〝人間性〟と〝感性〟——コシノジュンコ&観世清和が語り合う「伸びる人の共通点」

国内外で活躍する世界的デザイナーのコシノジュンコさん。観阿弥・世阿弥から連綿と続く能楽の歴史と伝統を受け継ぐ二十六世観世宗家・観世清和さん。能楽とファッション——異なる分野のコラボレーションを通じて、日本の伝統と美の発信に情熱を燃やし、道を切り拓いてきたお二人に、伸びる人の共通点を縦横に語り合っていただきました。

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その人の人間性がそのまま仕事に表れる

〈コシノ〉
御家元は若いお弟子さんたちを見ていて、伸びる人の共通点はどこにあると思われますか。

〈観世〉 
それは〝真心〟です。真心のある子は真摯に舞台をやりますし、打てば響くではないのですが、稽古にも一所懸命取り組みます。

ですから、ちょっと不器用な所があったとしても、その子の素朴な心、素直な心を見てあげて伸ばしてゆくことが、弟子を育てる上では大事だと思うのです。

〈コシノ〉
本当にそうですよね。

〈観世〉 
いま新型コロナウイルスで多くの人が外出できない中、著名な歌手の方やエンタテインメント施設が、人々を勇気づけようと動画配信など様々な工夫をされています。そのような姿を見ていると、やはり真心は大切だなと。

お能はエンタテインメント性を求めるものではありませんが、世阿弥も「衆人愛敬」「一座建立」という言葉を残しています。

つまり、皆に愛される能役者にならなければ、心ある舞台を勤めることは出来ない。その流儀も発展してゆかないということなのです。

〈コシノ〉
要するに人間性ですね。

〈観世〉
仰る通りです。どんなに謡の声がよくても、舞がシャープで腰の切れがあっても、人間性、心がなかったらだめなのです。

〈コシノ〉
途中で枯れてしまう。

〈観世〉
はい。長続きしません。

不思議なのは、舞台を観ると、「ああ、この人は親切な人だな」ということが伝わってきます。「人品骨柄」みたいなものが知らず知らずのうちに舞台にも表れてくる。

例えば、楽屋でゴロンと寝転がっていて、いきなり面と装束をつけたら美しく舞えるかといえば、そうではない。

父も「生活臭のするやつはだめだ」とよく言っておりました。能楽師は舞台を観に来ていただいた方々に夢を見て頂くとも言える訳ですから、やはり、普段の生活からきちっとしていることが大事になります。

〈コシノ〉
私は伸びる子は目敏いというか、よいものを見つける感性がすごくあると思います。

特に私たちの分野では感性がとても大切になりますが、同じものを見ても「あ、これいいよね!」と感じられる子は、やっぱりそうでない子と比べて大きな差がつきますね。

あとは大きなビジョン、世界観を持っていることも大切だと思います。人間の生き方は世界共通ですから、日本だけに止どまらない視野、世界観を持っている人は発想や考え方も大きくなりますよ。

〈観世〉
まさにコシノ先生がそうですね。お能と融合したり、太鼓の演奏集団「DRUM TAO」の衣装を手掛けられたり、一つの世界に限定されず、非常に多岐にわたる活動に取り組んでいらっしゃる。

〈コシノ〉
私、花火のデザインもしているんです。また、最近は家にいることが多いですから、団扇に絵も描いています。やり始めたらエスカレートして(笑)、年内に300枚は描こうと思っています。

〈観世〉
本当にすごい(笑)。


(本記事は月刊『致知』2020年10月号 特集「人生は常にこれから」より一部を抜粋・編集したものです)

◉2023年2月号 人気連載「二十代をどう生きるか」にコシノさんがご登場!

「私はやる。そう覚悟を決め、勇気を持って前進を続ければ、大抵のことはやり遂げられるものです」

コシノさんを世界の舞台で活躍するプロに大成させたものは何か。「人生を決めた運命の言葉」「負けず嫌いを原動力に」「すべては一人から始まる」等、コシノさんの原点にスポットを当てお話しいただきました。本記事には環境や劣等感に屈することなく、運命を切り拓く要諦が詰まっています。詳細は下記画像から。

〈致知電子版〉でも全文お読みいただけます。

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◇観世清和(かんぜ・きよかず)
二十六世観世宗家。重要無形文化財総合認定保持者。1959年生まれ。1990年宗家継承。観阿弥・世阿弥の子孫として現代の能楽界を代表する演者。2016年ニューヨーク・リンカーンセンター招聘公演(5日間)は連日満員の盛況で極めて高い評価を得た。現在は能公演はもとより、(独)日本芸術文化振興会評議員・東京藝術大学非常勤講師・国立能楽堂養成研修主任講師を務め、伝統芸術の保存と継承・後進の育成にあたる。(一財)観世文庫理事長、(一社)観世会理事長、(一財)日本中国文化交流協会副会長。フランス文化勲章シュバリエ、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章、JXTG音楽賞など多数受賞(章)。

◇コシノジュンコ
大阪府生まれ。1960年代より数々のグループサウンズの衣装で活躍。日本万国博覧会にて生活産業館、ペプシコーラ館、タカラ・ビューティリオン館の3パビリオンのユニフォームをデザイン。1978年から22年間、パリコレクションに参加。1985年北京での中国最大のショウをきっかけに、ニューヨーク(メトロポリタン美術館)、ベトナム、キューバ、ロシア、ポーランドなどでファッションの枠を超えた日本文化を発信するショウを開催してきた。DRUM TAOの舞台衣装・琉球海炎祭の花火のデザインも手掛ける。2025年日本国際博覧会協会シニアアドバイザー。2017年文化功労者。文化庁 「日本博」企画委員。TBSラジオ「コシノジュンコMASACA」(毎週日曜17時〜)放送中。2020年11月9日、「GINZA SIX」内にある「二十五世観世左近記念観世能楽堂」にて「能とモードの饗宴」を開催。

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