2 月号ピックアップ記事 /対談
経営は絶えざるイノベーションである 林野 宏(クレディセゾン社長) 落合寛司(西武信用金庫理事長)
3度立て直しに失敗した会社を、日本一のカード会社に育て上げた林野宏氏。長らく業界下位に甘んじていた信用金庫で、見事に大変革を成し遂げた落合寛司氏。二人はいかに経営の機を活かし、変に応じてきたのか。先の読めないこの変革期の処し方を、各々の貴重な体験を交えながら語り合っていただいた。
試練のおかげで自分はいまも第一線に立っている。もし試練がなければとっくに退いていたとも思う
林野 宏
クレディセゾン社長
「経営をやっていると、本当にいろんな機が次から次に津波のように押し寄せてくるものですね。自分のこれまでの経営人生を振り返ってみても、母体であるセゾングループが崩壊して、関連会社の負債を負うことになった時期もありました。リーマン・ショックで、子会社に約1600億円もの引当金が必要になったり、規制法規ができて同業他社が一気に潰れてしまうような激震が走ったり、会社のシステムを刷新したら2000億円以上もの資金が必要になったり、とにかく次から次へと試練に見舞われてきました。
しかし考えてみれば、試練のおかげで自分はいまも第一線に立っている。もし試練がなければとっくに退いていたとも思うんです。私がいまも第一線に立っていられるのは、試練のおかげなんですね」
突き詰めれば、やっぱりリーダーは人望だと私は思います。どうすれば部下から慕われるかというと、自分が何をしたいかを部下にきちんと伝え、納得してもらうこと
落合寛司
西武信用金庫理事長
「時代背景によって、求められる資質や行動というのは変わっていくものですが、いまのような変革期は、まずポジティブであること。いろんな課題に前向きにトライできる人であることがまず大事だと私は思います。もう1つは、夢や目標、志を明確に持つこと。3つ目は自責です。
難しい変革期においては、上手くいかないこともたくさんあって、原因を外に求めればいくらでもあります。しかし、そんなことをしていても何も変わりません。大事なことは、自分の何を変えたらいいのか、自分のどこに原因があるのか、自分がどう変わればいいのかと考えること」
プロフィール
林野 宏
りんの・ひろし——昭和17年京都府生まれ。埼玉大学文理学部卒業後、西武百貨店入社。人事部、企画室、営業企画室を経て、同百貨店宇都宮店次長。57年西武クレジット(現・クレディセゾン)に、クレジット本部営業企画部長として転籍。平成12年同社社長に就任。著書に『誰も教えてくれなかった運とツキの法則』(致知出版社)『BQ 次代を生き抜く新しい能力』(プレジデント社)。
落合寛司
おちあい・かんじ——昭和25年神奈川県生まれ。48年西武信用金庫入庫。平成9年立川南口支店支店長。常勤理事、専務理事を経て、22年理事長に就任。金融庁金融審議会専門委員、中小企業政策審議会委員、経済財政諮問会議政策コメンテーターフォーラム政策コメンテーター、学校法人亜細亜学園理事などを務める。
編集後記
今号のトップは、クレディセゾン社長の林野宏さんと、西武信用金庫理事長の落合寛司さんのご対談。3度も立て直しに失敗した会社を日本一のカード会社に育て上げた林野さんと、合併で混乱していた信用金庫を業界トップクラスに引き上げた落合さんのお話は、仕事の機を活かし、変に応ずるヒントに満ちた実に濃密な内容でした。
特集
月刊誌『致知』のバックナンバー