「徳」と「財」はどちらが大切か——約2,000社の経営幹部が心酔する講師・田口佳史が紐解く

上に立つ者の必読書として知られる古典の名著『大学』。古来、「初学徳に入る門」――徳を身につけようとする人が最初に読むべき本といわれ、2,000年以上にわたり読み継がれてきました。孔子より46歳年下の曾子が著したとされ、『論語』『中庸』『孟子』とともに「四書」のひとつに数えられる文字通りのロング&ベストセラーです。東洋思想に基づくリーダーシップ論の第一人者であり、多くの経営者が教えを請う田口佳史さんによる講義録『「大学」に学ぶ人間学』より、「徳と財」のお話をお届けします。

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徳がまず根本

「徳は本なり。財は末なり。本を外にし末を内にすれば、民を争はしめて奪を施く。
是の故に財聚まれば、則ち民散じ、財散ずれば、則ち民聚まる。」

ここに出てくる「徳は本なり。財は末なり」は有名な言葉ですから、皆さんもお聞きになったことがあるかと思います。

この言葉はよく誤解されて、「徳こそが大切で、財は大したものではない」と解釈されることがありますが、これは大間違いです。徳も財も両方とも人間生活には必要なものです。したがって財も必要なのですが、財は徳があって初めて生まれるのです。

ゆえに、財を成すためにはまず徳から始めなければならない、ということになります。財ばかり追いかけていれば財ができるというわけではないのです。多くの国民を幸せにするとか便利にするとか、困った状態から救い出すとか不治の病から救うとかいうのは、すべて徳です。

そういう行為をすることによって、そこにお互いを利するような形の売買が生じて財が生じるのです。ですから我々がまず考えなければならないのは、自分の行動が徳に適っているかどうかをよく見ることです。それを確認したうえで励んでいれば、嫌だと言っても財は生まれると言っているわけです。

次の「本を外にし末を内にすれば、民を争はしめて奪を施すというのは、「本であるべき徳をないがしろにして、末であるべき財ばかりを求めれば、人のものを奪ってくるしかない」という意味になります。これは、『孟子』にある有名な章句を引用しています。利益だ儲けだと言っていると他人のものを持ってくるしかない。つまり「奪を施す」ということになると説いているのです。

すると「是の故に財聚まれば、則ち民散じ」政府・君主の側にばかり財が集中すれば民のほうには回りませんから、民は「こんな国にはいられない」と言って散っていってしまいます。しかし、「財散ずれば、則ち民聚まる」政府・君主が民のために財を一所懸命使えば、「あの国へ行けば豊かな暮らしができる」と言って民が喜んで集まってくるのです。


(本記事は弊社刊『「大学」に学ぶ人間学』より一部を抜粋したものです)

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◇田口佳史(たぐち・よしふみ)
昭和17年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、日本映画新社入社。47年イメージプランを創業。東洋倫理学、東洋リーダーシップ論の第一人者として知られる。著書に『「大学」に学ぶ人間学』ビジネスリーダーのための老子「道徳経」講義』『人生に迷ったら「老子」』『東洋思想に学ぶ人生の要点』(いずれも致知出版社)など多数。

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