編集長手記/奇跡の100歳・吉村光子さんが教えてくれた悲愁を越えて生きる知恵

始まりは弊社に届いた一通の手紙

先日、『致知』の愛読者から弊社のお客様係に一通の手紙が届きました。

差出人は長崎県在住の吉村光子さん、御年100歳です。

22歳の時に被爆し、地獄のような極限状態を経験しながらも、九死に一生を得たこと。60年連れ添ったご主人が癌を患い、長い闘病生活の末、16年前に看取ったこと。そして95歳で『致知』と出逢い、現在も毎月愛読していることなど、便箋5枚、直筆で力強くびっしりと綴られた文章には、その壮絶な人生の一部始終が赤裸々に表現されていました。

それを弊社社長が朝礼で全社員に紹介してくれた際、大変な衝撃と感動を覚えると共に、ぜひお会いして取材をし、『致知』の読者の方々にこういう素晴らしい方がおられることを伝えたいと思ったのです。

取材依頼をしたところ、恐縮されながらも快く引き受けてくださり、ゴールデンウィーク只中の56日に長崎のご自宅を訪ね、念願の初対面を果たすことができました。

取材当日は大雨でしたが、10時前から12時過ぎまで、2時間超にわたって、健康長寿の秘訣や人格形成の原点、幾多の試練に直面する中で支えになった信条、よりよい人生を送る心得など、学びに溢れた貴重なお話を賜ることができたのです。

老眼鏡も補聴器も杖も要らない奇跡の100歳

まず驚嘆したのは100歳とは思えないほどの若々しさ、矍鑠たるお姿です。

老眼鏡なしで毎晩21時から深夜1時過ぎまで読書され、補聴器なしでこちらの質問にきちんと受け答えされ、記憶力も抜群。つい数日前、洗濯物を取り込む際に怪我をして足の指を骨折したばかりなのに杖なしで歩かれている。毎日1時間、ヘルパーさんが掃除に来てくれる以外は、基本的に自分のことはすべて自分でやるとおっしゃっており、自律自助・独立自尊の気概に圧倒されました。

その一方で、吉村さんの語り口、お声は本当に可愛らしく、優しさに包まれるような感覚でした。

どうしてそんなに健康でいられるのでしょうか。本誌では吉村さんが実践している「3つの心の習慣」について紹介されているのも、注目すべき点です。

次に感銘を受けたのは、日本の国の未来を憂える並々ならぬ想いの強さです。

この年になっても選挙には必ず行く。絶対に棄権はしない。「いまのままでは日本は滅びます。どうか三十年、五十年先を考えてください」と祈るような気持ちで投票するのだといいます。「日本の行く末を考えると夜も寝られない」とおっしゃっていたことに衝撃を受けました。

経営の神様と称された松下幸之助もその晩年、同じようなことをよく口にしていたと伺ったことがありますが、経営の神様に勝るとも劣らない、やむにやまれぬ想いに心を打たれずにはいられませんでした。

吉村さんは若くして両親やきょうだいと死別し、22歳で被爆。奇跡的に生き延びるも、過酷な労働も相俟って3回の流産・死産、60年連れ添ったご主人の看取り……と人生の辛酸を嘗め尽くしてきました。その人生はまさに悲愁を越えて歩み来た百年だと感じます。

壮絶な体験を通して掴んだ「人生の誓い五か条」

取材を通して心に響いた言葉はたくさんありますが、ここでは二つだけ挙げたいと思います。

一つは『致知』に対するメッセージです。

「本は人生の鑑になりますね。特に『致知』は絶対に手放せませんよ。『致知』はいまから5年前、新聞の広告を見て、「あら」と思ってね。それまで手当たり次第に本を読んできましたけど、これこそ私の一番の心の師と仰ぐ本だと確信して申し込んだんです」

95歳の時に、これからもっと自分を磨き高めようと、『致知』の年間購読を決意されたことに敬服するばかりです。

「うわぁこんな素晴らしい本が日本にもあったのかしらって。逆になぜもっと早く知らなかったのか、残念でなりませんでした。『致知』を読み始めてからは他の雑誌は読めないですね、本当に。毎号の『致知』には学識豊かな方々が登場されていて、本当に人生の道標だと感じています。この本を若い人から大人まで年齢を問わず、日本中の人たち皆に読んでもらいたいと心から思いますね。そうすれば目の前が開け、幸福な人生を歩めると信じています」

吉村さんご自宅の本棚

本当に編集者冥利に尽きる言葉であり、思わず心が熱くなりました。

もう一つは、吉村さんが実感を込めてしみじみと語ってくださった、本誌P25に掲載されている次の言葉です。

「私は1617歳の時に両親と死別し、7人きょうだいの長女ですが、4人の兄も2人の妹もみんな病気や戦争で早世しています。2回の流産と1回の死産で子供にも恵まれず、天涯孤独で不幸だなと思った時期もありました」

吉村さんはご自身の人生を述懐した上で、こう続けます。

「でも、そういう悲愁をたくさん経験してきた分、人に優しくすること、〝ありがとう〟という感謝の気持ちを忘れないこと、困っている人がいたら率先して助けること、かといって出しゃばらず謙虚素直な心でいること、どんな艱難辛苦に遭っても悲観せず、上を向いて歩くこと。人は落ち込んだら底なし沼のようにどこまでも沈んでいってしまいますからね。この五つを自分の人生の誓いとして心懸け、実践してきたつもりです」

両親との死別、原爆の話、流産や死産の経験、ご主人の看取りの話を涙ながらに詳述されるお姿に、込み上げてくるものを抑えることができませんでした。『致知』がこのような素晴らしい読者を得ていること、直接お会いしてお話を拝聴できること、その奇跡に感謝しかありません。

人生の大先輩が教えてくれる「生きる知恵・心構え・考え方」に学び、自らの人生や仕事の糧にしていきたいものです。

◎『致知』2023年8月号にて、吉村さんは
・自分のことは自分でやる
・日本の行く末を考えると夜も寝られない
・十代の若さで両親と死別
・二十二歳で被爆 地獄のような極限状態
・人生の誓い五か条
 ……など、歩んできた100年における壮絶な人生体験、原爆の悲惨さ、そしてその中から得た人生信条、悲愁を越えていく心の持ち方を語っていただいています。詳細はこちら

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