5 月号ピックアップ記事 /対談
相田みつをの残した言葉 相田一人(相田みつを美術館館長) 横田南嶺(円覚寺管長)
書家・詩人である相田みつをの書に「そのとき どう動く」という作品がある。人生はいつどこで何が起こるか分からない。その時その時の出来事に対して相応しい手を打っていかなければ、人生という旅路は謳歌できないだろう。相田みつをがこの言葉に込めた思い、その作品と生き方から学ぶべき人生の心得について、相田一人氏と横田南嶺氏に縦横に語り合っていただいた。
父は“人生というのは、その時どう動くかの連続なんだ”とよく言っていました
相田一人
相田みつを美術館館長
「本人がよく言ったのは、『求める世界が深くなればなるほど、迷いも深くなるんだ。だから、これでいいという書は一点もない』と。求める世界がどんどん深くなっていったら、迷いも全部なくなってしまったというのでは、『にんげんだもの』の世界から懸け離れてしまう。
ですから父は、迷いが深くならなければ本当にいい書は書けない、と考えていたんじゃないでしょうか。それが父の書の魅力だと思います」
弱さを知っていることが一番の強さ
横田南嶺
円覚寺管長
「私は相田みつを先生が自分の弱さを平気でお書きになって、それを認めておられるところが大きな魅力だと、こう思っているんです。
本を読み直していたら、普段は家内や子供たちに対して、自分は若い頃に剣道をやっていたから、泥棒が来たって平気だと言っていたけれども、実際に泥棒に入られて一番怯えていたのは自分だった、と書かれていますね。弱さって普通ならば隠したいところなんでしょうけれども、相田みつを先生は決して繕わない。だから、私はむしろこの弱さを知っていることが一番の強さなのではないかと思います」
プロフィール
相田 一人
あいだ・かずひと――昭和30年栃木県生まれ。書家・詩人として知られる相田みつをの長男。出版社勤務を経て、平成8年東京に相田みつを美術館を設立、館長に就任。相田みつをの作品集の編集、普及に携わる。著書に『相田みつを 肩書きのない人生』(文化出版局)など。
横田 南嶺
よこた・なんれい――昭和39年和歌山県生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。著書多数。最新刊に〓人生を照らす禅の言葉〓(致知出版社)。
編集後記
トップ対談を飾るのは、相田みつを美術館館長・相田一人さんと円覚寺管長・横田南嶺さん。書家で詩人の相田みつをさんの「そのとき どう動く」という作品に込められた思いやエピソード、相田みつをさんの生き方から学ぶことについて、語り合っていただきました。人生のまさかに直面した時、どう動けばよいのか。そのヒントに満ち溢れています。
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