赤ちゃんは母親を選んで生まれてくる ——「胎内記憶」が私たちに示すもの

産婦人科医である池川明氏は1999年から子どもの「胎内記憶」に関する調査を実施。3,500名以上の子どもたちにアンケートを行う中で、約3割の子どもたちに「胎内記憶」があることを突き止められました。「胎内記憶」が意味するものとは何か、そこに隠された深いメッセージを池川氏に紐解いていただきます。

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お母さんがさみしそうな顔してたから笑ってほしくて来たんだ

「おなかの中は暗くて、でもあったかくて、泳いでたんだ。早くママにあいたいと思ってた」――これはある2歳の男の子の言葉です。

私は、産婦人科医として多くのお産と関わり合う中で、母親のおなかの中にいた時のことを覚えている子どもがいることに気づき、大変興味を覚えるようになりました。そこで、私の医院の患者さんや知り合いにお願いしてこの「胎内記憶」についてのアンケートを取り始めました。多くの幼稚園、保育園の協力もいただいて、最終的には3,500名以上のアンケート調査を行うことができました。その結果、約3割の子どもに胎内記憶があるということが確認できたのです。

母親の問いかけに応じて、子どもたちはいろいろなことをしゃべります。その内容は本当に不思議でたくさんの発見があります。おなかの中は温かかった、暗かったと言う子。おなかの中で寝ていた、泳いでいたと言う子。「包丁が入ってきて足を掴まれて引きずり出された」などと、帝王切開で生まれた際の記憶を語る子もいます。また中には、受精前の精子の記憶や、結婚前の父親や母親を見たという記憶を持つ子までいます。

こうした一見不可解に思われる「胎内記憶」や「おなかに入る前の記憶」は、実はとても大切なことを私たちに示唆しているのです。

一つは、胎児にも人格がある、ということです。赤ちゃんはおなかの中にいる時からちゃんと意識があり、外の世界の様子を見たり聞いたりしているのです。

それから、赤ちゃんは母親を選んでくる、ということも読み取ることができます。「パパとママを選んだんだよ」「お母さんがさみしそうな顔してたから笑ってほしくて来たんだ」――こんなことを言う子どもが実にたくさんいるのです。

私は、母親がこのような事実を知れば、赤ちゃんに対する愛情が増し、その後の子育てにもよい影響を与えることになるだろうと考えています。いま問題になっている赤ちゃんへの虐待や育児不安というのは、一人の人間として赤ちゃんの存在を認めていないことが、大きな要因だと思います。

セックスをしたらたまたま生まれてきただけで、あたかもペットのように赤ちゃんを捉えている人が多いのです。そういう母親に、胎内記憶の話を通じて、赤ちゃんにも人格がある、赤ちゃんは自分たちを選んできた、ということを認識してもらうと、子どもに対する接し方が一変し、子育てが楽しくなった、楽になったとおっしゃいます。とにかく、赤ちゃんの存在そのものを認めて尊重してあげるということが、お産や子育てにおいて何よりも大切なことなのです。

大切なのはお産を通じて赤ちゃんに対する愛情を育むこと

おなかの中の記憶については、科学的に証明されているわけではないので、「本当なの?」と半信半疑の方も少なくありません。たしかにすべてが真実だと断定はできませんが、私は、胎内記憶が正しいかどうかということよりも、そのことを通じてお産や子育てを前向きに変えていくことのほうが大切なのではないかと思うのです。

胎内記憶というものに気づいてからは、私自身のお産への取り組み方もずいぶんと変わりました。以前は赤ちゃんが無事に生きて生まれることが目標で、早く異常を見つけよう、早く処置をしようということばかりに意識が向いていました。そして、点滴をしたり吸引分娩をしたり、必要以上にお産に手を加えていました。

しかしこれは赤ちゃんにとっては大きな負担なのです。実際、吸引分娩を行って出てきた赤ちゃんが、こちらをにらんで怒っているように見えることもあります。

いまでは極力自然出産を心がけています。これまでの経験から、赤ちゃんは本来何も手を加えなくても無事に生まれてくるものだということを実感しています。自然出産した赤ちゃんは、本当にいい顔をしているのです。

ただし、私は自然出産がすべてだと考えているわけではありません。人それぞれに事情があり、いろいろなお産の形があります。理想通りのお産ができなくても、母親は自分を責める必要はないのです。大切なのは、お産の方法そのものよりも、お産を通じて赤ちゃんとのつながりを感じ取り、赤ちゃんに対する愛情をしっかりと育むことなのです。

子どもというのは親の役に立つことを願って生まれてくる

胎内記憶や自然出産に取り組み始めてから、私は「人生の目的」というものを深く考えさせられるようになりました。「お母さんを選んできた」と語る子どもや、お産や子育てを通じて成長していく親の姿を見ていると、子どもというのは親の役に立つことを願って生まれてくることが実感できます。人が生まれてくるのは、結局、それぞれが何らかの形で人の役に立つためだろうと考えるに至りました。

これは流産や死産の場合でも同じで、赤ちゃんは亡くなることによって親や周囲の人たちに何らかの温かいメッセージを残し、人間的な成長を促しているのだと私は信じています。

胎内記憶を知ることによって、人の気持ちは大きく変わります。そして、一人でも多くの人の気持ちが変わることによって社会が変わり、日本が変わると考えています。

私は、胎内記憶を調査することにより、実に多くのことに気づかされました。この気づきをさらにたくさんの方々と共有できればと思っています。

◇池川明いけがわ・あきら=池川クリニック院長

(本記事は『致知』2005年10月号 特集「幸福論」より一部抜粋したものです)

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