【取材手記】92歳の現役看護師が説き明かす、運命をひらくヒント〈川嶋みどり〉

日本看護界の草分けとして知られ、92歳のいまなお講演活動や雑誌の刊行などを通じて、よりよい看護のあり方とは何かを追求し続けている日本赤十字看護大学名誉教授の川嶋みどりさん。月刊『致知』4月号特集「運命をひらくもの」のインタビューでご登場いただきました。戦時下に生まれ、様々な困難を乗り越えながら看護一筋に歩んできた川嶋さんのお話には、何歳になっても溌剌と生きる秘訣、自らの運命を力強くひらいていくヒントが詰まっています。今回はその取材秘話を担当編集者が綴ります。

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自称「生涯現役」――92歳の現役看護師

昨年12月半ばの寒風吹きすさぶ昼下がり。取材は川嶋さんのご自宅で行われました。

「どうぞ、いらっしゃいませ。散らかっていて申し訳ありませんが」。そう川嶋さんに案内され仕事部屋に赴くと、目の前には溢れんばかりの本や雑誌、資料。その景色からは、90代の坂に差しかかりながらも毎日仕事に真剣に向き合われる川嶋さんの姿がありありと目に浮かぶようでした。

日本赤十字看護大学名誉教授の川嶋みどりさんは10代の頃から看護師として現場に立ち続け、40歳以降は後進の育成にも着手。患者さんの心と体に寄り添ってケアをする重要性を説き続け、1984年には民間初の臨床看護学研究所を設立、これまで数え切れないほど多くの看護師を育ててきました。

そうした活動が認められ、2007年には赤十字国際委員会から功績を残した看護師に贈られる「フローレンス・ナイチンゲール記章」を受賞。看護の道一筋に70年歩み、〝日本のナイチンゲール〟とも称される看護界の重鎮です。

凛とした佇まい、ハキハキとした若々しい口調、眩しく光輝くような眼差し……とても92歳とは思えないバイタリティーに満ち溢れている。川嶋さんにお会いした印象は、まさにそのひと言に尽きます。いまなお講演活動で全国を飛び回っている川嶋さんだからこそ纏えるエネルギーの高まりを感じずにはいられませんでした。

川嶋さんが看護の現場で掴んだ身体と心の健康を保つ習慣・心構えについてはぜひ本誌をお読みいただきたいのですが、ここでは川嶋さんの人生信条が窺える金言をご紹介します。

齢を重ねてできなくなったことを数えるより、これならできるというものを見つける。「ピンピンコロリ」と死ぬことではなく、心や魂を磨き、最期の瞬間まで「ピンピンキラリ」と輝いて生きることを目指す。そんな心意気で過ごしたいものです

川嶋みどり(かわしま・みどり)
昭和6年韓国・京城(現・ソウル)生まれ。26年日本赤十字女子専門学校卒業後、日本赤十字社中央病院(現・日本赤十字社医療センター)勤務。平成15年日本赤十字看護大学教授就任。看護学部長、客員教授を経て、23年より現職。現在は健和会臨床看護学研究所所長、一般社団法人日本て・あーて(TE・ARTE)推進協会代表理事を兼任。19年フローレンス・ナイチンゲール記章、27年山上の光賞受賞。講演・執筆活動で看護のあり方を提言し続け、日本のナイチンゲールと呼ばれている。著書に『長生きは小さな習慣のつみ重ね』(幻冬舎)『看護の力』(岩波新書)など多数。

91歳での雑誌創刊に込めた想い

人並み外れたエネルギッシュさを誇る川嶋さんですが、その際たる例が2022年に看護の総合月刊誌『オン・ナーシング』を創刊されたことです。川嶋さんはなぜ、91歳にして雑誌を創刊するに至ったのでしょうか。本誌の内容を抜粋してご紹介します。

〈川嶋〉
雑誌の創刊は、看護の現状に対する危機感からでした。

看護業務は医師の指示により行う「診療の補助」と、患者さんの心と体に寄り添って直接ケアする「療養上の世話」があります。私は自分の実体験からも常々、後者の役割の重要性を説いてきたんですね。

ところが、近年は医療行為の一部を看護師に移譲する制度が始まり、患者さんへのケアが蔑ろになっています。そうした中、出版不況の煽りで46年続いた『看護実践の科学』が廃刊に追い込まれました。看護は現場で起こる人間的なもの。創刊から携わったよしみもあり、現場の声に耳を傾ける雑誌が途絶えてしまうのはもったいないとの思いが募ったんですよ。

そこで編集委員有志らでクラウドファンディングを立ち上げたところ、予想を上回る1,000万円近くの資金が集まり、2022年の夏、91歳の時に『オン・ナーシング』を創刊しました。

看護現場への並々ならぬ危機感に突き動かされた川嶋さん。実際、昨今の医療界ではITなどによる医療の高度化に伴い、医学的進歩が顕著に見られる半面、患者さんの扱いが非人間的で、人間疎外に陥っていると言います。そのしわ寄せが着実に看護師まで及び、患者さんの不信感が募っているのはもとより、看護師自身が仕事に誇りを抱けず、辞めていく人が後を絶ちません。

川嶋さんはそうした看護の現状を憂い、続けてこうおっしゃっています。

〈川嶋〉
看護の未来をひらくためには、看護師が〝サイレント集団〟から脱皮しなきゃ駄目なの。その切なる思いを込めて、雑誌のコンセプトは「読み手になって考え、書き手として伝えること」にしました。

現役の看護師からも夜勤の実態やハラスメント問題などについて寄稿してもらい、現場に軸足を置いた編集方針を貫いています。

看護師が現場から声を上げ続けることが、本来の看護を取り戻す原動力となり、患者さんの満足度にも繋がるという川嶋さん。なぜ、川嶋さんは強固な信念の元、よりよい看護のあり方を追求し続けているのでしょうか。

その背景には、戦時下に生まれ満足に勉強することが叶わなかった学生時代、看護が持つ力を体感した9歳の少女との出逢い、看護の現場で直面した過酷な労働の現実がありました――本記事では全4ページにわたって、一つひとつのエピソードを詳らかに紹介しています。

↓インタビュー内容はこちら!

▼ピンピンコロリではなくピンピンキラリを目指す
▼原点となった9歳の少女との出逢い
▼看護師であり続けた日々は闘い
▼困難には必ず意味がある

幾多の困難を乗り越えてきた川嶋さんからのエール

1時間に及んだ取材中は常に背筋をピンと正され、淀みなく話される姿が印象的でした。

92年の齢を重ねてきた川嶋さんの体験談はどれも必見ですが、中でも忘れ難いのは20歳のご長男との悲痛な別れです。終始元気溌剌としていた川嶋さんも、このエピソードを話される際は重い口調で、時折ご長男の遺影に目を向けながら、まるでご長男の姿を思い浮かべるように語ってくださった様子が、いまも脳裏に焼きついています。

困難に直面した時、泣いて諦めたり、打ちひしがれるのではなく、まず受け入れる。そして一歩でもいいから足をかけ、バネにして乗り越えてほしい。

そのすべてが人生の糧になり、輝かしい明日に繋がっていきます

幾多の艱難辛苦を乗り越えながら看護一筋に歩んできた川嶋さんの歩みとそこから紡ぎ出された至言の数々には、人生で迫り来る困難を乗り越え、自らの運命を力強くひらいていくヒントが凝縮されています。

▼『致知』2024年4月号 特集「運命をひらくもの」
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