「先祖の因縁」って本当!? 家系分析をとおして分かったこと

経営コンサルタントの天明茂さんは、仕事の一環として「家系分析」を行っていきました。潰れた会社の再建のために社長さんに家系を調べてもらって家族のあり方を見直すと、家庭内の人間関係がよくなったり、経営が持ち直したり、慢性病が治ったり、ということが数多くあるというのです。筑波大学名誉教授・村上和雄先生が聞き手になって迫っています。

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受け継がれていった親族の確執

(村上) 
家系図だけを見ても、その背景にあるものまではなかなか分かりませんものね。

(天明)
私たち夫婦は両親と同居していたのですが、私の父と妻との間に確執がありました。しかし、調べていくと妻と父だけでなく、母と義理の祖母、祖母と義理の曾祖母、曾祖母とその上の高祖母の間にも似たような確執がありました。同じパターンが何代にもわたって繰り返されていたんです。

このままいったら、今度は私たちが子供と争うことになる。「うわぁ、これは何としても汚れた家系を正さなきゃ」と思って、さらに調査を進めたら、他にもいろいろなことが見えてきました。

例えば、曾祖父母は粟餅屋をやっていた同じ名字の天明家に夫婦養子に入るのですが、養家先の両親との対立が激しくなって養子縁組を解消し、絶家していることが分かりました。粟餅屋の両親が「このままだと絶家してしまう」と泣いて頼むのを振り切って曾祖父母は家を出てしまう。その時、曾祖父母は「勝手にしろ。その代わりおまえたちが死ぬ時は馬乗りになって絞め殺してやる」という捨て台詞を言われた、という話を母が祖父母から伝え聞いていたというんです。

それを知った時には身の毛がよだちましたが、そう思って改めて家系を調べていくと、家系の中に首つり自殺をした人が何人もいたんです。私にはまるで「首を絞め殺してやるぞ」という怨念のようにしか思えませんでした。

(村上) 
あまり知りたくはない現実ですね。

(天明)
でも、それを知ったことがかえってよかったです。粟餅屋をやっていた天明家の墓を探し出し供養してから、不思議とよいことが起こるようになりました。妻と父の確執も不思議なくらいなくなりました。というのも、確執の原因が家系分析によって分かってきたんですね。

父親は無口で陰険な人だったと申しましたが、その背景を探ると、祖父が人の借金を肩代わりして返せなくなり、父と父の兄が人質として百姓奉公をさせられていたことが分かりました。早朝から夜中まで働きづめの中で父は、祖父が借金をしてしまったために自分たちがこんな辛い思いをしなくてはいけないという惨めさをいやというほど味わうんですね。その頃から、人を信用してはいけない、お金は無駄に使っちゃいけない、贅沢はいけないという価値観が培われていったようです。

(村上) 
そうでしたか。

(天明) 
だから、父は妻がちょっと美味しいものを作ると箸をつけなかった。妻にしてみたら「お父さんのために一所懸命料理をこしらえたのに、きょうも食べてくれない。きょうもこんな皮肉を言われた」と大変なストレスだったのですが、父は決して悪気があったわけではありませんでした。

(村上) 
しかし、そういう背景が分かってくると、対立していた相手の立場というものが理解できるのではありませんか。

(天明)
おっしゃるとおりです。妻の場合も、

「そうか、お父さんは私を嫌って食べないわけじゃないんだ。贅沢ができないだけなんだ。だからお豆腐なら食べてくれるんだ」

と。それ以来、父には豆腐や目刺しを出し、私たち夫婦はちょっと美味しいものを食べるようにしましたが(笑)、そういう工夫をする中で妻も父を恐れなくなって自分から話ができるようになったんです。

私は5人きょうだいですが、父は晩年、きょうだいの連れ合いの中で私の妻を「セツ子、セツ子」と一番可愛がってくれましたよ。

先祖への感謝を忘れてはいけない

(村上) 
そのように考えていくと、私たちはあまり意識せずに生きていますが、時にご先祖の恩に思いを馳せるのは大事でしょうね。

(天明) 
そのとおりですね。世の中には、自分の心に親やご先祖が生きていない人がたくさんいます。でも「ああ、ご先祖のおかげでいまの自分がある。ありがたい」という感謝の思いを常に持ち続けていることでご先祖は喜び、人生も好転するのではないでしょうか。

もう一つ大切なのは、自分たち親子、夫婦、きょうだいが仲良くしていることですね。

(村上) 
そうでしょうね。家系をずっと辿っていくと、最後には命のもとであるサムシング・グレートに繋がるんです。つまり、サムシング・グレートと人間は親子関係なんですね。

僕は遺伝子の研究を続ける中で、そのことを確信しました。遺伝子は38億年前から連綿と続いている。なかなか感じ取れないことですが、あなたの命も私の命も38億年間続いた命の現れであることは間違いありません。その証拠に、ノーベル賞を取った人と、パッとしないおじさんの遺伝子も99.5%一緒で、その差は0.5%の差にすぎません。

僕は人間が99.5%同じ遺伝情報を持っていることにこそ注目すべきだと思うんです。サムシング・グレートは親ですから、特定の子だけを贔屓するはずがない。あるいは障碍も一つの個性として与えられたものなのかもしれない。

オンリーワンの命が一つに繋がっている。これからは、そのことを自覚する時代になったのではないかと僕は思います。


(本記事は月刊『致知』2015年6月号 連載「生命のメッセージ」より一部抜粋・編集したものです)

◇天明 茂(てんみょう・しげる)
昭和17年東京都生まれ。明治学院大学卒業後、日本コンサルタントグループを経て一般社団法人日本創造経営協会に所属。55年よりTKC出版主催の研修会講師、中小企業大学校各校講師を務める傍ら、行き詰まった企業の再建に携わる。平成9年から宮城大学に奉職する。現在、公認会計士、事業構想大学院大学教授、東京国際大学客員教授など多くの役職を持つ。著書に『なぜ、うまくいっている会社の経営者はご先祖を大切にするのか』(致知出版社)など。 ◇村上和雄(むらかみ・かずお)

◇村上和雄(むらかみ・かずお)
昭和11年奈良県生まれ。38年京都大学大学院博士課程修了。53年筑波大学教授。平成8年日本学士院賞受賞。11年より現職。23年瑞宝中綬章受章。著書に『スイッチ・オンの生き方人を幸せにする魂と遺伝子の法則』『君のやる気スイッチをONにする遺伝子の話』(いずれも致知出版社)など多数。令和3年4月逝去。

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