努力前進——〝神の手〟を持つ男・ 福島孝徳医師に学んだこと 根本暁央(森山脳神経センター病院副病院長)

困難を極める脳外科手術において、患者の負担を極限まで抑える「鍵穴手術」を編み出し、世界中で活躍した〝神の手を持つ男〟福島孝徳医師。生前、日本で衣鉢を継ぐ愛弟子を数多く育てたが、その筆頭に挙げられるのが森山脳神経センター病院(東京都)の根本暁央医師だ。〝神〟と仰がれる領域にまで達した師にいかに食らいつき、自らを高めてきたのか。

怖くてもちょっとずつ、ちょっとずつ努力を積み重ねればやれる。

逆に言えば、こうすればできるという確信がないと挑戦はできない。挑戦するには積み重ねが絶対に必要です

根本暁央
森山脳神経センター病院副病院長

――本日は、朝からの外来を終えられてお疲れのところ、ありがとうございます。

〈根本〉
いえいえ。いま、僕はここ森山脳神経センター病院だけで、月曜と土曜の午前中に外来を受けつけています。水・木・金は隣の森山記念病院でずっと手術です。

先週の外来では、一般の患者さん以外で、手術を求めてこられる方を60人は診ましたね。経過を見て薬をお出しする患者さんより、そうした手術の相談で遠くからお見えになる新患の方が多いんですよ。

難しい病気をお持ちで、手術をするかどうか悩まれながら、この医者は信用できるのか、人となりを見極めに来る方もいます。

――皆さん、縋(すが)るような思いで来院されるのですね。

〈根本〉
そういう方に軽々しく「次また来てください」とは言えないですよ。だから朝9時に始めて、夕方6時までぶっ続けで診ることも多いです。ここに来て13年になりますが、昼ご飯を食べたことはないですね。

といっても、全員に型通りの説明をしていたら時間が足りません。薬だけ必要な患者さんを、処方箋のためにずっと待たせるなんて時間を奪うだけです。どうするかというと、
 ・
 ・
 ・
本記事の内容 ~全4ページ~
◇〝神の手〟は時間の使い方の達人
◇師の名にかけて合併症は出さない
◇コツコツと「臨床力」を磨く
◇ゴルフコースの片隅で
◇敬意を持ったささやかな復讐
◇努力前進――師を〝超える〟道

プロフィール

根本暁央

ねもと・あきお――医学博士。昭和41年千葉県生まれ。平成4年東邦大学医学部卒業。東邦大学附属大森病院脳神経外科研修医、助教授を経て、福島孝徳医師の導きにより17年米国ノースカロライナ頭蓋底手術センター研究員、デューク大学脳神経外科研究員。19年福島孝徳記念病院脳神経外科部長。24年森山記念病院脳神経外科頭蓋底外科部長、福島孝徳脳神経センター長。27年森山脳神経センター病院副病院長。


編集後記

2024年3月、惜しまれつつ81歳でこの世を去った福島孝徳ドクター。その生涯は最期まで、自身がモットーとしていた「すべては患者さんのために」を体現するものでした。
そんな福島医師の〝一番弟子〟と呼ばれているのが脳神経外科医の根本暁央ドクターです。師に憧れ、齢40にして大学での出世を投げ捨て渡米。多くの患者さんを救った福島ドクターの「鍵穴手術」の免許皆伝を受けたエピソードなども多数紹介され、迫力と学びに溢れた取材でした。

バックナンバーについて

致知バックナンバー

バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます

過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。

定期購読のお申込み

『致知』は書店ではお求めになれません。

電話でのお申込み

03-3796-2111 (代表)

受付時間 : 9:00~17:30(平日)

お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード

FAXでのお申込み

03-3796-2108

お支払い方法 : 振込用紙払い

閉じる