【オリンピアンの人間学】叱って育てる3つの極意|井村雅代コーチの指導術

アーティスティックスイミング日本代表ヘッドコーチとして、リオ五輪ではデュエット、団体ともに銅メダルをもたらした名伯楽・井村雅代さん。2012年のロンドン五輪でメダルを獲得できず、日本選手たちが自信を喪失していた中、その心をいかに入れ替え、勝利をつかんだのか。井村さんに〝一流〟を育てる叱り方をお話しいただきました。

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叱るコツは3つある

〈井村〉
叱る裏には責任があります。それはしっかり自覚しなければいけません。

私もできることなら褒めて勝たせたいですよ。でも残念ながら難しい。褒めたらその子は、これくらいでいいんだって思い込んでしまうんです。NGを出して、もっともっとってさらに上を求めるのは、その子の可能性を信じているからなんです。この子たち一人ひとりにものすごい可能性がある。私はそう信じているんですよ。

もちろん、たまには褒めたいって思うこともありますよ。それでリオ五輪の時、決勝前の練習でちょっと褒めたらデレデレ緩んできたんです。これはあかん! と思ってまた叱りましたけど、最後までそんなことを繰り返していましたね。

やっぱり人というのは、追い込まれて追い込まれて、もっともっとって求められるところから、本当の力って出るんじゃないでしょうかね。

叱るコツは3つあると私は考えます。

1つは現行犯で叱ること。

2つ目が直す方法を教えること。

3つ目がそれでOKかNGかをハッキリ伝えることです。

そこまでやらないなら叱ってはダメ。それは無責任です。

伸びる人材に共通するものとは?

〈井村〉
人の言葉を信じてくれること。やっぱり心にシャッターを下ろす子はダメです。

人の話を聞く時は、耳で聞き、頭で聞き、心で聞かないとダメなんですね。耳で聞いてても心のシャッターを下ろしてる子はあかん。選手にはハッキリ言うんです。「あなたはいま心のシャッターを下ろしてるから、もう言うのをやめる」って。いくら言っても入りませんから。

それはその年になるまでの教育環境にも大きく左右されますね。人間は信じるに値するという考えのもとに育てられたかどうかです。

もう一つ大事なのが「心の才能」です。

自分で限界を決めないこと。できないことにぶつかった時に心の才能のある子は、もうムリだと考えるんじゃなくて、「あぁ私の努力が足りなかったんだ。だったらもっと努力しよう」と素直に思って、一ミリでも自分を高めようとする。別の言い方をすれば、しつこいんです。

この頃、とみに思うのは諦めるのはいつでもできるということ。だから諦めたらあかん、諦めたらもう終わりだって。でも、そこで頑張り続けたらそれが当たり前になる。当たり前になったらまた前にいくんです。だから自分で限界を決めたらダメ。自分の可能性を信じなさい。思わぬ可能性が自分には秘められているんだよって。

ですから、心の才能があって、心のシャッターを開けていたら、人って変われますよ。そして、そういう自分を助けてくれる人は世の中にいっぱいいるんです。


(本記事は『生き方入門』〈致知出版社〉より一部を抜粋・編集したものです)


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◆井村雅代(いむら・まさよ)
大阪府生まれ。中学時代よりシンクロナイズドスイミングを始める。選手時代は日本選手権で2度優勝し、ミュンヘン五輪の公開演技に出場。天理大学卒業後、大阪市内で教諭を務める傍ら、シンクロの指導にも従事。昭和53年日本代表コーチに就任。平成18年より中国、イギリスの指導を経て、26年日本代表ヘッドコーチに復帰。リオ五輪ではデュエット、団体とも銅メダルを獲得。五輪でのメダル獲得数は通算13個となる。

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