人は生きている限り成長できる——がんになった緩和ケア医が心に刻んでいる言葉|関本剛

緩和ケア医として、これまで1000人以上もの患者を看取ってきた関本クリニック院長の関本剛さん。関本さんは2年前に自身の体もがんに侵されている事実を突きつけられました。重篤な病を抱えつつ、いまなお現場で患者さんに向き合い続ける関本さんが心の支えにしてきた言葉とは――。

◉誰の人生にも、よい時と苦しい時があり、その時々で心に響く言葉は違う。仕事にも人生にも、真剣に取り組む人たちの糧になる言葉を――月刊『致知』のエッセンスを毎日のメルマガに凝縮! 登録特典〝人間力を高める三つの秘伝〟も進呈しております。「人間力メルマガ」こちら

「人は生きてきたように死んでいく」

〈関本〉
これまで1000人以上の患者さんをお看取りしてきて実感するのは、死はこの世に生まれ落ちたからには、万人に平等に必ずやってくるということです。

自分の死期が近づいていることを知ると、たとえ高名な僧侶でも取り乱すことがあるという例え話を聞いたことがありますが、自分はどうだろうとは常々考えてきました。

私は学生の時に洗礼を受けてカトリックの信者になりましたが、死生観は日本の昔からの考え方に近いと思います。あの世では、先に亡くなった大好きな親族や先輩、友人が待ってくれていて、死んだら一緒に大宴会ができると考えており、死ぬことそのものにはそれほど恐怖感を抱いていません。

それよりも、死が近づいた時に自分がどうなるかということが私は気になります。終末期に入ると、それまでできていたことが急速にできなくなってくる時期が必ず訪れます。自分がその時どれだけ冷静でいられるか、心穏やかでいられるか、そこが勝負だと私は思っています。

適切な緩和ケアが行われれば、身体的な苦痛に悩まされることはそれほどありませんが、体のだるさは次第に強くなってくるように思われます。

私は決して安楽死を望みませんが、この体の辛さから逃れて早く向こうの世界へ行きたいという気持ちになることがあるかもしれません。その気持ちを乗り越えて、愛する妻や子供たちには、自分が最後までしっかり生き抜く姿を見せたい。それができるか否かは、これからの修行次第だと自分に言い聞かせているのです。

そんな私の支えになっているのが、日本のホスピス、緩和ケア分野の草分けである淀川キリスト教病院理事長・柏木哲夫先生の、

「人は生きてきたように死んでいく」

という言葉です。日頃から不平不満ばかり言ってきた人は、不平不満を言って死んでいく。感謝の言葉を繰り返してきた人は、最期も感謝の言葉を胸に旅立っていく。私自身も、日頃から周りの人々に感謝の気持ちを率直に示していける人間でありたいと強く思います。

上智大学のアルフォンス・デーケン教授の言葉にも、大変勇気をいただきました。

「人は生きている限り成長できる。死ぬその瞬間まで精神的に成長し続けることができる」

ドイツでは、人間の死を「シュテルベン」、人間以外の死を「フェアエンデン」と使い分け、最後まで成長し続ける姿勢を崩さないことこそがシュテルベン、すなわち人間にだけ与えられた生を全うすることであると教えられました。

がんになったからといって、自暴自棄になるのはもったいない。私がそう考え、いまでも仕事を通じて多くの患者さんと向き合い続けているのは、この二つの言葉を心に刻んでいるからなのです。


(本記事は月刊『致知』2021年⑪月号 特集「努力にまさる天才なし」より一部を抜粋・編集したものです)

◉『致知』12月号には、自らもがんと闘いながら、患者さんの心に寄り添い、家族のために仕事に向き合い続ける関本剛さんがご登場。これまでの人生の歩み、がん告知の状況、そして人間の尊厳について語っていただいています。心の糧になる言葉が満載です。ぜひご覧ください。

◇関本剛(せきもと・ごう)
昭和51年兵庫県生まれ。関西医科大学卒業後、同大学附属病院、六甲病院緩和ケア内科勤務を経て、在宅ホスピス「関本クリニック」院長。緩和ケア医として1000人以上の看取りを経験する。平成31年ステージ4の肺がんと診断され、治療に取り組みながら医師としての仕事を続ける。著書に『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』(宝島社)。

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