2026年08月03日
栃木県内に商圏を絞り、「地域一番化戦略」で圧倒的シェアを誇るサトーカメラ。同社副社長の佐藤勝人さんはビジネス書作家として12作目を出し、商業経営コンサルタント、Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」と情報発信を含め、全国各地の商工会議所で講演やセミナー、さらに企業や商店の現場へ出向いて個別支援をし、経営者育成塾「勝人塾」も主宰されています。
本連載ではそんな佐藤さんに、現代ビジネスマンから寄せられた悩みや胸の内の葛藤、さらには社会情勢までも「勝人節」でズバッと答えていただきます。
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人生とは、自分の命を生きることではなく、志を未来へ手渡していくこと
私は61年生きてきて、人生にはいくつもの節目がありました。親となり、経営者となり、コンサルタントとなり、大学で教壇に立ち、「先生」と呼ばれるようにもなりました。
その時々で背負う役割は変わり、その役割に応じて責任も覚悟も大きくなっていきました。しかし、この歳になって初めて、新しい肩書を授かりました。それは「グランパ」です。
先日、双子の男の子という初孫が誕生しました。命が生まれるという出来事は、何度経験しても不思議なものです。しかし、親になった時と、祖父になった時では、心の動きが全く違うことに気づきました。
子供が生まれた時、私は「この子をどう育てようか」と考えていました。親として、どんな教育をし、どんな人生を歩ませるのか。目の前にいるわが子の未来だけを見つめていたのです。ところが、孫が生まれた瞬間、私の頭に浮かんだのは、全く別の問いでした。
「この子たちの未来へ、私たちは何を遺せるだろうか」
育てることではありません。遺すことでした。その瞬間、自分の人生の時計の針が、一世代先へ進んだことを感じました。
人は年齢を重ねるから大人になるのではありません。守るものが変わった時、人は新しい人生を歩き始めるのだと思います。だからいま、私が取り組んでいる会社の経営改革も、新しい事業への挑戦も、すべて意味が変わりました。
以前は会社を成長させるためでした。社員を守るためでした。もちろん、それはいまでも変わりません。しかし、その先にあるものが見えるようになったのです。会社を守ることが目的ではありません。会社という器を通して、次の世代へ価値をつないでいくことこそ、本当の目的なのです。
私は長年、「想い出を未来へつなぐ」という仕事を続けてきました。写真は、過去を残すためのものだと思われがちです。しかし、本当は違います。写真は未来の誰かが見て、家族の歴史を知り、人を思い出し、愛情を受け継ぐために存在しています。
つまり、写真とは未来へ渡す手紙なのです。それならば、経営もまた未来へ渡す手紙なのではないでしょうか。利益も店舗も商品も、やがて姿を変えていきます。
しかし、人を育てること、理念を残すこと、地域に必要とされる企業であり続けること、その価値だけは時代が変わっても受け継がれていきます。
最近の私は、「未来」という言葉に、以前より温度を感じるようになりました。これまでも未来という言葉は使ってきました。しかし、それは経営者として描く未来でした。
いまは違います。二人の孫の寝顔を見ながら思う未来です。この子たちが大人になった時、私はもうこの世にいないかもしれません。だからこそ、「あの時、おじいちゃんたちが頑張ってくれたからいまがある」と思ってもらえるような仕事や人を遺したい。そんな思いが、自然と湧いてくるのです。
もちろん、孫ができたからといって、急に優しいおじいちゃんになるつもりはありません。相変わらず現場を歩き、市場を見て、人と向き合い、新しい挑戦を続けるでしょう。挑戦することが私の生き方だからです。
けれど、その挑戦には、以前とは少し違う意味が宿りました。自分のためでも、会社のためだけでもない。まだ見ぬ未来を生きる子供たちのために挑戦する。そう考えられるようになったことが、祖父になった私に与えられた、何より大きな贈り物でした。
人はいつか、自分の人生を生きる時代を終えます。その時に始まるのが、未来を生きる誰かのために生きる人生なのだと思います。
双子の孫たちは、まだ何も語りません。しかし、その小さな寝顔は、61年生きてきた私に、「人生とは、自分の命を生きることではなく、志を未来へ手渡していくこと」だと教えてくれました。この小さな2つの命との出会いに、心から「ありがとう」を伝えたいと思います。
◇佐藤勝人(さとう・かつひと)
サトーカメラ代表取締役副社長。日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント。想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント。作新学院大学客員教授。宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師。商業経営者育成「勝人塾」塾長。(公式サイト)
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に『地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法』(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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