数千年の歴史の中で培われてきた日本人の力を自覚せよ!【櫻井よしこ×先崎彰容】

国際情勢が激動する中、日本は安全保障をはじめ、文字通り危機の最中にあります。この危機を日本はどう乗り越えて、活路を見出していけばよいのでしょうか。国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこさんと、日本大学危機管理学部教授の先崎彰容さんに語り合ったいただきました。

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危機感がなさすぎる日本

〈櫻井〉
国際社会に目を転じますと、アメリカと中国が激しく競り合う世界のパワーバランスの中で、日本がいかに活路を見出していくかが求められているわけです。特に中国の習近平政権は極めて強権的な姿勢を明確にしています。

国内では反対勢力の粛清を行い、対外的には台湾海峡に何十機という軍用機を飛ばしている。一方で経済政策は明らかに失敗の道を進んでいて、これはいずれ中国の根幹を揺るがすことになると思います。共産党政権が今後どうなるか分からない要素はたくさんありますが、短期的に見れば大変な脅威であることは事実です。

その時大切なのは、もちろん、安全保障面での整備を大前提とした上で、日本が聖徳太子の「十七条憲法」の時代から培ってきた価値観や力を結集して諸外国に対峙することだと私は思っています。そのためにも、これまでの発想を大きく変えて、日本には我われが思っている以上の力があることを自覚しなくてはいけない。

〈先崎〉
日本人が思っている以上の力を。

〈櫻井〉
ええ。分かりやすい例で言いますと、アメリカの軍事戦略の変更です。危機を予兆したらここまで変わり得るのかと驚くくらい変わるのがアメリカの素晴らしいところですが、その変化の一つの軸がいわゆる第一列島線における新たな戦略です。ここにアメリカはいま陸軍と海兵隊を集結させています。

そして、この第一列島線の島々がどこの国のものかといったら、すべて日本なんですね。我が国は地政学的にも大事な領土をすべて持っているわけです。自分たちがそれほど重要な立場にあるという自覚はとても大事ですね。

もう一つは、日本の軍が一体どういうものなのかということです。日本は軍国主義となってアメリカに無謀な戦争を挑んだという人がいますけれども、日本はもともとそんなに野蛮な国ではありません。戦争をする時は本気で戦うとしても、中国などに比べると国民性は非常に穏やかだし、戦国時代のような時でも無駄に民を殺すようなことはしませんでした。

そういう価値観は「十七条憲法」から「五箇条の御誓文」に至る千数百年の間、我が国の基本にあった価値観です。そういう歴史や教養を踏まえた上で、これからどのような自画像を描いていくかがとても重要だと思います。

〈先崎〉
しかし、そういう日本の伝統的国家像は戦後、大きく変わり、自由や民主主義が絶対視されるようになりました。僕は自著『国家の尊厳』で「自由と民主主義は耐用年数を迎えている」と書きました。日米の首脳同士で自由と民主主義を普遍的な価値観として確認するわけですが、そのことを否定するつもりは全くない。日本国内の人たちの意識を喚起したかったんです。

つまり、自由と民主主義ということだけを言っていれば国際社会で日本人がぬくぬくとしていられる時代は終わったんだと、ある種の覚醒を促したかったんです。

憲法の問題も同じですよ。「憲法にこう書かれているから」といって国際社会で通用する時代は終わりました。

〈櫻井〉
私も全く同感です。

〈先崎〉
進歩的文化人として知られる思想家の丸山眞男さんですら、『拳銃を……』という小論の中で、日本人はあまりにぬくぬくとしているから、誰かが拳銃を持ち歩いて「あの人が拳銃を持っているかもしれない」という緊張感の醸成が必要だと述べているくらいですから。

〈櫻井〉
丸山さんがそんなことをおっしゃっているのですね。それは興味深い。

〈先崎〉
僕は一昨年、アメリカに行って改めて驚いたのですが、シカゴの博物館の入り口に赤い罰点マークで「銃を持ち込むな」と書いてある。まるで日本の「煙草を吸わないでください」という感覚なんです(笑)。警察が来たからホッとするのではなく、銃撃戦になるのではないかと反対に心配になる。それがアメリカという国の実態です。

もちろん、ああいう国にしたいと言っているわけではありません。しかし、日本人はもっと対外的な危機を肌で感じ取って、それを踏まえた憲法論議をするようなマインドに変えていかなくてはいけない時期に来ていると思っています。

聞いたところによると、コロナが蔓延し始めた時、安倍さんはすべての閣僚が反対する中、首相として緊急事態宣言を決断されたそうですが、ぬくぬくとした土壌で育まれてきた戦後の日本のマインドを変える上で強烈なインパクトを与えたのではないでしょうか。


(本記事は月刊『致知』2021年12月号 特集「死中活あり」より一部を抜粋したものです)

この後も、国際情勢、危機管理に精通するお二人に、「戦後日本を支配してきた権力VS市民という発想」「最大の危機は日本人自身にある」「日本のリーダーが掲げるべき旗とは」など、日本が直面する難題課題への処方箋、日本が進むべき道を語り合っていただいています。櫻井さんと先崎さんの対談を掲載した月刊『致知』2021年12月号「死中活あり」の記事詳細はこちら

◇櫻井よしこ(さくらい・よしこ)
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスター等を経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年「国家基本問題研究所」を設立し、理事長に就任。23年日本再生に向けた精力的な言論活動が評価され、第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。著書多数。最新刊に『亡国の危機』(新潮社)がある。 

◇先崎彰容(せんざき・あきなか)
昭和50年東京都生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業。東北大学大学院博士課程を修了、フランス社会科学高等研究院に留学。現在、日本大学危機管理学部教授。専門は日本思想史。著書に『国家の尊厳』『未完の西郷隆盛』『違和感の正体』『バッシング論』(いずれも新潮社)『ナショナリズムの復権』(ちくま書房)など。

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