松下幸之助の直弟子・上甲晃に学ぶ「主人公意識」と「やらされ意識」

松下政経塾元塾頭として、また、松下電器産業(現・パナソニック)退社後は、志ネットワーク「青年塾」代表として、25年間で、2500名もの志ある若者たちを育ててきた、人材育成のスペシャリスト・上甲晃氏。『人生の合い言葉』(上甲晃・著)は、そんな「青年塾」の塾生たちの間でのみ、語られてきた70の秘伝を、一般向けに公開するものです。人間力を高める70の言葉をご紹介します。

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人間一流をめざすための誓いの言葉

「勉強」とは、頭の中に知識や技術を増やすことだと思い込んでいる風潮がある。しかし、頭に叩き込む知識は、しょせん、生きていくうえでの道具にしか過ぎない。どんなに高度な知識や技術を習得しても、それを使う本人に、〝人間としての魅力〟がなければ、せっかくの知識や技術は〝宝の持ち腐れ〟となる。「人間としては最低」の一言で、偏差値エリートは挫折するのだ。

私は縁あって、14年間、松下幸之助が設立した、財団法人松下政経塾で、政治家を中心とした指導者を育てる仕事に携わった。そこで、実社会に出て本当に必要な力は、知識や技術でなく、その人の持つ〝人間としての魅力〟を(人間力)であることを感じた。どんなに偏差値が高くても、どんなに優秀な学歴を誇っていても、「人間として失格」の一言で、一刀両断、選挙に勝てない。

頭を育てる教育ではなく、心を育て、精神を鍛え、人間として一流をめざす教育こそが、今の日本には必要であると考えて、松下政経塾を離任した時、次代を担う若い人達を対象として、〝人間としての魅力〟を備えるための教育に人生を懸けようと決心した。

そして、立ち上げたのが全国五地域で展開する『青年塾』である。学びのカギを握る言葉は、〈志〉である。〈志〉とは、「己の損得を越えて、みんなのために役立つ心」であると、私は理解している。その心を備えるようになるために、『青年塾』にはいくつもの〝合い言葉〟がある。〝合い言葉〟が口癖になり、習慣になっていけば、その人の人生はより良くなっていくと信じている。「良き習慣は良き人生をひらく」。〈合い言葉〉は、人間一流をめざすための誓いの言葉であり、相手と心が通じ合う〝愛言葉〟でもある。

同じやるなら、「ハイ喜んで」!

大きな注文が入ると、「ハイ喜んで」と、お客様の所にすっ飛んで行ける。しかし、小さな注文になると、「この忙しい時に、わずかな注文でわずらわされる」と、出掛ける足取りが重くなる。どんなことでも、同じやるなら、「ハイ喜んで」の心だ。

『青年塾』で学んできたらどうだと上司から言われた瞬間、「いやだなぁ」と思う人は多い。それはそれで正直な気持ちである。私は、「その気持ちを引きずるな。やると決めたのであれば、〝ハイ喜んで〟の気持ちに切り替えろ」と教える。いやいや〟やるのは、時間の無駄。同じやるのであれば、スパッと気持ちを切り替えて、〝ハイ喜んで〟と受け止めなければならない。〝ハイ喜んで〟と思えば、研修に向かう足取りも自然に軽くなる。

〝しぶしぶ〟〝いやいや〟の気持ちのまま研修を受けていたら、学びの成果など上がるはずがない。第一、〝しぶしぶ〟〝いやいや〟の雰囲気を
まわりにまき散らすこと自体、大きな迷惑を掛けていることにもなる。

主人公意識を持て

やらされてやることは、苦痛。同じことでも、自分の意志ででやりたいと思ってやることは、喜びになる。

青年塾の講座で、バーベキューパーティーをした時のことだ。肉屋を営む先輩が、大量のお肉を差し入れてくれた。私は肉の入った箱を持ってみた。大変重たい。目の前にいる塾生の一人に持ってもらったら、やはり「すごい重たい」と言う。

私は、「そのまま1時間持っていてほしい」と言った。塾生は、「こんな重いものを1時間も持たせるのは、虐待ですよ」と言う。

私は、「じゃあ聞くけれども、これを全部君にやると言ったらどうする」と聞いた。「こんなにもらえるのですか」と塾生は言う。持っているものは同じであっても、考え方が変わると、重荷が喜びになる。人生も同じだ。

「やらされてやることは重荷、やりたいと思ってやることは、喜びになる」と教えた。『青年塾』はすべての研修の準備と運営を、受講する塾生諸君が主体的に行うことを義務づけている。〝与える教育〟ではなく、〝求める教育〟だ。研修一つでも、私がお膳立てすればするほど、受講生は、「研修を受けさせられた」と負担感を覚えるのだ。


(本記事は月刊『致知』2003年8月号 特集「プロの条件」より一部抜粋・編集したものです)

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片や幕末の動乱期、片や昭和の激動期。活躍した時代・成し遂げた事業こそ異なるものの、共に強烈な憂国の情を抱いて「人づくり」に命を懸けた二人の傑士がいます。

「熱と誠」で多くの志ある人物を育てた吉田松陰と一代で松下電器産業をグローバル企業へ成長させた昭和の大経営者・松下幸之助です。

吉田松陰を祀る松陰神社の名誉宮司・上田俊成さんと、松下政経塾塾頭として松下幸之助に薫陶を受けた上甲さんに、それぞれの人物像を交えてその功績を辿っていただきました。詳細は下記バナーをクリック↓

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上甲晃じょうこう・あきら
 昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。広報、電子レンジ販売などを担当し、56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年、青年塾を創設。同塾で20年以上にわたる指導を続け、1700名を超える若者たちを育ててきた人材育成のスペシャリストである。著書に『志のみ持参』『志を教える』『志を継ぐ』『松下幸之助に学んだ人生で大切なこと』 『人生の合い言葉』(いずれも致知出版社)など多数。

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