9 月号ピックアップ記事 /エッセイ
長嶋茂雄 その努力と挑戦の人生 小俣 進(元読売巨人軍長嶋茂雄監督専属広報)

「ミスタージャイアンツ」「ミスタープロ野球」と国民に親しまれた長嶋茂雄・元読売巨人軍監督が亡くなった。巨人軍の投手、後に専属広報として約半世紀、長嶋氏と行動を共にしてきた小俣進氏は「監督はまさに努力、挑戦の人だった」と振り返る。小俣氏が間近に接してきた長嶋氏はどういう人物だったのか。貴重な逸話を交えながら語っていただいた。
【左写真=遠征先からの移動日、空港にて。右が小俣氏】

長嶋監督について世間の人たちは「感性の人」「天才」などの言葉で表現しますが、私に言わせれば間違いなく努力、挑戦の人です
小俣 進
元読売巨人軍長嶋茂雄監督専属広報
約半世紀、巨人軍の投手や専属広報として歩みを共にしてきた長嶋茂雄監督(以下、監督)が、89歳の天寿を全うしたのは6月3日のことでした。
その日以降、多くのメディアの取材を受け、忙しくしてきた私ですが、ふと一人になる時、喪失感というのか、心にポッカリと穴が空いたような感覚を抱きます。いまもまだ監督がどこかにいるのではないか。そんな気持ちで毎日を過ごしています。
臨終の報せを受けてご自宅に駆けつけた時、そのお顔はまるで昼寝をしているのではないかと思うほど穏やかでした。血圧が少しずつ低下していく中で、約60年間、監督専属の運転手を務められた方の手をがっちりと握り、その方もあまりの握力の強さに驚いたほどでした。
その後、ニューヨークの松井秀喜さん(ニューヨーク・ヤンキースGM特別アドバイザー)から国際電話がかかってきて短い会話を交わし、静かに息を引き取られたそうです。
監督は最晩年まで、自分にはまだまだやり残したことがあるという気持ちをずっと抱いていました。その一つが野球を通して子供たちの夢を育むことでした。
監督は2004年のアテネオリンピックで日本代表の監督を務める予定でした。しかし、脳梗塞で倒れてその思いを叶えることはできませんでした。帰国した選手たちに向かって「君たちはとてもいい経験をした。
これからは野球の素晴らしさをぜひ子供たちに伝えてほしい」と呼びかけていましたが、きっとそんな思いを亡くなる前に松井さんにも伝えたかったのだと思います。……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全4ページ~
◇長嶋監督がやり残したこと
◇「逃げるな、しっかり勝負して打たれろ」
◇取材には真剣に応じる
◇闘病時の驚くべき執念
◇常に挑戦のオーラを放っていた
プロフィール
小俣 進
おまた・すすむ――昭和26年神奈川県生まれ。藤沢商業高校卒業後、日本コロムビア・大昭和製紙富士を経て、48年ドラフト5位で広島に入団。50年交換トレードで巨人に移籍。左の中継ぎとして1軍に定着する。ロッテ移籍後プロ初完投・初完封を達成した。59年日本ハムに移籍するも、1軍で登板することなく現役を引退。その後、巨人の打撃投手、長嶋茂雄監督専属広報、スカウト、終身名誉監督付き総務部主任などを歴任。平成24年からはセガサミー野球部のアドバイザーを務める。
編集後記
「監督は天才ではなく、間違いなく努力・挑戦の人です」。こう語るのは、長嶋茂雄さんの専属広報を務めるなど約半世紀にわたり公私共に親交があった小俣進さん。選手時代、監督時代、そして脳梗塞後の闘病生活。いかなる時も挑戦心を忘れなかった長嶋さんのお人柄が偲ばれます。

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