五輪史上初・レスリング女子4大会連続女王 伊調馨選手の強さをつくった〝教え〟

女子個人として前人未到のオリンピック4連覇を成し遂げたレスリング選手の伊調 馨さん。2021年には日本レスリング協会の「アントラージュ・コーチ」に就任が決まり、後進の指導にも情熱を傾けています。この実績だけを見ても強さに圧倒されますが、選手として歩み始めた幼少期にコーチから受けた〝教え〟が、勝ち続ける強さの源泉になっているようです。2018年の平昌オリンピック・スピードスケート女子500メートルで、日本女子初の金メダルに輝いた小平奈緒さんが見事に聞き出していきます。

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物心つく前から レスリングの世界へ

〈小平〉
きょうはせっかくの機会ですから、伊調さんのこれまでの歩み、レスリングを始めたきっかけを教えていただけますか。

〈伊調〉
私がレスリングを始めたのは兄と姉の影響です。兄と姉は近所の八戸クラブ(青森県)に通ってレスリングをやっていたんですけど、両親が「兄妹3人で通ってくれたほうが家事も楽だから」ということで、幼い私も一緒に連れて行かれたんですね。

一応、プロフィールなどでは3歳からレスリングを始めたということになっていますが、正直なところよく覚えていなくて。たぶん、それよりも前から兄や姉の横でマットに転がっていたのだと思います(笑)。ですから、いつの間にかレスリングを始めていたという感じです。

〈小平〉
物心つく前からレスリングの世界に。成長していくにつれてレスリングの練習が嫌になったりしたことはなかったのですか。

〈伊調〉
むしろレスリングの練習が楽しみでした。というのも、基本的に練習は土日の週2回で、レスリング自体の練習は40分くらい、あとの一時間は皆で走ったり、筋力トレーニングしたりがほとんどだったんですね。皆とワイワイ練習できるのがとても楽しくて、週2回だけでは寂しい、もっと練習をしたいなと思っていました。

それに、確かにコーチは怖かったのですが、スパルタ式の指導では全くなかった。コーチが怒るのは自分が一所懸命に練習をやらなかったからで、きちんと理由があるんです。試合でも勝ち負けではなく、練習したことを出さなかった時に怒るんですよ。子供ながらに、一所懸命に練習すればいいんだということは分かりました。

だから、試合の前に緊張したり、負けたらどうしよう、勝たなければコーチに怒られる、といった気持ちは一切ありませんでした。

あと、挨拶をする、誰よりも先に行動する、積極的に練習するとか、普段の姿勢が大切なんだよってことはよく言われました。これはいまも身についています。そういう意味では、私の原点はコーチの教えなのかもしれません。

〈小平〉
素晴らしい指導者に恵まれたのですね。早くから実戦の経験も積まれたのですか?

〈伊調〉
試合には幼稚園の頃から出ていました。ただ、小学1年生の時に3回戦で初めて男の子と当たったんですけど、その子の顔が本当に怖くて。顔を見た瞬間、泣いてしまってマットに上がれなかったんです。

でも、翌年にまた同じ男の子と当たった時には、泣かずに延長戦で勝ちました(笑)。人って一年で成長するものです。

〈小平〉
延長戦で。すごい(笑)。1年で心が成長したんですね。

〈伊調〉
そういう中で、自分はレスリングの世界でやっていくんだという気持ちになれたのは、やっぱり、幼い頃から一緒に練習してきた姉・千春の存在が大きかったと思います。

姉は中学時代に負けた相手に勝つために、自分の意思で県外の強豪校に進学したんですけど、私もそんなかっこいい姉のようになりたい、負けたまま終わる人間にはなりたくないって、当たり前のように思っていました。

それで私も県外の強豪校、大学に進学して、姉と一緒に世界で勝つことを目指してレスリングに打ち込んでいったんです。


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10ページのロング対談で、競技に懸ける思い、恩師とのエピソード、
そしていつまでも成長し続ける人の条件を
存分に語り合っていただきました。

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(本記事は月刊『致知』2021年6月号 特集「汝の足下を掘れ そこに泉湧く」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇伊調馨(いちょう・かおり)
昭和59年青森県生まれ。兄と姉の影響で幼少期よりレスリングを始める。愛知県の中京女子大学附属高校(現・至学館高等学校)、中京女子大学(現・至学館大学)を経て、ALSOKに所属。世界選手権10度優勝。平成16年アテネ、20年北京、24年ロンドン、28年リオデジャネイロオリンピックで女子個人としては前人未到の4大会連続金メダルを獲得。同年国民栄誉賞受賞。

◇小平奈緒(こだいら・なお)
昭和61年長野県生まれ。幼少期よりスケートを始める。中学2年で500メートル中学記録を更新、高校時代のインターハイでは500メートル、1000メートルの2冠達成。平成17年信州大学教育学部に進学。卒業後の21年相澤病院(長野県松本市)に就職。22年バンクーバーオリンピックでは団体パシュートで銀メダル、30年平昌オリンピックでは1000メートルで銀メダル、500メートルで金メダルを獲得。

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