2024年12月04日
高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、山縣有朋など、主宰する松下村塾にて、明治維新の原動力となる多くの志士を育てた幕末の英傑・吉田松陰。明治維新胎動の地・山口県萩市に鎮座する松陰神社名誉宮司の上田俊成氏と、吉田松陰の教育実践を生かした学習塾「松陰塾」を全国約300か所でFC展開するショウイングループ会長・田中正徳氏のお2人に、幕末・明治の先人たちを支えた松陰の言葉について語り合っていただきました。 ◎今年、仕事でも人生でも絶対に飛躍したいあなたへ――
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確かな志を立てるそこからすべては始まる
<田中>
私が心の糧にしてきた松陰先生の言葉といえば、よく知られている「松下陋村と雖も、誓って神国の幹たらん」です。いまは寂しい村にある塾だけれども、必ず日本を支える太い幹となってみせるという意味で、松陰先生が松下村塾の壁に留題した言葉です。
萩の地に交友館や樹々庵をつくり、これから高等学校に挑戦していくのも、まさに「松下陋村と雖も、誓って神国の幹たらん」の言葉のように、志高い方々を萩にどんどん集め、ここを中心に松陰先生の教えを全国に広め、世の中に立つ人物を一人でも多く育てていきたいという思いからなんです。
<上田>
松陰先生も、「道の精なると精ならざると、業の成ると成らざるとは、志の立つと立たざるとに在るのみ」と言っております。
藩校・明倫館の一人前の師範になろうと懸命に努力していた17歳の時の言葉ですが、並々ならぬ気迫を感じますね。やはり人の道を正しく立派に生きるかどうか、また自分の目指した学問や仕事が成功するかどうかは、まずしっかりとした志を立てることから始まるものであり、志があれば何事もできないことはないのです。
<田中>
もう一つ松陰先生の言葉で指針にしてきたのは、「机上の空論、書生の好むところ烈士の恥ずるところなり」です。
いくら先人の教えを学んでも、評論家のように議論ばかりしていては意味がありません。やるかやらないか、名誉宮司のように、教えは実践実行して初めて自分の経験になり、世の中にも貢献できるのだと思うのです。ですから、社員や松陰塾のオーナーにも積極的に自ら実践実行し、成功体験を積んで成長していってほしいと伝えています。
そして実行のためのぶれない縦軸を養ってくれるのが、先人や歴史に学ぶことであり、『致知』が探究する人間学だと思います。
<上田>
いまの実践実行の話に関係しますが、「儒生俗吏安んぞ事務(時務)を知らん、事務を知る者は俊傑に在り」という松陰先生の言葉があります。
時勢の情報を集め、その情報を的確に分析し、進むべき方向を迅速に定め実行できる者が優れた者であるという意味です。要するに理想ばかり追いかけてもだめで、地に足をつけていまやるべきことを着実に積み上げていくことがなければ、事は成就できないということですね。
<田中>
肝に銘じたい言葉です。
<上田>
それから、「人情は愚を貴ぶ。益々愚にして益々至れるなり」の言葉も多くのことを教えてくれます。
人情は自然なものであり、その純粋なものは、結局は人が踏み行うべき道理と一致するものである。つまり、人間の人情は正直で愚直なほどよい、学問や知識ばかりではなく、人情こそ大事に考えなければならない。そう松陰先生は言っているのです。
あと、「学は人たる所以を学ぶなり」の言葉に続く「国の最も大なりとする所のものは、華夷の弁なり」も、いまの日本人にとってとても重要だと思います。国にとって最も大切なことは、外国との違いを明確にし、我が国が我が国である所以を忘れないことである。松陰先生がおっしゃる我が国が我が国である所以とは、万世一系の皇室の存在だということです。
欧米列強の脅威が迫りくる中、この「華夷の弁」の考え方が基本にあったからこそ、幕末・明治の先人たちは明治維新、新しい日本の国づくりができたのです。
(本記事は月刊『致知』2024年12月号 特集「生き方のヒント」より一部を抜粋・編集したものです)
↓ 対談内容はこちら!
◆吉田松陰の志が結ぶ二人の縁
◆見えない力に導かれて
◆人は何のために学ぶのか
◆基礎学力を徹底し、自立学習の種を蒔く
◆子供たちの徳性を涵養する
◆囚人たちを一変させた獄中教育
◆人物を見抜き個性を伸ばす
◆松陰先生の教えを心の糧にして歩む
◆確かな志を立てるそこからすべては始まる
◆先人の言葉が教える人生を開く極意
◇上田俊成(うえだ・とししげ)
昭和16年山口県生まれ。國學院大學史学科卒業。飯山八幡宮宮司、山口県神社庁長、神社本庁理事、山口県文化連盟会長、長門市文化振興財団理事長を歴任。平成15年松陰神社宮司を経て、28年より名誉宮司・顧問に。著書に『零言集』(マシヤマ印刷)の他、『熱誠の人吉田松陰語録に学ぶ人間力を高める生き方』(致知出版社)などがある。
◇田中正徳(たなか・まさのり)
昭和31年福岡県生まれ。福岡大学建築学科卒業。「ショウイン式」創始者。松陰塾FC全国300校舎、生徒数9,000名を擁する大手塾へと成長させた。一般社団法人日本語力検定協会理事長。学校法人萩明倫館高等学校理事長。著書に『松下村塾のつくりかた』『AI時代の衝撃!「教えない学習塾」成功の秘密!!』(共に海鳥社)。令和6年紺綬褒章受章。