オグ・マンディーノ『長寿の秘訣』に学ぶ、長寿になる簡単なルール(文学博士・鈴木秀子)

アメリカのベストセラー作家、オグ・マンディーノ氏の作品の大きな特徴は、誰もが経験したような身近な出来事を通して深い人生真理に導いてくれる点にあります。文学博士の鈴木秀子さんに、オグ・マンディーノの『長寿の秘訣』という作品から、幸せな人生を送る教えを紐解いていただきました。

利他の心が長寿の秘訣

〈鈴木〉

アメリカのベストセラー作家にオグ・マンディーノ(1923~1996)という人がいます。高校卒業後、従軍、保険会社勤務を経て雑誌の編集長となり、作家としても活躍しました。1968年に発表した『地上最強の商人』は爆発的な売れ行きを示し、その後も次々とベストセラーを世に送り続けました。

『この世で一番の贈り物』(PHP研究所刊/菅靖彦訳)という短編集もそういう中の一冊で、700万部を超えたとされていますが、ここではその短編集から『長寿の秘訣』という作品を紹介します。

この小説は、主人公の「わたし」(モデルは作者のオグ・マンディーノ)が15年ぶりにサイモンという一人の老人と再会する場面から始まります。老人は95歳になっていたのに、背筋は張り、目は美しく澄み、声にも力強さがありました。雑誌の編集長でもある「わたし」は「若さを保っている秘訣はなんなのですか?」と尋ねます。

サイモンは、医学の進歩により自分だけでなくアメリカ人全体が長生きしていることなどひと通り持論を展開した後、「第一に、長寿を望むためにしたがわなければならないごく簡単なルールが4つあります。誰にでもわかっていることなんですが、残念ながら、多くの人はそれらを守るのに必要な忍耐力を欠いているようです」と前置きし、長寿になる簡単なルールについて説明を続けます。

「自分のなかにつめこむ食べ物の種類と量は、常識にしたがって決めること」

「ドラッグやアルコールにきっぱりと背を向けること」

「先端から煙を出すようなもの(煙草)を口に入れないこと」

「すくなくとも週に3回、適度な運動をすること」

「簡単なルール」を要約すると以上のようになりますが、彼が言うように確かに頭では分かっていても、実践となるとなかなか難しいことは誰でも納得できるのではないかと思います。

サイモンはさらに言葉を継ぎ、5番目に最も重要な方法があり、それを実践すれば、最初の四つのルールで付け加えられる年齢をさらに倍にできるだろうと述べます。そして、それが「利他主義の実践」であることを強調するのです。

科学や医学でも理由はまだ解明されていないんですが、なんの見返りも期待せず、ボランティアで他人を助けることに時間やエネルギーを費やす人たちは、そうでない人に比べ、ストレスや憂鬱に苦しむ率がはるかに少ないらしいんです。そればかりか、自分に誇りをもち、元気のもとになる充実した瞬間を味わう機会が多く、平和な満ちたりた気持ちでいられるし、仕事もよくできるようなんです。

また、こうした肯定的な人生に支えられている人たちは、免疫系に多大なダメージをもたらす、自己憐憫や絶望や挫折といった否定的な思いに悩まされることがほとんどないようです。

サイモンがそう断言できたのは、彼自身が利他主義の実践者だったからに他なりません。

「ミスター・オグ、ご存じのように、わしの職業、仕事、趣味、人生の使命は、この数十年、ラグピッカー(利他主義に生きる人)でした。しかし、わしが救いあげているのは、……(中略)……不運に見舞われ、ついには人生のゴミ溜ために身を落としてしまった人たちです。忍耐と努力によって、また神の助けを借りて、わしは多くの人の人生を救い、真の運命を実現するもう一つのチャンスを彼らにあたえる幸運に恵まれてきました」

この小説が書かれたのはおそらく30年ほど前ですか、近年、心と体の相関関係は科学の進歩によってより明らかになってきました。遺伝子工学の第一人者である故・村上和雄先生も心が前向きになれば遺伝子のスイッチがオンになり、病が回復に向かうことを数々の実験を通して明らかにされています。

私もこれまで多くの人に接してきて、たとえ小さなことでも利他の実践に努めている人は健康で長生きできる傾向にあることを実感してきました。


本記事は月刊『致知』2022年11月号連載「人生を照らす言葉」より一部抜粋・編集したものです)

◎2022年11月号連載「人生を照らす言葉」には、

・「長寿のために忘れてはいけない秘訣」

・「サイモンはなぜ忽然と姿を消したのか」

・「心の声で悩みを解決したサラリーマン」

など、小説『長寿の秘訣』から幸せに至るヒントを紐解きます。本記事の詳細・ご購読はこちら【鈴木秀子さんの長期連載「人生を照らす言葉」については下記バナーをクリック】


◇鈴木秀子(すずき・ひでこ)

東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。聖心女子大学教授を経て、現在国際文学療法学会会長、聖心会会員。日本にエニアグラムを紹介。著書に『自分の花を精いっぱい咲かせる生き方』『幸せになるキーワード』(共に致知出版社)『死にゆく人にあなたができること』(あさ出版)『機嫌よくいれば、だいたいのことはうまくいく。』(かんき出版)など多数。

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