【人間力営業の時代|第3回】「当たり前」の範囲を広げる——永業塾主宰・中村信仁

 

日本ブリタニカに高卒で入社し、初年度から世界トップテンの営業実績を挙げた中村信仁さん。現在はそうした営業経験をもとに、業種・業界を問わずあらゆるジャンルの営業人たちに向けた「永業塾」を全国8か所で主宰し、これまで延べ18,000人と面談し、導いてきました。

本連載「人間力営業の時代」では、営業の道を30年以上歩んできた中村さんに、体験を通して掴んだ「営業の大原則」、営業ならぬ「永業」の神髄を伝授いただきます。第3回では、当たり前を疎かにせず、お礼を伝える大切さをお話しいただきました。

※人間力営業とは
「心が技術を越えない限り技術は生かされない」
箸の上げ下げ、挨拶の仕方、話し方、など暮らしの中には様々なやり方があります。営業の世界にもやり方があります。しかし在り方を理解せずやり方に走ると、営業パーソンは顧客に嫌われます。営業の世界においてやり方をマスターするのはマナーですが、そこに心が伴わなければ顧客はファンになってくれません。人間力営業とは、技術を身につけた営業パーソンがひとつ上を歩くための心構えを説くものです。

【第1回】心が技術を越えない限り、技術は生かされない

【第2回】常に先約を優先する判断と勇気

お礼は3回

当たり前のことをしても、世間では誰も褒めてはくれません。
しかし、その「当たり前」のことができないと必ず文句をいわれます。

ですから私たち営業パーソンは「当たり前」の範囲を広く持ち、その「当たり前」のことをサラッとできるようにしておかなければなりません。

そうしなければ、いつも誰かに文句をいわれたり(直接いわれることはありませんが、陰で、デキないヤツだと噂されてしまいます)、知らぬ間に相手に不満を与えてしまったりするものです。

靴をそろえる、椅子を戻す、ドアは音をたてずに開け閉めする……など、「当たり前」は沢山ありますが、そんな中で営業パーソンとして忘れてはならない「当たり前」が「お礼」です。

例えば珈琲をご馳走になったりランチをご馳走されたりしたときですが……
いただくときに「ご馳走になります」とか、いただいた後に「ご馳走さまでした」というのは普通にできるはずです。ただ、その次の日に「昨日はご馳走さまでした」と電話またはメールでお礼をしていますか?

もし翌日の「お礼」ができていたなら、ぜひ、もう一歩踏み込んでください。

ご馳走になった日のお礼を1回目とするなら、次の日のお礼は2回目です。
そしてトップグループの営業パーソンたちは「幻の3回目」といわれる「お礼」を忘れないのです。

それは、1週間後……、1か月後……、半年後……、と次に会ったときに必ず「その節はご馳走さまでした」とか「あの時はありがとうございました」とお礼を述べます。

本当に半年後だったとしても本気でお礼を述べるんです。

もちろん相手は忘れたふりをします。
本当に忘れていることもまれにありますが、照れくさくて忘れたふりをするものなんです。でも、「律儀な人だな……」とか「マメなヤツだな……」、「へー、大したもんだな……」と印象を良くしてくださいます。

更に本人ばかりか、周りの人たちへも「先日、〇〇さんと打ち合わせしたとき、お昼時だったにもかかわらず食事をしながら応対してくださったんです。しかも行きつけの美味しい定食屋さんまでご紹介していただいて……」と○○さんのことを他者にアピールしてあげるんです。

この行為は巡り巡って必ず○○さんの耳に届きます。

○○さんのことをすごい人だと紹介していましたよ、とか○○さんのことを褒めて歩いていましたよなどと。すると○○さんは、更に好印象を抱いてくれるようになります。

でも、もっとすごい効果は、〇〇さんのことを良くいって歩く行為そのものの評価にあります。

それは、人のことを外でよくいう人には好意と信頼と情報が集まるんです。

人を褒める人は褒められるという法則が働きます。褒める人の下には、自分も褒められたい、もしくは自分のことも周りに良くいってもらいたい、と多くの人々が集まってくるものです。

人の悪口ばかりいう人のそばに人は寄り付きません。
いつか自分の悪口も言われるのではないかと怖くなるからです。

お礼は3回……、といいましたが、もちろん4回でも5回でも構いません。

ただ、お気をつけください。

「ご馳走になった」ことを自慢してはダメです。それは愚の骨頂です。された行為を発信するのではなく、していただいた心遣いを発信することです。

ひとつ上のステージを歩く「人間力営業」で今日も粋にお過ごしください。

★連載第4回は、1月中旬頃の配信を予定。ぜひ楽しみにお待ちください


◇中村信仁(なかむら・しんじ)
昭和41年北海道生まれ。59年高校卒業後、日本ブリタニカに入社し初年度から営業成績世界トップテンに名を連ねる。63年に独立。現在は企業の新卒採用や営業の支援事業の傍ら、「永業塾」を主宰し、後進の育成に携わる。年間50回の営業セミナーと年間30本の講演、毎週のオンラインセミナーを精力的にこなし、営業に関する執筆を続ける。また、地元北海道でラジオ番組のレギュラーを持ち、毎週木曜日午後6時から「中村信仁でナイト」3時間生放送中。中村信仁オフィシャルサイト   や中村信仁無料メールマガジン   などでも積極的に情報発信を行っている。著書に『営業の魔法』(BC)『営業の意味』『営業の神様』(ともにエイチエス)など多数。

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