農業を「家業」から「産業」へ——日本農業再生への道筋(大潟村あきたこまち生産者協会会長・涌井 徹)

農業を生業にする基幹的農業従事者の減少や、耕作面積の縮小、また減反政策など、様々な面で日本農業は深刻な影響を受けています。その中で、日本農業の再生と、「若者が夢と希望を持てる農業の創造」に人生を懸けているのが、大潟村あきたこまち生産者協会会長の涌井徹氏です。涌井氏が語る、農家が生き残るために忘れてはいけないこととは。

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農家が生き残るために忘れてはいけないこと

<涌井>
現在、米の生産量が下降線を辿る一方、小麦の輸入量が増えています。国民一人当たりの一日の摂取カロリーのうち、国産品が占める比率を割り出すと、実質自給率は18%だと説く専門家もいます。このままでは世界で最も自給率の低い国へまっしぐらです。

大潟村は長い闘いにより、一戸当たり15ヘクタールの広い農地に自由に稲を植え、自由に米を売ることができるようになりましたが、ここまで来るには多くの犠牲を払いました。

減反政策が続いた55年という長い歳月は、農家の二代に相当します。農家には減反に見合う設備しかないため、隣の農家がやめるからとむやみに農地を買い足せば借金が増えるだけです。

減反政策は、農家が米を増産することができなくなったばかりでなく、農家の心から生産意欲も失わせることになりました。

この時代に、若者が夢と希望を持って参入できる農業を創るということは、とても難しいことですが、それはいま、我われが解決しなければならない命題です。

私たちは農業をこれまでの「家業」から「産業」へ、進化させるべき時に来ています。

そのための大事な考え方の一つは、自分の土俵を創ることです。

当社では消費者の生活の多様化を捉え、いち早く無洗米や発芽玄米(栄養機能性食品)、日本で全く知られていなかった米粉食品、非常食等の開発に乗り出し、販売してきました。

2021年には村内の農業生産法人と秋田県初の「パックごはん」事業を始めました。市場は大手企業の寡か占せん状態でしたが、全国の量販店に飛び込み営業したことが功を奏しました。全国の量販店がパックごはんの売り先になり、国内はもとより海外への輸出にも取り組んでおります。

減反政策の根本的な問題は、国内の消費を前提にしていたことです。海外に目をやれば人口が劇的に増え、食料が足りていない国がたくさんあります。私は日本農業の未来に、無限のチャンスを感じています。


(本記事は月刊『致知』2025年2月号 特集「2050年の日本を考える」より一部を抜粋・編集したものです)

↓ 記事内容はこちら!
◆米不足で露呈した日本農業の脆弱さ
◆減反政策に抗って打ち立てたモデル
◆農家が生き残るために忘れてはいけないこと
◆農業はいま、第二の〝産業革命〟の中にある


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◇涌井徹(わくい・とおる)
昭和23年新潟県生まれ。農業専門学校を卒業後、45年21歳で秋田県大潟村に入植。62年大潟村あきたこまち生産者協会設立。同社を〝新農業政策のモデルケース〟と呼ばれる有力企業に育て上げる。令和3年パックごはんの販売を開始。近著に『大地を起こし、農を興す』(秋田魁新報社)がある。

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