2023年11月22日
今年3月に開催されたWBC(ワールドベースボールクラシック)で侍ジャパントップチームを率い、3大会ぶり3度目となる世界一へと導いた栗山英樹監督。栗山監督の固定観念に捉われない采配や、選手の能力を最大限に引き出す指導哲学の根底には、京セラ創業者・稲盛和夫さんの教えがあると言います。同じくスポーツ界で長年日本のサッカー界をリードしてきた岡田武史監督との対談から、稲盛さんから学んだ指導者の真髄に迫ります。
◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
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稲盛和夫が試合観戦で見せた闘魂
〈栗山〉
僕は野球解説者を経て2012年にファイターズの監督に就任した頃から、組織を発展させるために、様々な勉強をするようになりました。渋沢栄一の『論語と算盤』もその一つで、道徳と経済、一見相反する両側面の大切さを説かれていますが、それは野球においても同じだと感じています。スキルはもちろん大切ですけど、人間性を養っていないとチーム全体として大きく発展していかない。そう考えて、全選手に『論語と算盤』を手渡して読んでもらっています。
それである時ふと、渋沢栄一の言っていることは稲盛和夫さんの教えと符合するのではないかと思ったんです。岡田さんがおっしゃったように、稲盛さんの話は一見綺麗事に見えるけれど、それを実際に本気でやって経営をうまく軌道に乗せている。稲盛さんの著書を読めば読むほど、この世の中に稲盛さんのような素晴らしい人間がいることに感動しました。
僕自身がまだ学び途中で、スキルと人間性の両側面の大事さをどう選手たちに伝えようかと模索しているところですが、先ほどの「人間だからエゴはある」とのお話を聞いて、ああ、それでいいのかとストンと肚落ちしました。人間には弱さがあるから、それを認めてよくなろうと努力するんですね。
〈岡田〉
では監督になってから稲盛さんの本を読むように?
〈栗山〉
それ以前から読んではいましたが、本当に本と出逢う瞬間、心にグサッと刺さるタイミングってあるんですね。それが僕にとっては監督就任後でした。
稲盛さんは幾つもの著書を残されましたが、選手などこれから初めて稲盛さんについて学ぶ人にお薦めするとしたら、お世辞ではなくて致知出版社から出ている『成功の要諦』は講演録なので読みやすいと思います。
〈岡田〉
ああ、あれはいい本ですね。
〈栗山〉
先ほど稲盛さんのサッカーへの情熱の話がありましたが、京都サンガの応援では選手をかなり叱咤激励していたと聞きました。
〈岡田〉
僕が稲盛さんに出逢うきっかけがまさにそれです。僕の後輩が京都サンガの監督をしていたので応援に行ってみると、応援席から「こらぁー、前に行けー!」と叫んでいる人がいた。誰かと思ったら、稲盛さんでした(笑)。
試合で負けたらロッカールームまで怒鳴り込みに行くほど、稲盛さんは情熱を注がれていました。それで、盛和塾に入っていた知人に稲盛さんがどんな人か聞いたら、「一度会ってみたらどうだ?」と言われ、盛和塾に入塾することにしたんです。コンサドーレ札幌の監督になる前だから、1998年頃だと思います。
〈栗山〉
そうだったのですか。稲盛さんの情熱は本当にすごいと敬服しています。サッカーって激しい競り合いがあるじゃないですか。その時に、相手のユニフォームを引っ張ったり腕を掴んだりすることもあると思うのですが、稲盛さんは「お前ら、人間がそんなずるいことをして勝ってどうするんじゃ」と怒鳴っていたと。それを知って、監督である僕も、「勝負師として」と「人として」の部分でかなり考えさせられました。
(本記事は月刊『致知』2022年12月号特集「追悼 稲盛和夫」より一部抜粋・編集したものです)
◉『致知』最新10月号 特集「出逢いの人間学」に栗山さんがご登場!!
今年3月に開催されたWBC(ワールドベースボールクラシック)で、3大会ぶり3度目となる世界一に輝いた侍ジャパン。その快挙は日本中に歓喜の渦を巻き起こし、勇気と感動を与えてくれました。
チームを率いた名将・栗山英樹監督が予てお会いしたかったという横田南嶺氏と共に、悲願達成までの舞台裏を振り返りつつ、その最大の勝因、今大会を通して得た学び、さらにはいかなる出逢いによって自己を磨いてきたか、指導者としての哲学を縦横に語り合っていただきました。野球と禅――異色の組み合わせながら、そこに通底する人間学談義に興味は尽きません。ぜひご覧ください。【詳細・購読は下記バナーをクリック↓】。
◉栗山さんから『致知』へメッセージを頂戴しました◉
〝私にとって『致知』は人として生きる上で絶対的に必要なものです。私もこれから学び続けますし、一人でも多くの人が学んでくれたらと思います。それが、日本にとっても大切なことだと考えます。〟
◇栗山英樹(くりやま・ひでき)
昭和36年東京都生まれ。59年東京学芸大学卒業後、ヤクルトスワローズに入団。平成元年ゴールデン・グラブ賞受賞。翌年現役を引退し野球解説者として活動。16年白鷗大学助教授に就任。24年から北海道日本ハムファイターズ監督を務め、同年チームをリーグ優勝に導き、28年には日本一に導く。同年正力松太郎賞などを受賞。令和3年退任し、侍ジャパントップチーム監督に就任。著書に『栗山魂』(河出文庫)『育てる力』(宝島社)など。
◇岡田武史(おかだ・たけし)
昭和31年大阪府生まれ。55年早稲田大学政治経済学部卒業後、古河電工入社。平成2年現役引退。9年監督として日本初のFIFAW杯本選出場を果たす。11年コンサドーレ札幌監督、15年横浜F・マリノス監督に就任。19年日本サッカー協会特任理事、同年9年ぶりに日本代表監督に就任。22年W杯南アフリカ大会でグループリーグを勝ち抜きベスト16に導く。26年FC今治オーナーに就任。著書に『岡田メソッド』(英治出版)、共著に『勝負哲学』(サンマーク出版)など。
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