名和高司さん(京都先端科学大学客員教授)と対談いただき、未開の高峰に挑み続ける永守氏のエネルギーの源を探りました。記事詳細は下記バナーから!

【著者紹介】
◇永守重信(ながもり・しげのぶ)
昭和19年京都府生まれ。42年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒業。48年日本電産を設立し社長に就任。小型モーターで世界的に事業を拡大。現在は会長兼最高経営責任者(CEO)。平成30年京都先端科学大学を運営する学校法人理事長に就任した。著書に『情熱・熱意・執念の経営』(PHP研究所)など。


◇追悼アーカイブ
稲盛和夫さんが月刊『致知』へ寄せてくださったメッセージ

「致知出版社の前途を祝して」
平成4年(1992)年

 昨今、日本企業の行動が世界に及ぼす影響というものが、従来とちがって格段に大きくなってきました。日本の経営者の責任が、今日では地球大に大きくなっているのです。

 このような環境のなかで正しい判断をしていくには、経営者自身の心を磨き、精神を高めるよう努力する以外に道はありません。人生の成功不成功のみならず、経営の成功不成功を決めるものも人の心です。

 私は、京セラ創業直後から人の心が経営を決めることに気づき、それ以来、心をベースとした経営を実行してきました。経営者の日々の判断が、企業の性格を決定していきますし、経営者の判断が社員の心の動きを方向づけ、社員の心の集合が会社の雰囲気、社風を決めていきます。

 このように過去の経営判断が積み重なって、現在の会社の状態ができあがっていくのです。そして、経営判断の最後のより所になるのは経営者自身の心であることは、経営者なら皆痛切に感じていることです。

 我が国に有力な経営誌は数々ありますが、その中でも、人の心に焦点をあてた編集方針を貫いておられる『致知』は際だっています。日本経済の発展、時代の変化と共に、『致知』の存在はますます重要になるでしょう。創刊満14年を迎えられる貴誌の新生スタートを祝し、今後ますます発展されますよう祈念申し上げます。

――稲盛和夫

〈全文〉稲盛和夫氏と『致知』——貴重なメッセージを振り返る

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