人はなぜ生まれてくるのか——胎内記憶研究の第一人者・池川明氏が語る生きる意味

生まれる前の記憶を語る子供たちがいる――医療現場でその「胎内記憶」に数多く接し、研究を続けてきた池川明さん。胎内記憶が私たちの教えてくれることはなにか。池川さんのお話には、離婚や子供の虐待が絶えない現代社会において、人間がよりよく生きていくヒントが鏤められています。※対談のお相手は、筑波大学名誉教授の故・村上和雄さんです。

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胎内記憶が教えてくれること

<池川> 

中間生の記憶を持つ人の中には、ごく稀にですが、自分が精子だった時の記憶を持つ人もいます。ある30代の男性は、「僕はたくさんの仲間と競ってゴールに着きました。みんなの分まで頑張って生きなければ」と語っています。

精子ばかりでなく卵子も、200くらいの中から一つが出てくるし、受精卵も5分の1しか子宮に辿り着けません。また、魂が一つの精子に宿るまでには、選抜試験を受け、相当順番待ちをしなければならないようです。そういうことを考えたら、私たちは自分の命を本当に大切にして、一所懸命に生きなければならないんですね。

<村上> 

それだけではなく、38億年の間、一度も途切れずに連綿と繋がってきた生命の歴史という視点を加えると、さらに命の重みというものが増してきます。

最近、出生前診断というのが可能になって、遺伝子になんらかの問題のある命は事前に排除することもできる時代になりつつあるんですが、生まれてこようとする命にストップをかける権利は人間にはない、と僕は思うんです。

大人の常識からすれば、その命が生まれても幸せではないと思うかも知れませんが、それはいまの基準で決めているだけで、絶対ということはあり得ない。それからこれは第三者が言及することではないかも知れませんが、障碍者の方やそういう子を授かったご家族が、苦しみを乗り越えて多くの気づきや学びを得たり、幸せを見出されたという話はよく聞きます。

<池川> 

とても大事な視点ですね。

たくさんの胎内記憶に触れていると、辛いことの多いこの世に子供たちがわざわざ生まれてくるのは、たぶんこれから生きていくことを楽しみにしてくるんだと思うんです。これからどういう人生を選ぶか、ディズニーランドに行く時みたいにわくわくしてやってくるらしいです。

ディズニーランドの乗り物みたいに、人生も一度に一つしか選べないし、一度動き始めたら引き返せません。そしてほとんどの人が、自分の実力と同じか、少し荷の重い人生を選ぶようです。決して自分にこなせない人生は選んでこないんですね。

そう考えると、障碍や困難に見舞われている子は、凄いチャレンジャーなのかもしれませんし、それだけ魂も輝いているんじゃないかとも思うんです。

<村上> 

そうなのかもしれませんね。

<池川> 

私が妊産婦の指導で最も重視しているのは、赤ちゃんとのコミュニケーションです。すべての赤ちゃんに意図や意思があり、感じる力もあることを理解して向き合うべきで、親が一方的にいい、悪いを決めるべきではありません。愛情を持って真摯に耳を傾ければ、胎児は必ずなんらかのサインを送ってくれるんです。

<村上> 

先日、ダライ・ラマ法王をお招きしてシンポジウムを開いた時に、「花に心はあるか」という議論が持ち上がりました。仏教も環境に応じて変化し、花に心があるとするのは日本の仏教だけのようです。

日本という国は2000年にもわたってそうした独自の精神文化を育みつつ、科学技術でも優れた業績をあげ、経済大国にもなった稀有な国です。我われはあまり自覚していませんが、日本に対する世界の評価は我われが考える以上に高いし、ダライ・ラマ法王も「21世紀は日本の世紀です」と期待を込めておっしゃっています。

日本はあの大震災で大きな打撃を受けましたが、ここから再び立ち上がるためには大きな意識革命が必要です。それはただ日本のためだけではなく、世界の平和にも繋がるものである必要があります。

★本記事は『致知』2013年4月号「渾身満力」掲載記事の一部を抜粋・編集したものです。

◇池川明(いけがわ・あきら)

昭和29年東京都生まれ。帝京大学医学部大学院修了。上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、池川クリニックを開設。胎内記憶研究の第一人者として知られ、母と子の立場に立ったお産と医療を目指している。著書に『子どもは親を選んで生まれてくる』(日本教文社)『胎内記憶』(角川SSC新書)など。

◇村上和雄(むらかみ・かずお)

昭和11年奈良県生まれ。38年京都大学大学院博士課程修了。53年筑波大学教授。遺伝子工学で世界をリードする第一人者。平成11年より現職。著書に『スイッチ・オンの生き方』『人を幸せにする魂と遺伝子の法則』、共著に『運命をひらく小さな習慣』(いずれも致知出版社)など。近著に『科学者の責任』(PHP研究所)がある。

◎筑波大学名誉教授 村上和雄さん 『致知』推薦の言葉◎ 

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