愛こそが世代をまたぐ永遠なるもの、生きていく上での原点 小林 博(財団法人札幌がんセミナー相談役)

北海道大学名誉教授で、公益財団法人札幌がんセミナー相談役の小林博さんは、98歳のいまも札幌市にある同財団事務所に、ほぼ毎日通い続けている。研究の傍ら、がん患者や家族の相談に耳を傾けてきた半生を振り返っていただいた。

誰もが必ず老い、やがて死を迎えます。
そのために健康なときから「与命(余命)は30日しかない」と常に自分に厳しく言い聞かせてきました

小林 博
財団法人札幌がんセミナー相談役

──小林先生は98歳になられるいまも、公益財団法人札幌がんセミナーの相談役として活躍されていますね。

<小林> 
事務所にほぼ毎日来ております。〝ほぼ〟というのは、家内が車椅子生活になったものですから、介護に相当の時間を取られるようになり、以前のように毎日足を運ぶことが難しくなったんです。介護を始めて1年弱になりますが、これは私にとって生活の大きな変化でしたね。

少し話は飛びますが、健康長寿は「教養」と「教育」によって成り立っているという話を聞いたことがありますか。

──いいえ。

<小林> 
私流の言い方をしますと、自分が立ち上げた札幌がんセミナーに「きょう用」があって「きょう行く」ところがある。これが健康長寿の秘訣だということです(笑)。

私たちの財団は1983年、北大に勤務していた時に設立しました。世界中の最新のがん研究の成果をお互いに虚心坦懐に話し合う財団が必要だと、私が国際会議の場で提唱したことがきっかけで誕生しました。結果的にそれがいま、私自身の生き甲斐にも繋がっているんです。

この財団では、がんの解決に向けて研究やシンポジウム、セミナーなどいろいろなことをやっています。札幌という字はついていますが、決してローカルなものではなく全国的、国際的な仕事を展開しています。

私はがんの基礎研究者でしたが、同じドクターとして患者さんのお役に立てることがないことを悩んでいました。そこで患者さんやご家族の相談に乗ることを始めて、これまでに1000名近い方々の声に耳を傾けてきました。

私が高齢ということもあり、「小林先生ってまだ生きているんですか」と誰かが話していたと(笑)。それだけ曖昧な存在になってしまったことも確かでしょうけど、がん相談はいまもできる限りやっています。患者さんやご家族のお役に立てることはありがたいことですね。勿論、ボランティアです。……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
◇健康長寿は教養と教育で成り立つ
◇「がんの異物化」の研究で注目を集める
◇がんと闘う時代から共存する時代へ
◇「与命は30日しかない」

本記事ではがん研究一筋の小林さんに、90歳を越えても生き生き溌剌として生きる秘訣、本当の幸せのあり方について実感を込めて語っていただきます。

プロフィール

小林 博

こばやし・ひろし――昭和2年札幌生まれ。27年北海道大学医学部卒業。市立札幌病院で1年間インターンの後、北大で病理学専攻。米国国立癌研究所で3年間研究し、帰国後助教授、41年より教授(医学部癌研施設病理部門)。58年財団法人札幌がんセミナーを設立し理事長に。令和2年から相談役。北大名誉教授。札幌に本社を構える玄米酵素の学術顧問なども務める。


編集後記

取材は札幌と東京をZOOMで繋いで行われました。98歳とは思えない流暢な語り口と、ユーモア精神に圧倒された1時間でした。ZOOMの画面越しでも伝わってくる小林さんのバイタリティに触れ、自分も最後までかくありたいと思った取材でした。小林さんが語る健康長寿の秘訣をぜひご覧ください。

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