筆相と運命の関係 ~吉田松陰からタモリまで~(前編)

思わず話したくなる話

昔から「書は人なり」と言われ、人物の実像はその人の各文字にはっきり表れるとされてきました。40年近く筆相の研究に取り組んできた森岡恒舟さんに、歴史上の人物から、現代を生きる著名人の事例を交え、筆相と運命の関係について伺いました。

文字は人なり

(森岡)

人間の行動には、長年の間に染みついたその人の癖が表れているものです。そして同じことがその人の筆跡にもいえるのです。

たとえば「口」という漢字の書き方を例に見てみましょう。

第1画の縦線と第2画の横線、つまり文字の左上は、学校ではくっつけて書くように教わります。しかし多くの人は、成長するにつれて書き方にも柔軟性が出てきて、そこが少しずつ離れてくるものです。

ここはその人の社会に対する窓を象徴しており、外に対して窓が開いている人は人間関係やお金の流れも比較的活発な場合が多いのです。

逆にここをくっつけて書く人は、あまり世間ずれしておらず、少々融通の利かないところがあります。社会に対する窓が閉じているわけですから、人との交流やお金の入り具合もあまり活発でない傾向があります。

 また、下の角が開いている人は、少々自分に甘いところがあります。文字を最後まできっちりと書くことは、それなりに神経を使うもので、そこが離れているということは、最後まで集中力が続かない傾向があり、いい加減さ、無責任な性質の表れともいえるのです。

以前、テレビ番組でご一緒したタレントのタモリさんに「田」という字を書いていただいたところ、左上をかなり開けて書いていました。

芸能界の第一線で活躍されているだけあって、金銭面も含め社会との交流がとても活発な様子が表れていました。同時に左下も開いており、入ってきたお金も気前よく出て行ってしまうこと。しかし上の横線と真ん中の縦線に隙間があり、しかも真ん中の下と右下は閉じていました。

 そこで、「あなたは気前よく使うけれども、ケチと思っている人もいるんじゃないですか。半分はガッポリ貯めているようですよ」と指摘するとスタジオは大爆笑、大拍手となりました。

(元)総理の菅直人氏は、「人」という字の最後をかなり力を入れて書いています。これは粘り強さの表れですが、最近は以前にも増してこの傾向が強くなっています。あれだけバッシングを受ければ普通はとっくに辞めているはずなのに、いまだに総理の座に居座り続けているのもうなずけます。

このように、その人の深層心理は、その人の書く字に表れ、その人の字を見れば、その人の深層心理が分かります。そして、その人の字を書く時の習慣、つまり深層心理の習慣は、他の行動にも顔をのぞかせるのです。

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先人たちの筆相が物語ること

吉田松陰の筆跡には非常に行動力が感じられます。そして右上がりの度合いが強いところから、保守的で柔軟性に欠けるところがあり、妥協を嫌います。

 そうした深層心理が、黒船に乗り込もうというような思い切った行動や、己の信念を貫き、最後は斬首されるという結末を暗示しています。かつて学生運動が盛んな頃、大学の構内に掲示されていた看板に、松陰に似た筆跡がよく見受けられたものです。

東郷平八郎の筆跡は、偏と旁がグッと密着しています。これは包容力があって多くの人を束ねるトップリーダーというより、人の意見に左右されず、自分の信念を貫くタイプです。

中国では偏と旁の間を気宇、心の広さを表す空間と捉え、なるべく間隔を広くとって書くのがよいとされています。

「経営の神様」と謳われ、経営者に限らず様々な人にいまもなお多大な影響を与え続ける松下幸之助。

その筆跡は、小ぢんまりとまとめずにグッと大きく広げて書くのが特徴で、心の内からほとばしり出るものが伝わってきます。これは豊臣秀吉の書き方によく似ており私は太閤相と呼んでいます。

また「助」という字の最終画が点になっていることから、普通の人が考えつかないことを考え出すアイデアマンであったことが窺えます。

さらに、縦線の上部への突き出しはそれほど際立っておらず、包容力豊かなリーダーというより信念を持った技術者タイプです。実際、細かいことに非常に厳しい人だったという話も聞いていますが、それでも多くの人がついていったのは、やはり太閤相にも表れているような人間的魅力があったからでしょう。

☆後編「筆相を変え、運命を高める秘訣」は2018年6月5日の午後12時に公開!ぜひご覧ください。

(本記事は『致知』2011年9月号特集「生気湧出」より一部抜粋したものです)

森岡恒舟(もりおか・こうしゅう)

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昭和8年香川県生まれ。34年東京大学文学部心理学科卒業。会社勤務を経て、50年書道学院設立。55年頃より筆跡学研究に没頭。60年警視庁嘱託筆跡鑑定人。平成4年より筆跡診断士育成活動を推進。現在、相藝会書道教育学院学院長、相藝会筆跡鑑定研究所所長を兼務。著書に『ホントの性格が筆跡でわかる』(旬報社)、『第三の発見 筆跡の科学』(相藝会)などがある。

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