「静の荒行」「掃除地獄」……極限の籠山行を通して見えたもの

比叡山で最も厳しい修行の一つと言われる「十二年籠山行」。天台宗の開祖・最澄上人が眠る浄土院に独り籠り、毎日、開祖が生きているがごとく仕え切る「静の荒行」です。
満行できずに亡くなる人、消息を絶ってしまう人もいたというこの行を2009年に満行した宮本祖豊さん(当時:比叡山延暦寺円龍院住職)に、その原体験を伺いました。

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「この方の精神が宿る場所で修行してみたい」

――仏道に入られたきっかけについて教えてください。

〈宮本〉
私は在家の出身ですので、高校を卒業するまではごく普通の毎日を過ごしていました。ところが、大学受験に躓きましてね。浪人生活というのは時間がたくさんありますので、自分を振り返って内省することが多くなりました。

その時に、自分の徳のなさというものを感じたんです。

昭和50年代というのは、頑張ればどこかの大学にも入れたし、就職にも困らなかった時代です。ですから、普通に大学に進学してサラリーマンになる道もあったと思うんですけど、もっと違う人生を歩んでみたい、この人生を一生徳を積むことに懸けてみたいと、こう思ったんです。

で、徳を積むといった時にまず浮かんだのが宗教でした。

  (中略)

――特に影響を受けた人物や書物などはありましたか。

〈宮本〉
日本の天台宗のもとに当たる中国天台宗の開祖・天台大師智顗(ちぎ)の書いた『摩訶止観(まかしかん)』という坐禅の指南書ですね。これを読んだ時に、「ああ、これこそ自分が求めていたものだ。一生を懸けて勉強していきたい」と感じました。

もう一つは伝教大師が19歳でこの比叡山に入った時に、これからの修行に対しての誓いを綴った『願文(がんもん)』という書物があります。「こんなに心の澄んだ人間がこの世にいたのか」と、非常に感銘を受けまして、この方の精神が宿る場所でぜひ修行してみたいと思ったんです。

ところが、親にそのことを打ち明けても、なかなか理解を得られませんでした。先ほど申し上げた土地柄の影響もあったのでしょう。何度も説得を試みたけれども無理でして、最終的に「修行に出てまいります」と書き置きして、22歳の時に家出したんです。

当然私としては決死の覚悟ですから、片道切符と僅かな日用品だけを持って比叡山へ向かいました。

宮本祖豊・著『覚悟の力』

一度は師匠に追い出されて

~そうして比叡山を訪ねた宮本さんは運よく、後に師匠となる堀澤祖門さんの下で「小僧見習い」として修業を始めますが……~

〈宮本〉
ところが、一か月くらい経った時に、このままで本当に将来お坊さんになれるのかとふと不安が過ぎりました。それで師匠に「いつになったらお坊さんになれるのですか」と聞いたところ、「そんな心構えでは置いておけない。いますぐ出ていけ!」と、追い出されてしまったんです。

何が悪かったのか当時は分からなかったんですけど、いま振り返ると、非常に俗世間的な考え方だったのだと思います。

――その後、どうされたのですか。

〈宮本〉
お金もない、着替えもない状態でしたから、仕方なく近くの旅館でアルバイトをしました。貯めたお金で食料や下着を買い込み、一か月ほど山に籠もって坐禅をしたりお経を読んでいました。

しかし、やはり師匠について作法を習わなかったら少しも前に進まないんです。自分にご縁のある人といったら堀澤祖門しかいない。そういうことで、再び師匠の門を叩きました。

――その時、師匠は何と?

〈宮本〉
それが思いがけず、「それならもう一度来い」とすんなり受け入れてくださったんです。それから2年間、私は一所懸命雑役に従事しました。

師匠はたくさん弟子を抱えておりましたので、当初は「もう弟子は取らない」と言っていたんですけど、私の真剣な姿を見て、弟子にしていただけることになったんです。


(本記事は月刊『致知』2014年11月号 特集「魂を伝承する」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇宮本祖豊(みやもと・そほう)
昭和35年北海道生まれ。59年出家得度。平成9年好相行満行。21年比叡山で最も厳しい修行の一つである十二年籠山行満行を果たす(戦後6人目)。比叡山延暦寺円龍院住職、比叡山延暦寺居士林所長を経て、現在は同観明院住職、大講堂輪番職を務める。著書に『覚悟の力』(致知出版社)。

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