2024年10月18日
2024年4月で101歳になられた茶道裏千家前家元の千玄室さんと、五井平和財団会長として世界各国で講演活動を続ける西園寺昌美さん。両氏には歩んだ道こそ違え、大きな共通点があります。それは世界の平和を願い、その志のために人生を捧げてきたことです。それぞれの歩みを振り返りながら、いまだ紛争が絶えない現代、私たち一人ひとりは平和のために何ができるのかを語り合っていただきました。
目には見えない力に導かれて
〈千〉
きょうは久々に西園寺さんにお会いしましたが、あなたはお会いする度に何か不思議な使命を持っておられることを感じさせる方ですね。最初にお会いした時、まず思ったのもそのことでした。五井昌久先生が認められて「自分の後を頼む」と思いを託されたのが分かる気がします。五井先生の魂と西園寺さんの魂が一つになって世界の平和のために働いていることが私には分かるのです。
〈西園寺〉
分かってくださる方がいらして、とても嬉しく思います。私は五井先生から真実のみを教えられました。人間は皆、神様の分霊(わけみたま)であって平等で神聖な存在だ。社会的地位や財産など関係がなく皆それぞれに使命があり、生命の尊厳がある。その教えが私の魂にストンと入ってきて、私の人生を貫く信念となりました。
〈千〉
五井先生とはどういうご縁だったのですか。
〈西園寺〉
琉球王国というのは1879年になくなったのですが、父の代までは王朝というものを背負って生きていました。父は若い頃に沖縄から東京に移り住んで銀行勤めなどをしていました。戦時中、戦地に行った父に代わって母が家の中を切り盛りしていたのですが、僅かな食料しかない中で、お手伝いさんと子供3人の6人で生活していたので、それは大変でした。
母は自分がほとんど食事をせずに食事を皆に分け与えておりました。ふと気がつくと、やんちゃだと思っていた兄が、自分の食べる分を紙に包んでお手伝いさんにあげ、妹は母に分けているのです。そういう生活を通して人間は皆平等ということを強く感じるようになりました。
私は陽気な、何の屈託もない女の子として育ちましたけれども、18歳の時、父に連れられて沖縄に行く機会がありました。ひめゆり部隊の墓前でお参りをしようとしたら、突然失神して倒れてしまったのです。
沖縄の病院では原因が分からず、東京の慈恵医大病院で診みてもらったところ、脳腫瘍であと1か月くらいの寿命しかないと。私はその会話をドア越しに聞いていて、「そうか、脳腫瘍で死ぬのか。それなら思いっきり自分のことをしよう」と思いました。
〈千〉
大変な時期でしたね。
〈西園寺〉
その頃、五井先生と既にご縁をいただいておりまして、私をご覧になった先生は「これは琉球王国からの因縁で肉体の病気ではない。逃げ出さずに一歩を踏み出しなさい」と話されました。
この時、私はどっちみち死ぬのなら五井先生に命を預けようと決意したのです。父は土下座して手術を受けるよう説得してきましたが、私は頑としてそれを拒みました。自分の中にある力を信じたのです。
病のような状態は3年間続きました。3か月間は飲まず食わずの状態が続き、目は見えなくなり、口もきけなくなりました。肉体の感覚が薄れていく半面、自分の中の霊性が目覚めてきます。
少し神秘的な体験をお話しさせていただくと、20歳になったある時、病室の窓から眺めていた太陽が突然近づいてきて私の中に飛び込んできたのです。と同時に私の守護霊様、守護神様が姿を現し、こうおっしゃいました。「おまえの命は20歳で終わった。おまえに改めて使命を授ける。誰にも守護霊様、守護神様がついていて、守っていることを人々に伝えなさい」と。そこから少しずつでしたけれども病は快方に向かい、物が食べられるようになったのです。
〈千〉
奇跡的な出来事を体験されたのですね。
◎千玄室さん、西園寺昌美さんも、弊誌『致知』をご愛読いただいています。創刊46周年を祝しお寄せいただいた推薦コメントはこちら↓↓◎
月刊誌『致知』が創刊四十六周年の節目を迎えられ、愛読される方々が増えていることを心より嬉しく思っております。現代の日本人に何より必要なのはしっかりした人生哲学です。『致知』は教養として心を教える月刊誌であり、毎回「人間を学ぶ」ことの意義が説かれています。もっともっと多くの方がこの誌を通じて自らの使命を知り、日本人としての誇りを培っていただけたらと念じてやみません。
人間の徳性は誰にも内在するものですが、自分から学び養わなければ、自らの力となるまでには至りません。徳性を養う人間学の宝庫である『致知』は、いのちを持っていると感じます。読む人の心に確かに働きかけ、その人の徳性を育て引き出していきます。これは『致知』ならではの特質であり価値でしょう。
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◇千玄室(せん・げんしつ)
大正12年京都府生まれ。昭和21年同志社大学法学部卒業後、米・ハワイ大学で修学。39年千利休居士15代家元を継承。平成14年長男に家元を譲座し、千玄室大宗匠を名乗る。文学博士、哲学博士。主な役職に外務省参与、ユネスコ親善大使、日本・国連親善大使、公益財団法人日本国際連合協会会長。文化功労者顕彰・勲二等旭日重光章・文化勲章、レジオン・ドヌール勲章コマンドール(フランス)、大功労十字章(ドイツ)、独立勲章第一級(UAE)等を受章。京都市名誉市民。
◇西園寺昌美(さいおんじ・まさみ)
昭和16年東京生まれ。「世界平和の祈り」を提唱した宗教哲学者・五井昌久氏に師事、その後五井氏の後継者として白光真宏会会長に就任。五井平和財団会長、MPPOEI代表。ブダペストクラブ名誉会員。聖シュリ・ニャーネシュワラー世界平和賞(西園寺裕夫氏と共同受賞)、女性リーダーサミット・サークルアワード、バーバラ・フィールズ人道平和賞、ルクセンブルク平和賞、パキスタン大統領より「国際平和賞」、ユーロナレッジ・リーダーシップ平和賞を受賞。欧州の『OOOM』誌「世界で最も人々に影響を与えた100人」に数回選出。
◎各界一流プロフェッショナルの珠玉の体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。あなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。
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